■旧統一教会の職員340人が早期退職
今の日本では黒字企業のリストラを含む早期退職者募集が日常化している。
そんな中、3月4日に東京高裁が解散命令を出した旧統一教会で早期退職者募集を実施したことが報道された。職員計1200人のうち、50歳以上の500人を対象に希望退職を募り、2月に340人が応募したそうだ。
中高年を狙い撃ちにしたリストラは民間企業だけではないということだろうか。
ただし企業の場合、早期退職者募集といっても実際に実施しているのは大企業、とくに上場企業が圧倒的に多い。
東京商工リサーチの調査(2025年7月9日)によると、中小企業で直近3年以内に早期・希望退職募集を実施したのは0.7%にすぎない。
もちろん中小企業でもリストラがないわけではないが、個別に数十万円程度の“手切れ金”を渡して終わりというパターンも少なくない。
その点、募集時期や対象者を限定して大量の人員を削減する早期退職者募集は上場企業の専売特許ともいえるが、旧統一教会も上場企業並みのリストラを実施したことになる。
■最大22カ月分の給与を計上した退職金
早期退職者募集に応募する、しないの決め手になるのが通常退職金にプラスされる割増退職金や特別加算金の金額だ。
大手企業のごく一部にはその額を1人あたり数千万円も提示する企業もあり、応募者が殺到する事態も起きている。
旧統一教会の場合は「希望退職による上乗せ分を含め、最大22カ月分の給与を計上した退職金を用意。
宗教法人であっても一定の規模であれば、退職金・退職年金があり、DB(確定給付型年金)やDC(確定拠出型年金)に加入し、外部の機関に積み立てているところもある。
50歳代の大企業(従業員1000人以上)の平均退職金は1400万~1500万円ぐらいである。これが通常退職金であり、早期退職者募集の場合は割増退職金が上乗せされる。
割増退職金は一般的に月給の○カ月分と明示されることが多い。旧統一教会の場合は「最大22カ月分」とあるが、月給額はわからない。
ちなみに中央労働委員会の大企業の大学卒のモデル賃金(2024年、所定内賃金、総合職、事務・技術)は50歳で約62万円である。そうすると割増退職金は22カ月で約1360万円になる。あくまで推定であるが、旧統一教会の退職金総額は最大で1400万円+1360万円で2760万円になる計算だ。
超大手企業の4000万~5000万円に比べると見劣りするものの、以前に比べて退職金が減少している最近の退職金相場の中では「破格」といえる。
■割増退職金の相場は500万~1000万円
とはいえ、世の中では黒字リストラ企業の退職金額の多さに目を引かれ、「会社が早期退職募集すれば自分も応募する」という中高年も珍しくない。しかし早期退職募集への応募は会社側にメリットはあっても社員にとっては微妙だ。
確かに大企業の中には割増退職金を24カ月分(2年分)ないし36カ月分(3年分)、多いところでは48カ月分(4年分)の大盤振る舞いをするところもある。
企業にとっては退職費用として特別損失を計上することになるが、年功序列で高止まりしている中高年の人件費を大幅に削減でき、次年度以降は会社に利益をもたらす。
しかも「人件費構造改革」のためのリストラと言えば、株主の理解も得られ、株価が下がることもないだろう。
一方、社員にとってはどうだろう。じつは上場企業の早期退職者募集の割増退職金は、前出の大手企業ほど高くはない。
東京商工リサーチ情報本部情報部の本間浩介氏は「加算される特別退職金の額は一概には言えないが、平均で1人500万~1000万円ぐらいではないか。東証プライム企業だと1000万円ぐらい、スタンダード、グロース市場になると、1人あたり500万~200万円ぐらいになる」と語る。意外と少ないのに驚く。本間氏は「月給の12カ月分であればけっこう手厚いし、高いほうではないか」と語る。
実際に検証してみよう。東証プライムの新電元工業(本社:東京都千代田区、従業員数は単体で1000人超)は今年1月27日から2月26日の期間に、満50歳以上かつ勤続10年以上の正社員などを対象に50人程度の早期退職者募集を実施した。
3月9日に公表したリリースによると46人が応募したとある。
一方、「特別退職金及び再就職支援に関わる費用約6億円を特別損失として2026年3月期決算に計上する予定です」(リリース)と書かれている。
6億円を応募者の46人で割ると約1300万円になる。再就職支援費用を除いても1000万円強であり、本間氏のいうプライム市場の平均的な割増金と同程度になる。
つまり、割増金の実態は高くても1000万円程度が現実である。仮に年収が1000万円であれば1年分を余計にもらえることになる。
■転職が年収500万円で決まれば御の字
少なくない額ではある。しかしこれで本当に会社を辞めるメリットといえるのだろうか。
50歳であれば定年まで10年、その後、再雇用で65歳まで働くとすると、最低15年は働かなくてはいけない。仮に会社が3年分の割増退職金を支給したとしてもそれだけでは暮らせない。もちろん今の日本は人手不足であり、雇ってくれる会社はあるだろうし、再就職すれば何とかなると考えている人もいるかもしれない。
年齢による「転職限界説」も薄れつつあり、中高年の転職者も増加している。
マイナビの「転職動向調査2026年版(2025年実績)」によると、25年の正社員の転職率は7.6%であるが、40代は21年以降最高の6.8%、50代も最高の3.8%となっている。とはいっても転職後の年収がそんなに高いわけではない。50代の転職後の年収は572.8万円だ。また、転職サービス「doda」のエージェントサービス経由の転職者データのミドルシニア(45~60歳)の平均決定年収は566万円(2025年4~9月期)だ。
大企業の大学卒のモデル年間賃金は、50歳で約1096万円、55歳で約1106万円だ(中央労働委員会調査)。つまり運良く再就職先が決まったとても半額程度ということになる。ちなみに同調査では30歳のモデル年間賃金が592万円であり、それと同程度ということになる。
■再就職先が見つからない厳しい現実
ミドルシニア専門の転職コンサルタントは「早期退職者募集に応募して辞めた後に、再就職先を探している人は多いが、年収500万円で決まれば御の字だ。前職と同程度の1000万円以上で決まる人は半導体技術者や国際法務に長けた高スキルの一部の人に限られる。一般的な事務系出身者では500万~600万円の年収を希望してもなかなか決まらず、何十社と落ち続けている人はザラにいる」と厳しい現状を語る。
こうした現状に早期退職者の募集に寛容といわれる労働組合も危機感を募らせている。製造業系の産業別労働組合の幹部は「リストラした社員を民間の再就職支援サービス会社に支援を依頼しても、なかなか再就職先が見つからないという声も多い。
人手不足だからなんとかなると、目の前の退職割増金に目がくらんで応募しても、その後の雇用や生活は決して保障されない。残りの十数年の職業人生や老後の生活をどうしていくのか、自分でしっかりと考えた上で選択してほしい。
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溝上 憲文(みぞうえ・のりふみ)
人事ジャーナリスト
1958年、鹿児島県生まれ。明治大学卒。月刊誌、週刊誌記者などを経て、独立。経営、人事、雇用、賃金、年金問題を中心テーマとして活躍。著書に『人事部はここを見ている!』など。
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(人事ジャーナリスト 溝上 憲文)

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