成果を出し続ける人の休み方は何か。元マッキンゼーでOECD職員の星歩さんは「フランスの多くの人が、昼休みは同僚とレストランで一緒にランチを取るのが一般的で、コーヒーブレイクも多くの人が毎日ちゃんと取る。
週末は『自分と家族の時間』であり、そこに仕事を持ち込むのはマナー違反である」という――。
※本稿は、星歩『世界基準の仕事術』(大和出版)の一部を再編集したものです。
■フランスで「昼休みに会議はあり得ない」
フランスは、ヨーロッパの中でも特に労働時間が短い国として知られています。
年間の有給休暇はおよそ30日。夏のバカンスは最低でも2週間、多い人では4週間も休みを取ります。
法律で定められている労働時間は週35時間、つまり1日7時間労働。昼休みは2時間取る、または昼休みを1時間取る代わりに、17時に退社することも勤務先によっては可能です。
また、勤務間インターバル(勤務終了から次の勤務開始までに必要な休息時間)は連続11時間以上と定められており、毎日休息を取ることが義務付けられています。
フランスの大企業ロレアルで働く中国人の友人から、こんな話を聞きました。朝9時に出社しても、同僚の多くはまだ来ておらず、9時半から10時頃に集まり始めるそうです。
まずはコーヒータイムで一息。12時には昼休みになり、午後の仕事は14時から再開。
16時ごろには再びコーヒーブレイクがあり、18時前にはほとんどの人が退社するとのこと。
あるとき、その友人はフランス人のマネージャーと会議を設定しようとしました。ところが、そのマネージャーのカレンダーはびっしり埋まっており、唯一空いていたのが「昼休みの2時間」だけ。
仕方なく30分だけ昼休みの時間に会議を入れたところ、そのフランス人のマネージャーから怒られてしまったそうです。
「昼休みに会議を入れるなんてあり得ない」と。そのマネージャーにとって、昼休みは大事な「休み時間」なのです。
■週末に仕事を持ち込むのはマナー違反
日本では考えられない話かもしれません。
多くの人が「昼休みより仕事を優先する」のが当たり前とされ、「仕事が第一」という価値観が社会全体に深く根づいています。
しかし、フランスでは事情が異なります。フランスの多くの人が、休み時間をとても大切にしています。昼休みは同僚とレストランで一緒にランチを取るのが一般的で、コーヒーブレイクも多くの人が毎日ちゃんと取ります。
週末に仕事のメールを送るなんてもってのほか。
週末は「自分と家族の時間」であり、そこに仕事を持ち込むのはマナー違反なのです。
マッキンゼー・パリオフィスでは、もちろん平日は1日7時間で終わることはほぼ皆無ですが、バカンスはしっかり取ります。
実際、オフィスそのものが閉まります。夏は3週間(推奨は4週間)、冬は1週間(推奨は2週間)。
その期間は強制的に有給休暇を取る仕組みになっており、誰もが長期休暇を取ることになります。
マッキンゼーで、誰よりも早くエンゲージメント・マネージャーに昇進した同僚がいました。
誰よりも早く昇進した彼を見て、私はてっきり何もかもうまくいっているのだろうと思い込んでいました。
■仕事での成功が幸せをもたらすわけではない
しかし、彼の口から出た言葉は、私の予想とはまったく異なるものでした。彼は仕事以外のすべてを犠牲にしてきたのです。
恋人との関係は悪化し、プライベートの時間は土日以外ほぼなし。
この先ここに居続けることはないと、もう心に決めていました。必ずしも仕事での成功が幸せをもたらすわけではありません。

