手術が必要なとき、病院や医者はどう選ぶといいか。医師の牧田善二さんは「重篤な病気や症状に陥った場合は、最高の医者を探して、その先生に手術をお願いすることを私は強くすすめている。
難しい治療ほど、医者の技量によって治療後の状態が左右される」という――。
※本稿は、牧田善二『医療に殺されない 病院・医者の正しい選び方』(新星出版社)の一部を再編集したものです。
■言われるがままに手術は受けない方がいい
精密検査や手術などを受ける必要があり、大きな病院を受診したとき、「今すぐ手術しましょう」と言われることがあります。このような場合、言われるがままに手術を受ける人がほとんどかもしれません。
私はそれに反対です。
これは手術そのものがダメだと言っているわけではありません。
高齢の方で「今さら手術を受けなくても」などと、手術自体に否定的な方もいらっしゃいますが、医療技術の進歩は本当にめざましく、優れた手術であれば80歳を過ぎても手術を受けていいと私は思っています。
例えば、昭和天皇の弟である三笠宮崇仁親王は、2012年に96歳で心臓弁膜症の手術を受けました。これは大変な大手術です。でも成功して100歳で亡くなるまでお元気に過ごされました。
90歳を過ぎた患者さんでも、心臓の弁を取り替えるという大掛かりな手術を安全にできるようになっているのです。人というのは、命が危険にさらされたとき「絶対に死にたくない」と思うようになっています。

50代くらいの男性で「長生きしなくていいから手術しない」とか「延命治療は絶対に受けない」などとおっしゃる方がいるのですが、これは今元気だからそう言っているだけです。
人というのは、命が危険にさらされたとき「絶対に死にたくない」と思うようになっています。脳がそうなっているのです。だから、ガンになったなど実際に命の危険がある病気になり、もしそれが手術で治ると知ればそれを受け入れます。
■最高の医者を探して、手術をお願いする
現在は医療が進み、最新の技術を用いれば、痛くなく、体への負担も少なく、手術して治せるようになってきています。ですから、受けられる手術があるのであれば進んで受けたほうがいいと私は思います。
ただし、それにはいい病院、いい医者にかかることが必須です。特に、重篤な病気や症状に陥った場合は、最高の医者を探して、その先生に手術をお願いすることを私は強くすすめます。
これまでにも紹介しているように、難しい治療ほど、医者の技量によって治療後の状態が左右されます。最高の腕を持つ医者に治療してもらうことができれば、痛みが少なく、入院日数も少なく、確実に治療してくれます。
また、受ける検査や治療が本当に必要なことなのかもはっきりと確認する必要があります。検査や治療のなかには、危険なリスクが伴うものもありますから。

むしろ、極端なことを言えば、どんな検査や治療にも少なからずリスクがついてきますから、必要のない検査や手術は受けないほうがいいのです。
ですから、入院が必要になると言われた場合は、セカンドオピニオンを求めてほかの医者の意見を聞くなどして、よく検討しましょう。
セカンドオピニオンとは、現在かかっている病院とは違う医療機関を受診して、治療方針についての意見を求める制度です。ガンなどの治療が難しい病気のときによく利用されます。意見を聞く医者は、その治療について詳しく知っている信頼できる人を探しましょう。
■数万円のお金を惜しまずセカンドオピニオンを
セカンドオピニオンの結果が、かかっている病院とそれほど変わらなければ、受ける必要がある検査や治療だということがわかりますし、異なる治療方針が提示された場合は、考え直す必要があります。
セカンドオピニオンの結果が、かかっている病院とそれほど変わらなければ、受ける必要がある検査や治療だということがわかりますし、異なる治療方針が提示された場合は、考え直す必要があります。
もし、すでにかかっている病院や医者が本当に信頼できるのであれば、素直にしたがって治療を受けてもいいと思います。そうでない場合はセカンドオピニオンを受けて、別の医者の意見を聞くことをおすすめします。
セカンドオピニオンは公的医療保険の対象外なため、自由診療扱いになり全額自己負担になります。一般的には30分以内で1万円~1万5000円程度ですが、有名大学病院では30分で2万円と少し高額になります。大切な命を守るためですから、お金を惜しまず前向きにセカンドオピニオンを検討しましょう。

