■「体にいい習慣」が “石の芽”を育てていた
3000症例以上の結石手術を手がけてきた私の診察室には、「尿酸値も正常で、健康には人一倍気を遣っている」という方々が「ある日突然」担ぎ込まれます。
彼らが陥っているのは、「体にいいはずの習慣」が石を育てる、という盲点です。
手術で15mmの石を摘出した直後、高橋さん(編註:筆者)の腎臓には1.6mmの石灰化が見つかりました。これは再発ではなく、「石ができやすい状態」を腎臓が示したサインです。
近年はCTの解像度が向上し、こうした「石の芽」を早期に確認できるようになりました。生活習慣を見直すきっかけを、いち早く捉えられる時代になったのです。
結石は、尿管や膀胱ではなく、腎臓でできます。腎臓の尿細管や集合管などの壁で小さな結晶が生まれ、徐々に成長し、やがて尿路に現れます。このメカニズムは偶然ではなく、生活習慣と体質、遺伝が交差した結果です。
そして、もう一つ重要な視点があります。
■腎臓は何も教えてくれない
つまり、私たちは自覚のないまま、「石の芽」を育てている可能性があります。血液検査の数値が正常でも安心はできません。腎機能が保たれているうちは、体はほとんど警告を発しないからです。
ビジネスの世界でいえば、目に見えないリスクが水面下で膨らんでいる状態でしょうか。決算書に異常が出たときには、すでに問題は進行しています。結石も同じです。痛みが出たときには、すでに石は完成しています。
だからこそ私は、「症状が出る前の管理」を強調します。痛みを経験してから慌てるのではなく、発症する前、兆しの段階で生活を微調整する。
結石の多くは、シュウ酸カルシウム結石です。シュウ酸は尿中でカルシウムと結びつき、結晶化します。問題は、このシュウ酸を多く含む食品が、いわゆる“健康食品”と重なっていることです。
アーモンドやカシューナッツ、高カカオチョコレート、緑茶。これらシュウ酸を多く含む食材自体が悪いわけではありません。
しかし「毎日」「習慣的に」「多めに」摂取すると、体内に入る総量は確実に増えます。私は患者さんにこうお話しします。「やめる必要はありません。頻度と量を調整してください」と。結石予防は、ゼロか百かではなく、バランスの問題です。
■まずは「3割減らす」を実践してほしい
極端な制限は長続きしません。
この小さな調整を続けることで、尿中シュウ酸濃度は着実に下がります。完璧を目指すより、続けられる方法を選ぶことが重要です。「石の材料」・シュウ酸「3割減」を実践するための具体的なリストをまとめました。(図表1)
【やること】賢い選択と組合せ
・ナッツ類 マカデミアナッツ、ピスタチオを選ぶ。
・飲み物 水、麦茶を基本にする。コーヒーにはミルクを入れる。
・野菜 レタス、小松菜、白菜を積極的に摂る。
・嗜好品 サプリメント食べるならヨーグルトやチーズと一緒に摂る。
・サプリ ビタミンは食品から摂取する。
【やらないこと】石を育てる習慣
・ナッツ類 アーモンド、カシューナッツの常食。特にアーモンドは群を抜いて高い含有量です。
・飲み物 緑茶(特に抹茶や玉露、煎茶)、紅茶、ウーロン茶を水代わりに飲むこと。
・野菜 ほうれん草、タケノコ、ショウガ、みょうがの過剰摂取。「エグみ」はシュウ酸のサインです。
・嗜好品 高カカオチョコを「健康のため」と毎日食べ続けること。
・サプリ ビタミンC(アスコルビン酸)の大量摂取。体内でシュウ酸に変わります。*シミ予防の美容に服用している女性患者さんによく遭遇します。特に注意しましょう。
■結石を遠ざける「4つの思考習慣」
そして、結石を予防するには、以下の4つの習慣を心がけてください。
1.尿を薄く保つ
1日の尿量を2L以上に保つことが基本です。食事以外で2Lの水分を飲み、尿を薄めることが再発予防の王道です。水や麦茶をこまめに飲みましょう。
