自社サイト外の料理レシピをAIで取り込み、クックパッド内で閲覧できるようにする同社の新機能が炎上した。炎上はどうすれば防げたのか。
ネットメディア研究家の城戸譲さんは「『借り物ビジネス』からの脱却なくしてクックパッドの再生はないだろう。料理とAIを組み合わせるのであれば、もっと良い方法がある」という――。
■「AIで他サイトのレシピ取り込み」で炎上
料理レシピサイト「クックパッド」の新機能をめぐって、論争が起きている。やり玉に挙げられている「レシピ取り込み(旧名称:レシピスクラップ)」は、クックパッド外の各種SNSやウェブサイトから気になったレシピのURLを取り込むことで、AIが整理し、クックパッドアプリ内で調理の手順を見られるようにするものだ。
一部有料のこの機能が発表されると、ネットユーザーからは「レシピ考案者へのリスペクトが不足している」「料理研究家が本来得るはずだった収益をクックパッドが横取りしようとしている」などの批判が多く寄せられ、最終的にクックパッドは「機能の仕様も含めた見直しを進める」とコメントを発表した。
クックパッドはなぜ炎上を予見できなかったのか、そしてここから「レシピ取り込み」が挽回するためには何が必要なのか。筆者は「個別の機能がどうなのか以前に、サービス全体のブランディングに限界が来ているのではないか」と考える。
■ユーザー投稿系サービスが陥る罠
クックパッドは、この機能を「SNSやウェブで見つけたレシピを『あとで作るための個人の記録』として整理できるようにするもの」だと位置づけ、導入の意図として「レシピを公開・再配布するものではない。元の投稿へのリンクを必ず掲載し、投稿者のページへ直接アクセスできる形にしている」と説明していた。しかし、この意図が伝わらず、むしろ「開き直り」だと感じさせたことが、いまなお炎上が続く原因の一つといえるだろう。
こうしたCGM(コンシューマー・ジェネレイテッド・メディア)と呼ばれる、ユーザー投稿系のサービスは、時としてこのような批判にさらされる。
■「人任せ」「タダ乗り」が炎上を生む
これらはクチコミやレビュー、レシピといった投稿を集める、いわば“集合知”に依拠したビジネスモデルだ。
当然ながら、選ばれるには「使い勝手の良さ」などの要素が必要だ。ただ、肝心なコンテンツそのものは、ユーザー頼みになっていることから、「人任せ」のような印象を与えかねない。
それは、たとえ規約などで利用者の事前許諾を取っていても同様だ。「伝えたい」という一般ユーザーの思いを利用した、ある意味での“やりがい搾取”だと認識されてしまえば、あまり良いイメージは持たれない。今回のレシピスクラップのように、他人のコンテンツを利用するとなれば、なおのことそうした印象が強くなる。
こうした「タダ乗り」批判に加えて、昨今の生成AI普及によって生じつつある「AI嫌悪」も、レシピスクラップ事案では、あまり良くない方向に傾いた。レシピのURLを貼り付けることで、AIが内容を抽出する仕様には、「人の気持ちがこもったレシピを、情報として機械的に処理している」と、感情論からの反発が出やすい。
■「善意のサービス」が裏目に出たシンマママッチングアプリ
そして、とくにスマホアプリなどで批判されがちなのが、「囲い込み」だ。広告収益などを上げるために、なるべくアプリ内で回遊させようとする戦略は、ネットサービスでは珍しくない。例の新機能も、そうした発想から出てきた可能性がある。
これらの要因が重なった結果、新機能へのヘイトは必要以上に燃え上がったと考えられる。“ユーザーファースト”ではなく、どこか顧客を横に置いた“利益ファースト”ではないかと思わせてしまうと、あまりイイ方向には進まない。

