子どもの便秘はよくあるため、つい様子見しがちだ。しかし、小児科医の森戸やすみさんは「よく下剤を使うとクセになるというが、むしろ便秘を放置するとクセになってしまうので、早めの対処が大切だ」という――。

■どういう状態が「便秘」なのか
「毎日うんちは出ているのに便秘」という子どもがいるのをご存じでしょうか。
子どもの便秘は決してめずしいものではなく、10人に1人以上に見られるとされています。そもそも便秘というのは、便の回数が少ないか、出にくい状態です。排便回数が週3回より少ない場合、5日以上出ない日が続く場合、コロコロした硬い便が少量ずつ続く場合、排便時に痛みや出血がある場合などをいいます。
そうして慢性的な便秘によって腸に便が溜まりすぎたり、大きな便のかたまりが腸をふさいだりすると、緩い便が少しずつ漏れ出て下着や床につくといったケースもあります。これは「遺糞症(いふんしょう)」といって、本来なら排便コントロールのできる4~5歳以上の子が緩い便を少しずつ意図せずに漏らしてしまう状態です。
便秘には大きく2種類があり、1つは腸や肛門、ホルモンや神経の病気による「器質性便秘症」、もう1つははっきりとした原因のない「機能性便秘症」で、ほとんどは後者です。機能性便秘は、離乳食を開始あるいは完了したとき、トイレトレーニングがうまくいかないとき、新学期になりやすいことが知られています。なぜかというと食事や生活のリズムが変わり、排便のタイミングが乱れやすいためです。そこで、今回は子どもの便秘の原因と家庭でできる対応、そして受診の目安について解説します。
■便秘を放置してはいけない理由
さて、便秘というと、軽く考えられがちですが、じつはそのままにするのはよくありません。なぜなら腸に便が溜まっている状態が通常になると、便意を感じにくくなるので、より溜まりやすくなってしまうからです。
その状態が長く続くと、大腸が拡張されて「巨大結腸」のような状態になることも。さらに便が体外に出ずにずっと腸の中にあると、水分が吸収されて硬くなり、排便時に肛門が痛くなるので、子どもは排便を我慢することになりがちです。
小さい子だとお腹が張って吐きやすくなったり、母乳や育児用ミルクを飲みたがらなくなったり、食欲が落ちたりします。便が出にくい状態が1~2カ月続いている状態を「慢性便秘症」といいますが、気づかないうちに慢性便秘症になっていて、便意を感じるたびに大泣きしてしまうというような状態になってから受診する子もいます。
小学生以上の大きな子では、ときどき「お腹が痛い」と訴えるものの、しばらくするとおさまるので様子を見ていたら、急に顔色が真っ青になって脂汗をかくほど苦しくなって救急外来を受診するというケースもあります。こういうケースでは、問診したり、お腹を触って診察したりして、レントゲン写真を撮ると大腸いっぱいに便が貯留していることが多いのです。
■浣腸や飲み薬はクセにならない
もしかしたら便秘は医療機関で治療できるものだと知らない人もいるかもしれませんが、小さい子でも大きな子でも、早めに小児科を受診するのがおすすめです。そのほうが本人がつらくないし、治療期間も短くてすむでしょう。
受診時にすでに苦しい状態になっている場合、外来で浣腸をしたり、手で便を出す「摘便」や腸を洗う「洗腸」をしたりして、まずは詰まっている便を出します。綿棒にワセリンや油を塗ったもので肛門を刺激するだけで出る場合もありますが、そのくらいの刺激では出ない状態になっていることもあります。
私自身は経験がありませんが、便秘がひどい場合は麻酔を使って摘便をしたり、数日かかって便を取り除いたりすることもあるようです。浣腸のいいところはすぐに便が出るのでラクになることと、効果がその場で確認できること。
でも、子どもが成長すると浣腸を嫌がるので内服薬を使うこともあります。
こういった浣腸や飲み薬がクセになってしまうのではないかと心配する方がいます。しかし、便が浣腸しないと出ない、薬をどんどん増やさないと出ないということにはなりません。むしろ、便秘を我慢すると便秘がクセになってしまいます。
■生活習慣の改善がとても大切
いったん直腸に溜まっている便を取り除いたら、また溜まってしまうことなく大腸から直腸に便が降りてきたらすぐに排便できるように生活習慣を改善します。
