※本稿は、星歩『世界基準の仕事術』(大和出版)の一部を再編集したものです。
■プライベートのことも包み隠さず
フランスで働き始めて気づいたことがあります。どんなに忙しくても、ランチの時間をしっかり取ること。そして、同僚と一緒に食事をすること。たとえわずか15分のコーヒーブレイクであっても、その時間を無駄にしない。
こうした何気ない時間が、人間関係を育て、信頼関係を築くための「投資」になります。
職場でのランチやコーヒーブレイクでは、最近の出来事や悩みを打ち明けたり、相手の悩みを聞いたりすることが自然に行われます。日本ではプライベートな話を職場で共有するのはタブーとされることが多いようですが、フランスではむしろ歓迎されます。
たとえば、マッキンゼーやOECDでは、プライベートな問題が業務に影響する場合、上司にできる範囲で相談することが推奨されています。
実際、OECDのトレーニングで扱ったケースにこんなものがあります。
ある日を境に、部下の1人が締め切りを守らなくなり、プロジェクトの進行が遅れ始めました。
しかし、それがさらに上司と部下の信頼関係を壊し、状況は悪化してしまったのです。あとからわかったのは、部下には母親の病気というプライベートな問題があり、業務に集中できない状態だったとのこと。
部下は相談せずに抱え込み、上司は相談しやすい環境をつくれていなかった。このケースでは、部下も上司も、それぞれの立場で責任があったと言えます。
このケースが示すのは、プライベートな悩みを職場で適切に共有することが、トラブルを防ぎ、問題の早期解決につながるということです。どんな悩みであっても、共有することで協力関係が築けることもあります。
信頼関係は、仕事だけでなく、こうした日常のコミュニケーションから生まれるのです。
■アペロという文化
フランスには「アペロ」という文化があります。仕事終わりに同僚と一杯飲むことです。
お酒と軽いおつまみを囲むこの時間は、単なる娯楽だけではなく、人脈形成の重要な場でもあります。リラックスした雰囲気の中で、本音の会話や重要な情報が自然に交わされます。
実際、私もアペロを通じてビジネス上のつながりが生まれた経験があります。
現状のプロジェクトが終わりに近づき、次のアサイン先のプロジェクトを探しているときのことです。
ちょうど、デジタル関連の新しいプロジェクトが立ち上がる予定があり、誰がプロジェクトメンバーになるのかまだ正式に決まってない頃でした。
アペロの場でプロジェクトマネージャーと偶然隣になり、雑談の中でプロジェクトの話題が出たのです。
私はその場で自分の関心や経験を軽く共有しただけでしたが、後日正式にプロジェクトメンバーとして声をかけてもらうことになりました。こういった思いがけないチャンスにアペロの場で出会うこともあるのです。
その他にも、上司の移動や予算変更、新しいチームメンバーの配置といった業務に影響する情報も、こうした場で早く入手できることがあります。
情報を早く得られれば、それだけ準備ができ、相手との協力関係も築きやすくなります。
また、形式ばらない場だからこそ、職場では見えない人柄や価値観を知ることができ、より親密な関係をつくることができます。
ランチ、コーヒーブレイク、アペロ――どれも小さな時間ですが、人脈を築き、信頼関係を深めるための重要な「投資」です。
忙しい日々の中でも、こうした時間を意識的に確保することで、今後のキャリアを支える強固なネットワークが育っていきます。
■まずは「今ある人脈」を見直す
私が「人脈づくり」を意識的に始めたのは、INSEAD(※)での経験がきっかけでした。
しかし、INSEADに入学してから、その考え方は大きく変わりました。周囲の学生たちは、自分の将来を見据え、「誰と、どのようにつながるべきか」を明確に意識しながら、戦略的に行動していたのです。
では、まず何から始めるべきか。最初は「現状の棚卸し」です。つまり、自分がどんな人たちとすでにつながっているのかを、実際に紙に書き出してみるのです。会社の同僚、上司、クライアント、大学の仲間、昔の友人や恩師……。
書き出していくうちに、自分の周りに、助けてくれた人、刺激を与えてくれた人の存在があったことを、次第に思い出してきます。
次にしたのは、その人たちを整理することでした。たとえば、業界を横断して多くの人とつながる「コネクター」、特定の組織にアクセスを持つ「ゲートキーパー」、強い影響力を持つ「インフルエンサー」、特定の分野に関する専門知識を持つ「スペシャリスト」、困っている人を助け、励ましを与える「サポーター」……。
単なる「友人リスト」ではなく、それぞれが自分にとってどんな役割を果たせるのかを考えてみると、人脈の見え方が一気に変わります。
※フランス、シンガポール、アラブ首長国連邦にキャンパスを持つ世界トップクラスのビジネススクール
■人脈は「受け身」ではなく「設計」する
実際、この方法で気づきを得たことがありました。
それまでは単なる元同僚として認識していましたが、改めて役割を整理することで「この人に相談すれば早い」と自然に行動の優先順位が見えてきます。
まずは「強い関係」の人たちに連絡を取り、次に「弱い関係」だけれど戦略的に意味のある人にアプローチするのです。ここで言う「強い関係」とは、年に一度でも、月に一度でも、あるいは週に一度でも、定期的に連絡を取り合っているかどうか。
悩みや迷いを率直に相談できるだけの信頼関係があるか。そして、困ったときに助けてもらった、もしくは互いに支え合った経験があるか。
これらの問いのうち、1つでも「はい」と答えられる相手であれば、その人はすでに「強い関係」にあると言えます。
いきなり重たいお願いをするのではなく、軽いコーヒーチャットをお願いする。たとえ短時間でも、直接会って話すことで、新しい情報やチャンスが自然に広がっていきます。
こうして気づいたのは、人脈とは「受け身で待つもの」ではなく「意識的に設計するもの」だということ。
しかもその第一歩は、誰か新しい人に会いに行くことではなく、自分の周りにすでにいる人を「戦略的に見直すこと」から始まります。
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星 歩(ほし・あゆみ)
OECD職員
神奈川県横浜市生まれ。
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(OECD職員 星 歩)

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