■稼ぎ・消費・投資 どれも全力投球だが
今回ご相談に見えたのは、7歳の一人娘を育てるシングルマザーの佐伯真弓さん(仮名・46歳・会社員、関東地方在住)。相談目的は「娘を全寮制の中高一貫校に入れるために家計を見直したい」というもの。
佐伯さんはセールスの仕事で多忙。平日は朝早く起きて仕事をし、子どもと一緒に家を出て、夜も子どもを寝かしてから遅くまで仕事をする日々。収入は手取りで月70万円程度(年収1000万円超)を稼ぐものの支出はそれを上回る76万円で、恒常的に6万円の赤字が続いています。赤字の補填は、1850万円の貯蓄(相談当時)から切り崩しています。
佐伯さんの資産は、会社の給料から天引きされている企業型DC(確定拠出年金)と、毎月、元夫から振り込まれる7万円の養育費を貯めてきたもの。そこに、結婚前に個人で所有していた東京23区内のワンルームマンションがありました。
その物件が近年の新築・中古マンション相場の異様なほどの値上がりを受け、夫と離婚後に売却したところ、資産全体としては計5000万円ほどになったといいます。
それを元手に今の戸建ての購入資金(頭金約3000万円)と、毎月の赤字補填(月6万円で年72万円)のために引き出してきた結果、1850万円ほどに目減りしたとか。
「このままでは家計の補填で貯金が消えてしまいそうです。本当は、子供の教育費のために取っておきたいのに……。そこで使い込み防止とインフレ対策を兼ねて、今残っている1850万円の貯金はNISAの非課税枠をフルに使い、月30万円の上限MAXで投資を始めたわけですが、果たしてこんなやり方でいいのかどうか。見直すとしたら、どこでしょうか?」(佐伯さん、以下同)
普通預金残高の一部を投資用口座にスライドさせて運用に回すことは、おっしゃるとおりインフレや物価高による資産価値の減少を防ぐ効果があります。また、もし利回り3%程度で運用できれば資産も増えていくでしょう。
ただし、月6万円の赤字補填を貯蓄から切り崩すのはおすすめできません。貯蓄は教育資金とご自身の老後資金のためにもっとハイペースで増やす必要があり、減らしている場合ではないからです。
■支出が多いのは「特性が関係している」
そもそも、6万円の赤字補填と30万円の積み立てのために年間432万円を切り崩していれば、単純計算でもあと4年程度で預金口座は底を尽き、臨時支出があったとき立ち往生します。「そのときは投資信託の一部を売却して現金を引き出せばいい」と考える人もいますが、必要な時に納得のいく金額で売却できるかどうかは未知数です。
佐伯さんにはある程度のマネーリテラシーはあるように見えますが、なぜ消費には歯止めがかからないのでしょうか。
本人はその理由を、「特性が関係しているのでは」と自己分析しています。
「私、いわゆる大人のADHDなんです。(脳の機能障害と言われる)ADHDの症状の出方や程度は千差万別といわれていますが、私の場合、衝動的で多動の傾向が強いみたい。
せっかちだし、何か思いつくと後先考えずにすぐ行動に移してしまう。だから気づけば予定は親子ともに詰めっ詰め。家計のやりくり、片付け、日用品などの在庫管理も大の苦手。モノが多過ぎて足の踏み場がなくなったから2LDKのマンションを売って今の戸建てに引っ越したわけですが、広くなったら広くなった分、またモノが増えて家の中はちょっとした“ゴミ屋敷”状態。今の住まいは子供が生まれて4軒目ですが、もうすでに引っ越したい。暇さえあれば不動産サイトをチェックしています」
早口で息つく間もなくまくし立てる佐伯さん。消費理由を尋ねていたはずが、いつの間にか引っ越し先に話が飛んでいました。予定をどんどん詰め込みモノを買い続け、引っ越しを繰り返す……。
この行動力が、会社でもダントツの営業力となり収入につながっているようです。しかし家計においては悪い方に影響してしまっているのが現状。
そこで考えたのが、佐伯さんの「得意」を生かした仕組み作りです。
■持ち前の行動力と仕事意欲を家計管理に
