■女性をホストクラブに誘う「客引き」の存在
女性をホストクラブに誘う“客引き”のルーツを調べていると、このキャッチ行為にはさまざまな隠語があるとわかった。
黎明期は「女引(おんなびき)」だが、いまは外部販売の略語である「外販(がいはん)」で統一されている。
直接的な表現を避けるのはなぜか。キャッチ行為が2005年ごろから順次、各都道府県の迷惑防止条例で規制されるようになったからだ。
猛暑の日、東京・新宿区の歌舞伎町を歩いた。2024年7月末のことだ。
一時期は通りをまっすぐ歩けないほどいたキャッチが激減するなか、「案内所(※)どうですか?」と女性に声をかけるひとりの男がいた。男が女性をホストクラブへと誘う外販なら、これまで「ホストどうですか?」と声かけしていたはずだ。
※案内所 客の要望に合ったお風俗店を無料で紹介してくれる施設。主にキャバクラ、ソープランド、デリヘル、ホストクラブなどを扱う。
たまらず呼び止めて話を聞くと、ためらいながらも男は事情を告げた。
「いま取り締まりが厳しくて、僕ら外販が直で店(ホストクラブ)に案内できないんですよ」
■「俺のために『シャンパンおろして』」
潮目が変わったのはホストの売掛金の問題が騒がれた2023年半ばごろからのことだ。
売掛とは、シャンパンなどを注文して高額になった飲食の代金支払いを返済期日を取り決めていったんは猶予してもらい、あとに支払うツケ払いのことだ。
江戸時代から続く商慣習で、銀座の高級クラブなどでも同様の制度が優良客への“サービス”としてあり、それは企業が接待に使った支払いを月末にまとめて後払いするためのものだった。
が、ホストクラブでは個人の女性客に背負わせる形に変化する。
「俺のために『シャンパンおろして』って言われて、『デリヘル(※)の出稼ぎで稼いでからだったらいいよ』って断った。なのに『イベントだから頼む』って、強引にシャンパンを入れさせられた。私が曖昧な返事をしたのもいけなかったけど、ほぼほぼOKしてない状態だったのに」
ホスト「本営」にハマったミカ(仮名/21歳)は言う。
※デリヘル デリバリーヘルスの略。派遣型のファッションヘルスのこと。店舗を持たず、客の自宅やホテルなどに風俗嬢を派遣し、性的サービスを行う業態。かつては違法だったが、1998年の風営法改正(1999年施行)で合法化された。
■恋愛感情があるような態度を取る「本営」
本営とは、ホストが客にしたい女性に対して「本命の彼女」を装う営業方法――恋愛詐欺だ。
表向きは恋愛感情があるような態度を取り女性を手籠(てごめ)にする。
ホストにほだされ、そのとき60万円もする高級シャンパンを売掛で卸し、つくった借金を大久保公園(※)での路上売春で返済することを強いられたミカは、リアルな言葉でホストたちの悪事を訴えた。
「多い日で4人とか5人。(売値は)1(万円)とかイチゴー(1万5000円)とかで。ときにはホテル代込みで1(万円)とかに値下げして、とりあえず漫喫代やメシ代を確保するとかもある。稼いだお金は、毎日“担当”が私が住んでいるネカフェまで回収しに来る感じです」(ミカ)
※大久保公園 東京都新宿区歌舞伎町二丁目43にある新宿区立公園。立ちんぼのメッカになっている。
■結婚詐欺をはたらくホストも
恋愛詐欺の手口はマニュアル化され、そんな悲劇が常態化していることがわかった。どころか、一部のホストは結婚詐欺までするというから見過ごせない。それは、結婚する意思がないのに結婚を前提とした「本営」だという。
売掛金が払えない女性客は、ミカのようにホストやスカウトマンらに売春を強要されたり、はたまた暴力まで振るわれたり――。
2023年4月には、女性に売春の客待ちをさせたとして、ホストの男(25歳)が売春防止法違反(客待ち)の教唆容疑で逮捕されている。
同年9月にも、女性客から売掛金を回収するために顔を殴ってケガをさせた上、「まだカネあるだろ」と迫り、現金10万円を奪い取った疑いでホストの男(35歳)が逮捕されている。
■「私服の女性警官」だった
その煽(あお)りを食ったのが外販だ。同年末には、歌舞伎町の路上で違法に客引きした女性を朝ホスト(※)に入店させたとして、ホストと外販の男性4人が東京都の迷惑防止条例違反の疑いで逮捕されたことを思い出す。
※朝ホスト 朝から昼まで営業するホストクラブ。
そのことを問うと、男は続ける。
「このご時世ですので、前は女性を店まで案内していましたが、いまは店から少し離れた場所で切り離します。ホストも『女の子が勝手に来たと思ったていで受け入れる』などして対処するのがセオリーです。もちろん捕まった外販らもその手口でやっていました。それでもパクられたのは、キャッチした女性が実は私服の女性警官で、声かけから入店までの一部始終を仲間の男性私服警官に見られてしまっていたからです」
■SNSなどを駆使して女性客を釣る
このように警察は、悪質ホストクラブに圧力をかけるため、たびたび私服警官を投入するなどして手はじめに外販の逮捕を強化していた。その対策として外販やホストクラブは、男が冒頭で話した「案内所を経由させる」策を講じたのである。
歌舞伎町における最盛期のホストクラブの数は約320店、実に1万人超のホストが働いていた。それよりやや減るが、いまもこの地には約270店が乱立し、およそ8000人のホストがいる。
キャッチ行為のできないホストに代わり、フリーランスの集合体である外販が日夜、逮捕上等で路上に立つ。
■誘いに乗る女性は絶えない
いうまでもないが、問題はキャッチ行為であり、女性客ではなく店へと誘う外販側にある。それを知っているからなのか、外販の誘いに乗る女性はいまだに絶えない。
「外販を使えば初回料金の半額がキャッシュバックされるの」
ホストにハマり大金を貢いでしまう「ホス狂い」を自称し、「初回荒らし」を終えて店から出てきたばかりの若い女性がうれしそうに言った。そう、ホストクラブ同様に外販は、女性客からしてもありがたい存在なのだ。
ちなみに初回荒らしとは、格安に設定された初回料金(60分3000円前後)を利用して、再来店する意思がないまま複数の店舗を巡る行為を指す。
店からすれば、新規客は獲得できるものの売り上げにはつながらないため、迷惑な行為ではある。
■外販は「犯罪の温床」
2025年6月28日には、悪質なホストクラブ問題などを背景に、ホストクラブやキャバクラなどの接待を伴う飲食店営業における悪質な営業行為を規制することを目的として「改正風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)」が施行された。
恋愛感情を利用して客を困惑させ、飲食をさせる「色恋営業」の禁止、売掛金の回収を口実に客を売春させたり性風俗店で勤務させたりするなどの強要を禁止、女性を性風俗店に紹介する見返りに、ホストやスカウトが報酬を得る「スカウトバック」の禁止――外販はホストやスカウトマンと並び犯罪の温床とされ、いまに至るのだった。
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高木 瑞穂(たかぎ・みずほ)
ノンフィクションライター
1976年生まれ。月刊誌編集長、週刊誌記者などを経てフリーに。主に社会・風俗の犯罪事件を取材・執筆。
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(ノンフィクションライター 高木 瑞穂)

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