プレジデントオンラインは、全上場企業の「平均年収ランキング(2025年度版)」を作成した。調査対象会社3709社のうち、「小売業」に分類される企業は314社だった。
1位はファーストリテイリングの1250.6万円だった。平均年収ランキング「小売業」編をお届けする――。(第4回)
■1位は1000万円超でも小売業は依然「低賃金」
プレジデントオンラインは、小売業界に属する314社の「社員平均年収ランキング(2025年版)」を作成した。基にしたデータは直近の年次決算期における有価証券報告書(2024年10月期~2025年9月期)。データ抽出では、経済・金融データサービスの株式会社アイ・エヌ情報センターの協力を得た。
今回の調査対象となった企業のうち、トップ10社の従業員平均年収額は981.4万円だった。表にしたランキング314位までの従業員平均年収額は555.5万円。帝国データバンクが発表している全上場企業の平均年収である671.1万円(2024年度決算期)を100万円以上も下回っており、業界格差が浮き彫りになった。
小売業314社の中で平均年収が最も高かったのは「ユニクロ」「ジーユー(GU)」などを展開するファーストリテイリングだった。直近の通期決算(2025年8月期)では、売上収益が約3兆4000億円で、「ZARA」などを展開するスペインのインディテックス、「H&M」を手掛けるスウェーデンのへネス&マウリッツに続く世界3位の規模を誇る。
■柳井氏の役員報酬は5.5億円
ファーストリテイリングの有価証券報告書によると、平均年収は前年から71.4万円増加となる1250.6万円。2位とは200万円以上の差をつける圧倒的な年収だった。

ユニクロは世界各国に店舗網を広げており、今や国内よりも海外の店舗の方が多い。その分グローバル人材の確保にも尽力しており、賃上げが進む国内企業の中でも“グローバル水準”となっている。
昨今の人手不足もあり、新卒社員の初任給は最大で37万円。年収換算では600万円近くに達する。2020年時点の21万円から、この6年で15万円以上も増加した。
この間、売上収益は2020年8月期の約2兆円から前出の3兆円超えとなり1兆円以上も成長。儲けをしっかりと従業員に還元する好循環が生まれている。ちなみに同社の報酬体系について「世界水準ではまだ低い」と語る柳井正会長自身の役員報酬は、5億5000万円だ。
■再編相次ぐドラッグストアのトップは…
ランキング上位を見渡すと、いくつかキーとなる業態が存在する。
一つが、トップ30までに5社がランクインしたドラッグストア系企業だ。
ドラッグストア業界のトップは、クリエイトSDホールディングスだった。平均年収は1044.3万円で、前年から107.2万円と大幅な減少ながら1000万円台を維持。
全体でも2位にランクインした。
同社はドラッグストア・調剤薬局を中心に展開している。しかし、セグメントを見ると稼ぎ頭は「食料品」だ。同社のように、近年は食料品に注力するドラッグストア企業が増加しており、物価高の中で存在感を発揮している。
その他、全体9位にはスギホールディングス(前年比21.2万円増の881.4万円)、同24位にアインホールディングス(同39.5万円増となる748.5万円)などが名を連ねている。2025年12月にウエルシアホールディングスと経営統合し、ドラッグストアチェーンとして日本最大になったツルハホールディングスは前年から91.2万円減で604.3万円(90位)だった。
ドラッグストア業界は近年、上述したウエルシアホールディングスとツルハホールディングスの統合だけでなく、アインホールディングスによるさくら薬局グループの買収(2025年8月)、マツモトキヨシホールディングスとココカラファインの経営統合(2021年10月)など再編の動きが活発であり、今後も年収事情には注目だ。
■牛丼御三家「一人勝ち」だった企業
ドラッグストア業界と同じく、上位に多くの企業が名を連ねたのが百貨店だった。
中でもトップは、前年から66.9万円の年収増を果たしたエイチ・ツー・オー リテイリング(全体5位)。三越伊勢丹ホールディングス(前年比39.6万円増の922.8万円で7位)、J.フロント リテイリング(同9.7万円増の815.6万円で17位)などを押さえた。
いまや「国民食」ともいえる牛丼を手掛ける会社では明暗が分かれた。
「吉野家」「松屋」「すき家」の、いわゆる牛丼御三家チェーンを展開している企業のうち、最も平均年収が高かったのはゼンショーホールディングスだ。
前年から74.0万円の増加で、816.7万円となった。
同社は多角的に外食チェーンを手掛けており、2025年3月期にセグメント別で最も売り上げを稼いだのは、すき家、はま寿司、なか卯を含む「グローバルファストフード」だった。
今年1月にはハンバーガーチェーン「ロッテリア」の全店舗を「ゼッテリア」に転換するとして話題を呼んだことも記憶に新しい。
70万円近くも平均年収を伸ばしたゼンショーホールディングスに対して、吉野家ホールディングス(27位)と松屋フーズホールディングス(44位)は伸び悩んだ。
吉野家ホールディングスは前年からの増加幅がわずか1.9万円(平均年収は738.5万円)だった。松屋フーズホールディングスは同16.2万円増加で674.0万円。
吉野家ホールディングスは「はなまるうどん」、松屋フーズホールディングスは「松のや」「マイカリー食堂」といった牛丼以外の業態を既に展開しているが、最近は他社の買収などでラーメンへのシフトが進んでいる。両社とも依然として牛丼への依存度が高く、米価や円安による輸入牛肉の高騰が続く中、いかに次なる鉱脈を見つけられるかがカギを握りそうだ。
物流・エネルギーコストなどの高騰が相次ぎ消費者の価格に対する目線がシビアになる中、小売業は厳しい対応を迫られている。他業界と比較して低水準の年収事情を底上げできるかは今後も不透明だ。

(プレジデントオンライン編集部 図版作成=大橋昭一)
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