一方で、運営側が「善意のサービス設計」を意識していても、裏目に出る事例もある。参考になるのが、2023年1月に起きた「coary(コアリー)」の事案だ。起業家の前澤友作氏による監修のもと、シングルマザーのための恋愛・結婚マッチングアプリとしてリリースされたのだが、利用者を危険な状況に置くのではないかと批判を浴びた。
具体的には、子どもの年齢や性別などを事前入力することから、「虐待目的でこれらの情報を利用する人が出てきかねない」などといった懸念が示され、わずか1日でアプリは配信停止となった。
前澤氏は当時、X(投稿時はツイッター)で、シングルマザーへのヒアリングを通してサービス設計をしていたものの「懸念事項に対する対策や、一部の表現などに問題があった」との反省を示していた。
■クックパッドがすべきは「借り物ビジネス」からの脱却
コアリーのケースから参考になるのは、たとえ“良かれと思って”が動機だとしても、結果的に利用者に不利益を与える可能性があれば、批判は免れないということだ。それだけユーザー主体のサービス展開を行うのは難しい。
さて、こうした背景を説明しつつ、いま苦境に立っているクックパッドは、どのようにブランディングすればいいのかを考えたい。今回の炎上を糧にして、いかに成長していくか。そのカギを握るのは、ユーザー投稿や、他サービスのレシピなどを集約する「借り物ビジネス」のイメージから脱却できるか否かだと思われる。
重要なのは「ここでないといけない唯一無二の存在」と認識されているかどうかだ。言い換えれば「オリジナリティーで勝負できるか」。
具体的には“みずからコンテンツを作り出している感”を醸し出す必要があるだろう。
そこで、ひとつ考えうるのは、「編集」の視点を持ち込む活路の見いだし方だ。たとえ元になる情報が“借り物”だったとしても、そのアレンジでいくらでも差別化は図れる。あえて第三者の力を借りなくても、自社でまかなえる部分はあると感じるのだ。
■大量の投稿レシピを生かさぬ手はない
例えば、蓄積されたレシピのビッグデータから、「多く使われる食材」や「高評価レシピに使われがちな食材」などを分析することは、大量のオリジナルレシピを擁するクックパッドにしかできないだろう。調味料でも「この食材に使われるしょうゆは、どの種類が多いのか。濃口か薄口か、それともたまりか……」といった視点からのコンテンツ化も図れる。
そして、管理栄養士や料理研究家などの知見を借りつつ、投稿レシピの進化系を作る。集合知をフル活用して、定番料理をアップデートしていく。
生活リズムが多様化する現代社会においては、市販の総菜を活用したアレンジグルメを押し出してもいい。「作る人」の余力に合わせて、自炊をチューニングする。それが、クックパッドの持ち味を生かしたリブランディングにつながる。

「生姜焼き」と検索すれば1万7000件、「肉じゃが」は1万4000件のレシピがヒットするなど「レシピの投稿されすぎ」で利用者離れを招き、業績を落としていた同社が向かうべきは、増えすぎたレシピサイトにさらに他媒体からレシピを引っ張ってくることではなく、溜まりに溜まったビッグデータからわかりやすい「最適レシピ」を提供することではないだろうか。
「レシピ投稿サイト」から「家ごはんの総合サイト」への衣替えが実現すれば、世間の見る目も変わってくるはずだ。しかしそれが実現できなければ、なかなかイメージ転換は難しくなる。そう考えると、注目を浴びている今はチャンスである一方、失点につながるリスクも抱えている。いずれにせよ、ここで何も変えられなければ、同様の批判は繰り返されるだろう。

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城戸 譲(きど・ゆずる)

ネットメディア研究家

1988年、東京都杉並区生まれ。日本大学法学部新聞学科を卒業後、ニュース配信会社ジェイ・キャストへ入社。地域情報サイト「Jタウンネット」編集長、総合ニュースサイト「J-CASTニュース」副編集長、収益担当の部長職などを歴任し、2022年秋に独立。現在は「ネットメディア研究家」「炎上ウォッチャー」として、フリーランスでコラムなどを執筆。政治経済からエンタメ、炎上ネタまで、幅広くネットウォッチしている。

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(ネットメディア研究家 城戸 譲)
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