セカンドオピニオンを聞くときの流れは下記を参考にしてください。
■「医者に気兼ねして質問しない」は絶対ダメ
これも、日本人に多く、ぜひやめていただきたい習慣です。
病院を受診したとき、診察室で医者の前に座ると、気兼ねして質問ができなかったり、「こうして欲しい」という自分の希望を伝えることができない人は、わりとたくさんいるのではないでしょうか。
例えば、私の専門である糖尿病だったら、定期的に通院して検査を受けたり、薬を処方されるわけですから、検査でどんなことがわかるのか、必要性があるのか、どのようなことに効く薬なのかなど、聞きたいことがいろいろとあるでしょう。
こうしたとき、医者に気兼ねして質問しないということは、絶対にしないようにしてください。医療は自分で納得して受けることがとても大事だからです。
薬を飲むときに、「この薬は本当に効くのかなあ」「薬を飲んで副作用が出たらどうしよう」など、不安を抱えながら過ごすことは精神衛生上よくないことです。また、必要のない検査を行うのも、避けるべきです。遠慮せず、主治医に自分の疑問や不安に思っていることを聞きましょう。
もし、その疑問に対してきちんと答えてもらえないなら、その医者をやめて別の医者を探したほうがいいと思います。
医者にはいい医者もいればよくない医者もいます。横柄だったり、患者さんから求められてもきちんと説明しないような医者はいい医者ではありません。
納得できない医者に通い続けるのはやめて、質問しても機嫌が悪くなったりせず、あなたにわかるように説明してくれるいい医者を探しましょう。
いい医者はたくさんいますから安心してください。
ただし、あまり笑わないので冷たそうに感じるといった理由で医者を変えるのはやめましょう。病気についてわかりやすく説明ができ、質問に対して的を射た回答ができる医者でしたら、その人はいい医者に必要な説明するスキルがあります。
■医療費節約で検査を減らすと命取りに
日本の医療費は、欧米に比べて信じられないくらい安く設定されています。アメリカでは1日入院すると100万円はかかります。外来で1回の通院は、治療費だけで10万円くらいはします。
医療保険に加入していれば自己負担分以外は保険でまかなわれますが、最初は自分で支払い、あとで返金されるというケースが多いため、患者さんはどのくらいの金額がかかっているかを実感できます。結果、病院や医者を見る目や選ぶ基準は、どうしても厳しくなります。
日本の場合は、軽いカゼくらいであれば、1回にかかる自己負担分の医療費は2000~3000円程度ですみます。これは欧米では信じられないくらいの安さです。
でもここでよく考えていただきたいのです。
安く医療を受けるのと、高額だがきちんと治る治療を受けるのとでは、どちらがいいでしょうか。
例えば、患者さんのなかには、医療費を節約するために検査数を減らせばいいと考える方がいます。「検査を減らしてください。余計な検査はしないでください」と言う方もいらっしゃいますが、それが命取りになることもあります。
糖尿病のような慢性の病気は検査が不可欠です。なぜなら、検査しないと病気がよくなっているのか、悪くなっているのか、今の薬や治療でいいのか、副作用が出ていないかなどが判断できないからです。
■疑問に思うことはなんでも質問する
ところが、「検査はしなくていいので薬だけ出してください」という患者さんや、「病気は薬を飲みさえすれば治る」と思っている患者さんが、実にたくさんいます。特に、コロナ禍以降に増えました。
先ほども言いましたが、治療には検査が不可欠です。病状は変わりますから、同じ薬を飲んでいるからといって、病気が改善して、その状態をコントロールできているとは限りません。ところが、それを理解していない患者さんが多いのです。
この問題を解決するためには、医者が患者さんの信頼を得ることが大事であると私は考えています。
患者さんが医者の言うことを本当に信頼すれば、どの検査も治療も必要があるからだと理解して、受けてくれるはずです。
もちろん、疑問に思うことはなんでも質問してください。ただ、検査や治療についてはどんなに説明しても、患者さんが医学的に理解するのは難しいでしょう。だからこそ、医者を信頼できるか否かが大切なのです。
例えば、血液検査でも、医療の正しい知識がなければ、それぞれの検査数値の意味は理解できません。医学部に6年間通い、医師国家試験に合格して、それなりの臨床経験を積んでやっと理解できるくらいの内容です。さまざまな検査の数値を総合的に判断するとなればなおさらです。
もちろん、医者はできるだけわかりやすく説明します。説明する能力は医者にとって大事なコミュニケーションスキルですから、いい医者の条件です。大きな手術の際には、手術前に詳しい資料を渡す病院もあります。ただ、医療の知識が少ない患者さんが、検査や治療について詳しく説明されても、きちんと理解するのはなかなか難しいでしょう。
■「信頼した先生にゆだねるしかない」
ちょっと話が大げさになりましたが、「医者に質問するな」「医者を信用するな」ということでは、決してありません。いろいろな質問をして、その先生の答えに納得して、信用できると感じたのなら、あとはすべてまかせるのが、理想的な医者と患者さんの関係だと私は思います。
結局は、「信頼した先生にゆだねるしかない」というのが現実的な話ではないでしょうか。そのためにするべきことは、「この先生だったら自分の命を預けることができる」という、信頼できる医者を探すことです。
そして患者さんは、信頼できる医者から必要な医療を提示されたときには、それにかかる医療費は惜しむことなく出して、適切な検査・治療・手術などを受けて欲しい――そう願っています。

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牧田 善二(まきた・ぜんじ)

AGE牧田クリニック院長

1979年、北海道大学医学部卒業。地域医療に従事した後、ニューヨークのロックフェラー大学医生化学講座などで、糖尿病合併症の原因として注目されているAGEの研究を約5年間行う。この間、血中AGEの測定法を世界で初めて開発し、「The New England Journal of Medicine」「Science」「THE LANCET」等のトップジャーナルにAGEに関する論文を筆頭著者として発表。1996年より北海道大学医学部講師、2000年より久留米大学医学部教授を歴任。
2003年より、糖尿病をはじめとする生活習慣病、肥満治療のための「AGE牧田クリニック」を東京・銀座で開業。世界アンチエイジング学会に所属し、エイジングケアやダイエットの分野でも活躍、これまでに延べ20万人以上の患者を診ている。
著書に『医者が教える食事術 最強の教科書』(ダイヤモンド社)、『糖質オフのやせる作おき』(新星出版社)、『糖尿病専門医にまかせなさい』(文春文庫)、『日本人の9割が誤解している糖質制限』(ベスト新書)、『人間ドックの9割は間違い』(幻冬舎新書)他、多数。 雑誌、テレビにも出演多数。

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(AGE牧田クリニック院長 牧田 善二)
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