サウナは構いませんが、水分補給が前提です。脱水を防ぎましょう。運動は、腎臓内の微小結晶を動かす助けになる可能性があります。しかし、水分補給が不十分であれば、逆効果になりかねません。大切なのは、「適度」であることです。
2.カルシウムを味方にする
「カルシウムは石になる」というのは誤解です。食事中にカルシウムを摂ることで、腸内でシュウ酸と結合し、尿に行く前に便として排出されます。ヨーグルトやチーズ、コーヒーに入れるミルクも有効です。
カルシウムが不足すると、シュウ酸が体内に吸収されやすくなり、結果として結石リスクが高まることがあります。
■「健康的な食事」が逆効果に…
3.過ぎたるは及ばざるがごとし;偏りを避ける
特定の食品に偏ることが最大のリスクです。ナッツ、緑茶、ほうれん草、タケノコ、ショウガ、みょうが、高カカオチョコなどは摂りすぎないこと。ビタミンCの大量摂取も注意が必要です。
アーモンドやカシューナッツはシュウ酸含有量が高く、常食すればリスクは確実に上がります。問題は「体にいい」と信じて、毎日同じものを続けてしまうことです。
朝の健康習慣として緑茶(特に抹茶、玉露、煎茶)や紅茶、あるいは大量のホウレン草を入れたスムージーを飲む。これも、結石の専門家から見れば石の材料を補給している状態です。
トム・クルーズのようなストイックな食生活に憧れ、ナッツ(特にアーモンド、カシューナッツ)ばかり食べる、あるいは特定の「超健康食品」に固執する――。はたから見て「極端に偏った食生活」は、結石リスクという点では逆効果になることがあります。
ビーガン(完全菜食)の人に結石が多い可能性が指摘されるのも、動物性食品を避けることでカルシウム摂取が減り、逆にシュウ酸の多い葉物野菜の摂取が増えるという「偏り」が生じるからです。バランスの取れた「普通の食事」こそが、最強の予防薬なのです。
尿路結石は、かつては「贅沢病」と呼ばれましたが、現代ではメタボリックシンドロームの一環とも捉えられています。私が内視鏡でどれだけ完璧に石を取り除いても、その後の習慣が変わらなければ、また「芽」は育ちます。
何事も「過ぎたるは及ばざるがごとし」です。
■なぜ5年で45%の人が再発するのか
4.停滞をつくらないという発想を持つ
運動不足は禁物です。腎臓の中の小さな結晶は、動かないと「下腎杯」という小部屋に停滞して石へと成長します。結石予防では、「揺らす」という行動そのものよりも、「体内に停滞をつくらない」という意識が重要です。
ジョギングや縄跳び、階段の上り下りなど、日常生活の中で体を動かす習慣を持つこと。長時間座りっぱなしにならない、移動をエレベーター任せにしない、といった小さな選択の積み重ねが、「腎臓をゆさゆさ揺らし」、結晶を石になる前に流し出す助けになります。
結石の再発率は高い、とよく言われます。実際、日本の疫学調査では、5年で約45%、10年で約60%が再発すると報告されています。ただ、「再発」という言葉の使い方が、少し曖昧なのではないか、と思います。
高橋さんの術後1カ月の検査で、左右の腎臓に1.6mmの所見が見つかりました。患者さんの立場であれば、「もう再発か」と感じるのは無理もありません。
しかし、あの所見は、腎臓の内腔に露出した“石”とは限りません。腎杯乳頭の壁の中にある微小な石灰化、いわば結石の“前段階”である可能性が高いと私は考えました。画像だけで「再発」と断定することには慎重であるべきだと考えています。
では、それでも再発率が高いのはなぜでしょうか。理由の一つは、「取り残し」です。以前は体外衝撃波(ESWL)が主流で、石を砕くことが治療の中心でした。砕けた破片は自然に排出されることを期待する、という考え方です。
■「3割減」が結石の激痛リスクを遠ざける
しかし実際には、腎臓内に残った微小な破片が核となり、そこに結晶が付着して再び成長することがあります。患者さんからすれば「再発」ですが、医療側から見れば「残っていたものが育った」というケースも少なくありません。
