※本稿は、鎌田浩毅『オタク科学者の超コミュニケーション術』(扶桑社新書)の一部を再編集したものです。
■東日本大震災は「寝た子」を起こした
なぜ私のような科学者がコミュニケーションについてこだわり続けたか。これから起こるだろう災害について皆さんにわかりやすく伝え、自分ごととしてとらえて、準備してほしいからである。
東日本大震災以降、日本は「大地変動の時代」に入ってしまった。「大地変動の時代」にどんなことが起こるか、地球科学の専門家として私が皆さんへいちばん伝えたいことを記す。
2011年に東日本を襲ったマグニチュード(以下、Mと略記)9の地震は、日本の観測史上最大規模であるだけでなく、千年に一度起こるかどうかという非常にまれな巨大地震だった。
東日本大震災のあと、「大きなエネルギーが解放されたから、もうエネルギーは残っていないのではないか」といった憶測を呼んだ。私のもとにもそのような質問が相次いだが、まったく違う。この地震はむしろ「寝た子を起こしてしまった」のである。
この地震によって日本列島の地盤には大きなひずみが残され、そのひずみを解消するように、静岡県や長野県、熊本県、石川県能登地方など各地で直下型地震が発生しているのだ。
■プレートの衝突部に位置する日本列島
地震には、海底が震源地となる海の地震と、陸地が震源になる陸の地震がある。
海の地震が起こるメカニズムから説明しよう。日本列島の下には、プレートと呼ばれる板のような巨大な岩板のかたまりが4つある。
日本列島の北海道・東北が乗っている「北米プレート」、そこに潜り込もうとする海のプレート「太平洋プレート」、西日本から九州が乗っている「ユーラシアプレート」と、そこに潜り込もうとする海のプレート「フィリピン海プレート」である。
東日本大震災は、太平洋プレートが北米プレートに潜り込むときに蓄積されたエネルギーが解放されることで起こった。具体的に言うと、太平洋プレートは北米プレートを引きずりながら海底に沈もうとするため、北米プレートとの境にひずみが生じる。このひずみによって上のプレートが反発して跳ね上がることで、大地震が起きたのだ。
海の地震は海底の地殻変動を引き起こし、海面を変動させるために、大きな津波が起こるのである。このプレートの動きによる地震は周期的に起こっており、三陸沖の同じ震源では平安時代の869年に貞観地震と呼ばれる巨大地震が起こっている。
■南海トラフを上回るM9.1、M9.3想定
私はいつもこれからくる災害として「南海トラフ巨大地震」を挙げている。しかし、いまリアルタイムで注目されているのは、北海道・青森沖の地震だろう。本稿を執筆中の2025年12月8日、青森県東方沖を震源とするM7.5の地震が発生し「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が発表された。4日後の12日にも、同じ地域でM6.9の地震が発生した。
実は、この地域での地震については、非常に大きな災害が予想されており、我々研究者は警鐘を鳴らしていた。北海道と岩手に大津波をもたらす可能性がある「日本海溝・千島海溝地震」について説明しておきたい。
想定される震源域は2箇所。岩手県沖から北海道日高地方沖合にかけての日本海溝沿いにある震源域と、襟裳岬から東の千島海溝沿いの震源域で、地震の規模は前者がM9.1、また後者はM9.3が想定されている。
これは東日本大震災を引き起こしたM9.0や、2030年代に起きる可能性の高い南海トラフ巨大地震のM9.1を上回る非常に大きなものである。すなわち、日本列島の北方に再び巨大地震が襲来すると言っても過言ではない。
■30年以内の発生確率は「最大40%」
地震が起きるメカニズムは、東日本大震災と同じ。すなわち、日本海溝と千島海溝は、太平洋プレートが日本列島を乗せた北米プレートの下に沈み込む場所にある。こうした二枚のプレート境界面が一気にずれるとM9クラスの巨大地震が起き、同時に隆起した海底に沿って大津波が発生する。さらに日本海溝・千島海溝では二つのプレート境界面が接合しやすい性質があるため、地震の起こる頻度が高くなっている。
国の地震調査委員会は千島海溝沿いを震源とするM8.8以上の地震が30年以内に起きる確率を、最大40パーセントと見積もったが、今回の青森県東方沖地震によって、この大地震が誘発されることが危惧されている。
千島海溝と日本海溝の想定震源域やその周辺でM7以上の地震が発生し、その後新たに大きな地震が発生する可能性が平常時よりも相対的に高まったときに、「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が発表される。
■冬の北海道・東北で地震が発生すると…
北海道から東北北部の太平洋沖でM9クラスの巨大地震が起きると、震度7の強い揺れと最大で30メートル近い大津波が押し寄せる。また、北海道・襟裳岬の東方沖を震源域とした場合には、厚岸町で震度7、えりも町は震度6強の揺れに襲われる。特に、冬の深夜の地震発生で津波避難率が20パーセントと低い場合に、最大の被害が想定される。
その結果、日本海溝沿いの地震では犠牲者数が19万9000人、全壊・焼失棟数が22万棟となる。また千島海溝沿いの地震では犠牲者数が10万人、全壊・焼失棟数が8万4000棟となる。いずれも東日本大震災による死者数や経済的被害を大幅に超える甚大なものだ(拙書『M9地震に備えよ』PHP新書刊を参照)。
■津波の犠牲者を8割減らす方法
こうした犠牲者のほとんどは津波によるものである。北海道、青森、岩手、宮城、福島、茨城、千葉の7道県182市町村が津波被害を警戒する対象地域になっている。実際には津波による浸水深が30センチメートルを超えると犠牲者が出るため、人的被害を減らすには早期の避難しかない。
被害を減らすための「減災」と言っても、一般の人にはピンと来ないと思うが、具体的には、津波避難タワーの整備や、避難を12分以内に始めるという早期避難によって、犠牲者数の8割を減らすことができる。津波避難タワーを作るだけでは家屋流出は減らせないので、家屋被害を減らすには高台移転を促進する必要もある。
北海道、青森、岩手、宮城、福島、茨城、千葉の対象となっている182市町村にお住まいの方は、注意報から1週間程度は地震や津波に備え、すぐに避難できる態勢を心がけてほしい。
特に寒い時期は防寒が第一である。避難グッズは枕元に置き、暖かい服や使い捨てカイロなど防寒用具が用意されているかを確認しておこう。寝るときにも、すぐ逃げられる服装で寝る、子どもや高齢者と同じ部屋で過ごすことも重要だ。もし注意報が取り消されても、安全になったわけではないことを心してほしい。
これは、日本海溝・千島海溝地震に限った話ではなく、南海トラフ巨大地震でも同様だ。日本全国、地震が起こらない場所はないと言っていい。最新の地震学でもいつどこで地震が発生するかの短期予知は不可能であるから、想定される震災に対して備えを急ぐ必要がある。
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鎌田 浩毅(かまた・ひろき)
京都大学名誉教授
1955年生まれ。東京大学理学部地学科卒業。97年より京都大学大学院人間・環境学研究科教授。2021年から京都大学名誉教授・京都大学レジリエンス実践ユニット特任教授。
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(京都大学名誉教授 鎌田 浩毅)

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