佐伯さんの強みは行動力。そしてふだん、仕事ではExcelはもちろん、AIも使いこなしている。そこに目をつけた私たちは、支出の内訳をExcelで管理していただくことに。
佐伯さんは住宅費(ローン返済など)の20万円を除くと、ほぼ全ての支払いをクレジットカードで決済。その請求額が月50万円程度あるため「50万円=生活費」ということは大雑把に把握しているものの、どの費目にいくらずつかけているのか、何がイレギュラーで何が通常の生活費なのかが曖昧でした。
そこでまずクレカの使用明細をExcelに転記し、精査。Excelなら検索機能が使えるので、振り返りがしやすくなります。
我々が何かを質問すると、その場でExcelで検索したり、AIを使いながらピポットテーブル(データの計算、集計、分析を行う強力なツール)をすぐに作成する佐伯さん。「こうすることはいかがでしょう」「こうできたらいいですね」といったふわっとした言い方だと優先度が下がりますが、「こういうことが分かるように出来ますか?」「予算は○○円に設定しましょう」とプロジェクトのように明確に指示を出すと、飲み込みも早く、驚異的なスピードでフィードバックしてくれるように。
家計管理を業務の一環として捉えた佐伯さんを見て、仕事に没頭される方だと、家計管理を業務の一環として捉えていただく方がスムーズな場合もあるのだと実感しました。
■子供の体験学習費用&習い事に月20万円超
そうしてできあがったExcelをもとに、今回見直した費目は主に3つ。①教育費(月17万円、うち7万円は私立小の学費)、②娯楽費(月13万円)、②日用品代(3万9000円)です。
そのうち①教育費と②娯楽費の内訳リストを見て、仰天しました。
定期的な習い事は、バレエ、そろばん、英語、スイミング、ピアノ、図工で、これだけで固定費が計10万円。そして土日は参加型のコンサートや、自然体験型の理科教室に、長期休みはキャンプ合宿などに参加。娯楽費の月13万円は、こうした不定期のイベント系に消費されていることが分かりました。要は、②の娯楽費の多くも教育費と言っていいのです。
「机上の勉強だけでは伸びないと思って。例えば、川はどうしてできるのかを教科書で読むだけでは頭に入りづらい。まず山奥にある川の源流から支流までをたどるというように、実体験が必要だと思うんです。そうやって、教科書や本で見たものを現地に見に行く小旅行も娯楽費には入っています」と話す佐伯さん。
当のお子さんは楽しんでいるかと聞くと、「う~ん。
ということは、本人が乗り気でない習い事やイベントは削る余地があります。そう提案すると、後日早速バレエ教室を辞めさせ、固定費からは2万円を削減。変動費のほうは予算を下げて、コンサートや自然体験型の理科教室をなどの単発講座を月6万円分減らしたと、報告してくれました(前出①②の計30万円の支出は、22万円に減少)。
■日用品の「重複買い」はExcelの検索で防止
一方で、被服費や食費などにはお金をかけていません。例えば食費は7万円ですが、「死なない程度に食べられればOK。食材や味にこだわりはありません」。
ただ、日用品代月3万9000円は、モノがどこに行ったのか分からず重複買いをしてしまっていたため、工夫を凝らすことでスリム化を図りました。
まず日用品は置き場所を決め、Excelの検索機能を活用して無駄な出費を抑制。例えばExcelで「ボールペン」と検索をかければいついくらで買ったか一瞬で判明し、重複買いを防止できるというわけです。結果、日用品代は2万2000円もカットできました。
そのほか、お子さんの習い事が減った分、習い事と習い事の間の送迎で使っていたタクシー代や車のガソリン代が減り、自動車関連費は2万円カット。
合計、10万8000円を削減でき、76万1000円の支出は65万3000円に。収支の差額は、6万1000円の赤字だったのが、4万7000円の黒字家計に生まれ変わりました。
■「教育費を中高学費にスライド」は可能?