現在は、尿管鏡を用いて腎盂や腎杯の奥まで入り込み、可能な限り完全に摘出する方針が広がっています。結石除去の成功率が上がるだけでなく、再発の連鎖も断つことが期待できます。
私は常に、「腎機能を守ること」を最優先に考えています。閉塞が長く続けば、腎臓は確実にダメージを受けます。だからこそ、これくらいのかけらは流れるだろうと思うのではなく、限りなく取り残しをせず、再発の芽を断つ努力をするのです。
私は自他ともに認める「結石オタク」の専門医ですが、患者さんに「シュウ酸を多く含むものを一切やめろ」とは言いません。お祝いやイベントには、ナッツを頬張ってもいい。好きな映画やスポーツを観ながら好物を食べる。至福のひとときです。その代わり、日常で3割減らす。
結石は一度取れば終わりの病気ではありません。自分の体質(石の成分)を知り、ビジネスと同じように「継続的なセルフマネジメント」を行う。このスタンスこそが、あののたうち回る激痛のリスクを大きく下げる鍵になります。
まだ発症していない人も、すでに経験した人も。志賀式「3割減」という小さな調整が、あの激痛のリスクを遠ざけます。結石は偶然ではありません。日々の習慣の積み重ねが、未来の腎臓を守ります。
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志賀 直樹(しが・なおき)
亀田総合病院 泌尿器科 部長、日本尿路結石症学会 評議員
「尿路結石症診療ガイドライン第3版」(2023年版)システマティックレビューチーム・メンバーとして参加。TUL:経尿道的砕石術(尿管鏡を用いた腎・尿管結石の砕石術)で約3300件の実績を持つ。PNL:経皮的砕石術(大きな結石に対して腎に直接穴をあけて行う高度な高侵襲手術)も約220件手がけたエキスパート。自ら執刀する手術に加え、患者の生活習慣にまで踏み込んだ徹底的な術後の再発予防指導は、医療界の「結石オタク」として信頼が厚い。日々進化する最新の医学論文を網羅しながら、患者一人ひとりに最適な治療を提案している。
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高橋 誠(たかはし・まこと)
医療・健康コミュニケーター 病院広報コンサルタント
1963年東京生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。ミズノスポーツ広報宣伝部、リクルート宣伝企画部、米国西海岸最大の製函会社でのパッケージ・デザイン営業・マーケティング(LA12年)、ゴルフ場経営(山梨2年)、学校法人慈恵大学広報推進室長(東京16年)を経て、2020年より現職。日米複数法人通算40年の広報宣伝業務を通じ、メディア・医療関係者と幅広い交流網を構築。現職にてメディアと医師をつなぐ。プレジデントオンライン「ドクターに聞く“健康長寿の秘訣”」、月刊美楽「幸せなおじいちゃん、おばあちゃんになろう」、月刊源喜通信「食と健康」で医療・健康コラムを連載中。主な出版プロデュースは『世界一の心臓血管外科医が教える 善玉血液のつくり方』(2025年、渡邊剛著、坂本昌也監修、あさ出版)、『心を安定させる方法』(2024年、渡邊剛著、アスコム)、『人は背中から老いていく 丸まった背中の改善が、「動ける体」のはじまり』(2025年、野尻英俊著、岡田あやこ体操監修)。趣味はゴルフ、ワイン(日本ソムリエ協会ワインエキスパート#58)。
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(亀田総合病院 泌尿器科 部長、日本尿路結石症学会 評議員 志賀 直樹、医療・健康コミュニケーター 病院広報コンサルタント 高橋 誠 聞き手・構成=医療・健康コミュニケーター 高橋誠)

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