人それぞれ仕事の重みは違いますが、人生は仕事だけではないのだと感じた出来事でした。
フランスの年金改革も衝撃を受けた一件でした。
フランスの年金制度は長年にわたり財政的な持続可能性が問題になってきました。現行制度では、年金の受給開始年齢は62歳と、他の先進国と比べても比較的低い水準にあります。
こうした状況を受け、2023年にフランス政府は、年金の受給開始年齢を62歳から64歳へ引き上げることを柱とした大規模な年金改革法を成立させました。
しかしこの決定は、国民の強い反発を招きました。全国各地で抗議行動が広がり、デモの参加者は100万人規模に。
地下鉄は運休し、街には回収されないゴミがあふれ、社会全体に国民の怒りと不満が噴き出していました。
この混乱により政権の求心力は大きく低下し、政治は不安定化しました。そして2025年には、政府は年金改革の実施を一時停止せざるを得なくなります。
この一連の出来事は、「これ以上長く働きたくない」というフランス国民の主張と、政府の改革方針との間にある大きなギャップを象徴するものでした。
このように、フランスでは「仕事は人生の一部」であり、「人生のすべて」ではありません。
仕事はあくまで生活のための手段であり、できるだけ効率的に終わらせ、自分の時間を大切にする、それがごく自然な考え方です。
■成果を出し続ける人たちの休日の過ごし方
以前、こんなことを言った同僚がいました。
「自分は、周りと比べて残業時間が少ないから、周りと同じ速さで成長することはできない」。
彼女は真面目で努力家でした。しかし、彼女にとって「残業=成長」という考えが当たり前になっていたのです。
キャリアの成長は、残業時間の長さで決まるものではありません。
大切なのは、どれだけ長く働いたかではなく、どれだけ成果を出し続けることができたか。そして、休むことが成果を出し続けるための1つの秘訣だと思っています。
私も最初は休むことに罪悪感を覚えました。こんなにゴロゴロしてしまっていいのだろうか、こんなに寝てしまって良いのだろうか、こんなに長いバカンスを取ってしまって良いのだろうか、
でも今は、「休むことも仕事だ」と思っています。心身を回復させること。しっかりと睡眠時間を取り、自分の好きなことを心から楽しむこと。

これらは、怠惰ではなく「次の成果を出すための準備」です。むしろ、上質な休息を取れない人ほど、思考力も創造力も低下し、成果を出し続けることができなくなります。
■長く安定して働ける自分でいる方が効率的
そして、もう1つ大切なのが「将来への投資」の時間です。
自分のキャリア、将来の目標につながるような学びや経験を、少しずつ休日に取り入れていくこと。休日に、好奇心を持って学び続ける。それこそが、あなたをさらに成長させる鍵だと思います。
本を読む、新しい分野に触れる、業界の専門家との交流。そのすべてが、仕事とは異なる角度からあなたの視野を広げ、発想の引き出しを増やしてくれます。

休日の数時間を、自分の将来に投資する。その積み重ねが、数年後に大きな差になります。こういった学びは、世界基準で成果を出す人にとって、「努力」ではなく「楽しみ」なのです。
私自身、OECDに働き始めてから、残業時間はほとんどなくなりました。

今まで夜の23時、24時まで働くのが当たり前だった生活から、180度変わりました。
週末以外にも自分のために使える時間が圧倒的に増えたのです。自分の時間をどのように使うかは自分次第です。過労でうつ病を経験して以来、私は「心と身体の健康を最優先にする」ことを大切にしています。
無理をして半年間倒れてしまうよりも、必要なときにしっかり休みを取り、長く安定して働ける自分でいる方が、ずっと効率的だと気づきました。
自分の時間が増えたことで、毎日のようにヨガをし、家族と過ごす時間を持てるようになりました。
■後回しにしていたことが、今ではすべて実現
家を購入するための準備の時間も、本を読む時間も、本を書く時間も、資格の勉強をする時間も取れるようになりました。かつて「やりたい」と思いながら後回しにしていたことが、今ではすべて実現できています。
毎日朝から深夜までただ仕事に打ち込むことだけが人生ではないと思います。
世界基準で成果を出す人ほど、「休むこと」を大切にしています。
休むことで心身を回復させ、回復した心と身体で新しい知識を吸収し、次の挑戦へと踏み出す。
それが、「成果を出し続ける人たち」の共通点だと思っています。

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星 歩(ほし・あゆみ)

OECD職員

神奈川県横浜市生まれ。2014年、慶應義塾大学経済学部に入学。大学在学中、文部科学省が展開する「トビタテ!留学JAPAN」の給付生としてカリフォルニア大学サンタバーバラ校に1年間留学。卒業後、新卒3人枠の1人として、外資系コンサルティング会社キャップジェミニに就職。2021年、フランスに校地を置く経営大学院のINSEADに入学。MBA取得後、日本人として初めて、マッキンゼーのパリオフィスにシニアコンサルタントとして入社。2024年、フランスのパリに本部を置く国際機関、OECD(経済協力開発機構)に転職。現在に至る。本書が初の著。

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(OECD職員 星 歩)
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