今後、佐伯さんはアフター支出額のうち教育費と娯楽費の計22万円をそのまま中学受験の費用や全寮制の中高一貫校の学費等(年間予算250万円)に充てる予定だと、話します。
理論上はそのまま推移できなくもありません。
しかし、学費は年々ベースアップし、プラスαで小遣いやら補習費用などのオプションがかかってくる可能性があります。中高一貫校は、中学だけでなく高校入学時にも入学金がかかりますし、大学受験対策の予算も残しておきたいところ。
もしお子さんが、医学部や芸術系の大学、あるいは海外大学を希望したら、大学だけで年間1000万円以上の学費も覚悟しなければなりません。月22万円を予算するだけでは不安が残ります。
ましてや、支出は気を抜くとすぐに赤字に戻ります。
地味な作業になりますが、引き続きクレカの明細を毎月振り返りをして、今月は何にいくらかかり、収支が赤字なのか黒字なのかの認識を続けていただくことに。かかりすぎている費目があれば「ここはあと○円削減したい」といった具体的なやりとりを毎月繰り返すことで、家計管理の定着を図ります。
そして収支の黒字を少しでも増やし、貯蓄の一部と合わせてコツコツと運用していく方針です。年間特別支出は、ボーナスの範囲で収めていただきます。
■教育費を減らした結果、子供の影響は?
ところで、教育費と娯楽費を減らした結果、お子さんの影響はどうだったのでしょう。
「特段影響は見られません。予算内で十分楽しんでいます」
考えてみたら、あれだけ予定を詰め込んでいたのは、私が自分の仕事時間を確保したかったからなのかも。平日は学童代わりに習い事を埋めて、土日もイベントに行ってもらえたらその時間は自分の時間がとれますし、子どもも私が何か教えるより専門家に教わった方がいいです。
家で私が相手できず、タブレットで動画ばかり見ている状況も不安でしたしね。民間が運営する質の高いお教室で、その時間はできるだけ楽しんでもらいたいという思いもありました。
今後、娘が全寮制の中高一貫校に入ってくれれば、私は安心して仕事ができますし、、彼女は寮で安全に過ごすことができると思っていました。ただ、娘は今のところ、小学校でできた友達とずっと一緒にいたいみたい。娘のためにとかけてきた教育費や娯楽費も、娘と色々と話をしてきて、家にいる時間も悪くないのかもしれないと思い始めてきました。受験をさせるべきか、今通っている私立小の系列中学にこのまま進学してもらうか、揺れています」
子育てと仕事の両立、特にお子さんが小さい時はバランスが難しいと思います。ただ、人生は思い通りに行きません。「親の受験」と言われるほど親の負担を強いられる中学受験期に、今のペースで仕事を続けられるのか。また10年後も今の収入が続いているのかどうか。佐伯さんの勤務先には再雇用制度がなく、現在7歳のお子さんが21歳のときに定年を迎える予定です。そのとき、お子さんがもし海外大学に入っていたら……と、不安要素を挙げればきりがありません。ただ、佐伯さんほどの行動力があれば、何かあっても道は切り開けるのではないか。そんな気もしています。
----------
横山 光昭(よこやま・みつあき)
家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表
お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の確実な再生をめざし、個別の相談・指導に高い評価を受けている。これまでの相談件数は2万6000件を突破。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。著書は90万部を超える『はじめての人のための3000円投資生活』(アスコム)や『年収200万円からの貯金生活宣言』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を代表作とし、著作は171冊、累計380万部となる。
----------
----------
桜田 容子
ライター
明治学院大学法学部を卒業後、男性向け週刊誌、女性向け週刊誌などで取材執筆活動を続け、気付けばライター歴十数年目に突入。にもかかわらず、外見は全然ライターっぽく見られない。趣味はエアロビとロックンロールと花見など。
----------
(家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表 横山 光昭、ライター 桜田 容子)

![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 昼夜兼用立体 ハーブ&ユーカリの香り 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Q-T7qhTGL._SL500_.jpg)
![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 就寝立体タイプ 無香料 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51pV-1+GeGL._SL500_.jpg)







![NHKラジオ ラジオビジネス英語 2024年 9月号 [雑誌] (NHKテキスト)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Ku32P5LhL._SL500_.jpg)