規則正しい生活をする、外遊びなどで体を動かすほか、トイレは我慢せずにすぐに行く、トイレにゆっくり座る時間をつくる、といった習慣が身につくようにしましょう。トイレは清潔で明るい環境にし、足がブラブラしないよう台などを置いて子どもが気張りやすいようにします。自分でトイレに行けないような小さい子の場合は、「うんちをするとスッキリする」ということを何度も体験することが大事です。
食事の工夫としては、バランスよく、十分な量を摂るようにします。そして、食物繊維の摂取量を増やしましょう。私たちが食物繊維が豊富だとイメージしやすい食品といえば、玄米や芋類、根菜、豆などですね。これらに含まれるのは「不溶性食物繊維」で、便のかさを増してくれます。
一方、海藻やキノコ類、果物などに多く含まれるのは「水溶性食物繊維」で、腸内細菌叢を活性化して腸内環境を整え、腸内に水分を増やして便を軟らかくします。不溶性食物繊維ばかりを摂りすぎると便が硬くなってしまうので、この両方を摂取しましょう。
私たちの便は、食べたものの残りと腸内細菌、消化液、腸壁から剝がれた粘膜などのさまざまなものでできていて、固形成分が全体の約4分の1、水分が約4分の3であるのが健康な状態です。だから、水分を十分に摂ること、水溶性食物繊維で便に水分を与えることが必要なのです。
■飲み薬はそれぞれに合わせて処方
内服治療を行う際には、お子さんごとに効果や飲みやすさを考慮しつつ、年齢に合わせて薬を選びます。第一選択薬としては、食べたり飲んだりしたものから水分を取り込むことで便を軟らかくする「浸透圧性下剤」を処方されることが多いでしょう。「酸化マグネシウム」や「硫酸マグネシウム」、2歳以上だったら「モビコール(一般名マクロゴール4000)」といった薬があります。
これで十分な効果が得られなかった場合、大腸を刺激して動かす薬を使います。「大腸刺激性下剤」と呼ばれるもので、子どもには「ラキソベロン(ピコスルファート)」や「アローゼン(センナ)」、「プルゼニド(センノシド)」、「大建中湯(大黄を含む漢方薬)」などが使われます。また「テレミンソフト(ビサコジル)」という坐薬を併用することも。飲み薬で効果が少ない場合、大腸を刺激する坐薬を併用すると、15~60分くらいで便が出てくるためです。
こうして適切な治療を続ければ、数日から2カ月ほどで週3回以上、苦痛なく便が出るようになります。
この状態を続けていると、ほとんどの場合は次第に便秘症が治っていきます。
■無理なトイトレや叱責は避ける
ただし、内服治療をしている場合、急いで薬をやめないほうがいいでしょう。便秘がよくなった途端に治療をやめると高い確率ですぐに再発してしまうからです。直腸に便が溜まっていないことに慣れる必要がありますし、直腸に便が降りてきたらすぐに排便することが習慣になったほうがいいのです。
また、生活習慣が改善されないまま、内服をやめるのもよくありません。先に述べたように食事に気をつけ、便意を我慢しないようにし、生活リズムを規則正しくしましょう。そして、必要になったら早めに薬を再開します。
反対にやってはいけないことがあります。それは、無理なトイレトレーニングや叱責です。トイレトレーニングは目安として、①1人で歩ける、②1人で下着の上げ下げができる、③尿意・便意を自覚して伝えられる、④トイレに興味を示す、といった状態になってから始めましょう。また、おしっこやうんちを漏らしたり、なかなか出なかったりしたときに叱るのはよくありません。子どもが叱られないために便意を我慢したり、トイレが嫌いになったりする可能性があるからです。

便秘は軽い病気ではありますが、じつはつらい思いをしている子が少なくありません。気になる症状がある場合は、「そのうち治るだろう」と様子を見るよりも、気軽に小児科で相談してみてください。

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森戸 やすみ(もりと・やすみ)

小児科専門医

1971年、東京生まれ。一般小児科、NICU(新生児特定集中治療室)などを経て、現在は東京都内で開業。医療者と非医療者の架け橋となる記事や本を書いていきたいと思っている。『新装版 小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』『小児科医ママとパパのやさしい予防接種BOOK』など著書多数。

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(小児科専門医 森戸 やすみ)
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