還暦からの人間関係を充実させるには何をすればいいか。元外務省主任分析官で作家の佐藤優さんは「50代以降に増えていく同窓会は率先して参加し、学生時代の関係は特に大事にすべきだ。
還暦とは干支が一周して元に戻るという意味だが、まさに人生が一回りして、再び昔の仲間たちとの素朴なつき合いを求めるようになる」という――。
※本稿は、佐藤優『還暦からの人生戦略』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
■一周して学生時代のつき合いに戻る
還暦を迎えると、職場以外の人間関係も変わってきます。
一番は学生時代の仲間たちとの関係です。これは拙書『50代からの人生戦略』でも触れたことですが、50代以降に増えるのが同窓会です。ここから、学生時代の関係は特に大事にすべきです。率先して参加し、旧交を復活させましょう。
これまで疎遠だった場合、最初はおっくうに感じるかもしれませんが、参加してみると意外にすんなり昔に戻り、打ち解けられることが多いようです。
40代くらいまでの同窓会では、結婚して子どもが何人いる、家を買った、大きな会社で活躍している、あるいは経営者になっているなど、話題は「いかに人生が上手くいっているか」という自慢話が中心。そんな状況に辟易した人は、同窓会から自然と足が遠のいていたことでしょう。
ところが50歳も半ばをすぎると、ほとんどの人は自分の先が見えてきています。まして還暦をすぎてしまえば、仕事上でも一線から外れた人がほとんどになります。
すると、昔のように自慢でマウントをとろうとする人は少なくなります。
健康の話にしても、仕事の話にしてもどこか諦観や達観を含んでおり、むしろ自虐的な不健康自慢、不遇自慢になる。そんななかでは、なおもギラギラと自分の成功話ばかりをしようとする人物は浮いてしまいます。
還暦とは干支が一周して元に戻るという意味ですが、まさに人生が一回りして、再び昔の仲間たちとの素朴なつき合いを求めるようになるのです。
■昔の友人が各分野のスペシャリストに
日々の暮らしを安心して送るうえで、「自助」「公助」「共助」の3つが大切になると言われます。特にこれからの老後では、地域や近隣で互いに助け合う「共助」の重要性が大きくなるでしょう。
その意味で、学生時代の仲間の存在は大きい。利害関係のない青春時代に、同じ空間、同じ時代を共有してきた友人は、何十年たっても昔の感覚のままつき合うことができる貴重な存在。まさに気の置けない仲間です。
しかも、社会で長年の経験を積んできていますから、それぞれの業種、職種でスペシャリストになっていることが多い。そういう人たちの助けが、還暦以降の人生では大きな力となるのです。
たとえば保険会社に勤めていた友人であれば、自分の入っている保険が適正かどうか、これから入るとしたらどんな保険が適切か相談できます。

意外にも、自分が加入している保険に関してしっかり把握していない人が多くいます。そんな状況で営業パーソンから保険の見直しなどをすすめられ、かえって損をしてしまうというケースが後を絶ちません。こんなとき、昔の友人に保険業界で働いていた人物などがいれば、こちらの側に立った親身なアドバイスをしてくれます。
あるいは不動産関連の仕事をしていた友人なら、持ち家の購入や売却に関して有利な情報を教えてくれるかもしれません。医者や弁護士がいればそれこそ心強い。いざというとき、同級生のよしみで優先的に相談に乗ってくれる可能性があります。
下手に異業種交流会などで人脈を広げるよりはるかに簡単に、強固なつながりを持つことができるのが昔の仲間、同窓なのです。
昔ながらの関係とはいえ、それぞれが自立した大人として、新しい関係を築く。特に学生のころは少し悪かったりした人物が、意外に社会に出て真面目に働いてひとかどの人物になっていたりする。
数十年を経てお互い成長した形で縁を再び結ぶことができるのは、人生の妙味、醍醐味と言えるのかもしれません。
■「同好の士」は意外なところにいる
還暦後に雇用形態が変わり、週4日、あるいは3日勤務になる人もいます。会社にいなくてもいい時間が増えたら、その時間を使ってリタイア後につながる新たな人間関係を築くのもいいでしょう。

先の同窓会のつながりもそうですが、会社とは別の人間関係をつくる。そうした新しい人間関係をつくるきっかけになるのが趣味です。趣味のサークルなどに参加すれば、そこで新たな仲間をつくることができます。
勉強会のようなものもいいかもしれません。歴史や民俗などに興味があれば地域の歴史をテーマにした講演会や勉強会に参加してみる。そこで同好の人や講師などと知り合いになり、交流を深めることができれば、知識も増え、また仲間も増えるので一石二鳥です。
今、地方の各大学や自治体、図書館などでも市民講座のようなものを開いているところがたくさんあります。地方によっては地元の新聞社が大きな力を持っていて、独自の講座を開いているところもあります。土日を中心にプログラムされているものも多く、勤めている人でも参加しやすい。
地域のことを学ぶという意味では、ユネスコが認定するジオパークも面白い。地形から見たその土地の成り立ちから生活、文化までトータルで学ぶ講習があり、それらを学ぶと地域ガイドなどの資格がもらえるというシステムです。
参加者には引退したシルバー世代の人もいますが、20代、30代といった若い人もたくさんいて、講習会や勉強会に参加するだけでも刺激になります。

■過去の自分の経歴を話すのは逆効果
ビジネス社会にいるうちは、利害を超えた関係をつくるのはなかなか難しい。還暦後は社会の一線を退くからこそ、このような趣味や同好の仲間のような、利害を離れた関係を再び結ぶことができる。
新しい人間関係をつくるうえで注意しなければならないのは、過去の自分の肩書や経歴をひけらかさないこと。
セミナーや勉強会で最初に自己紹介するとき、過去に自分がやってきたことを延々と話し始める人がいます。本人は昔の自分を少しでも知ってほしいのでしょうが、逆効果です。
他人の経歴自慢を面白がって聞いてくれる人はまずいません。逆に、過去の肩書や栄光にとらわれている人物、プライドが高くて面倒な人物として敬遠されるのがオチです。経歴はサラッと話すにとどめましょう。

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佐藤 優(さとう・まさる)

作家・元外務省主任分析官

1960年、東京都生まれ。85年同志社大学大学院神学研究科修了。2005年に発表した『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)で国策捜査の裏側を綴り、第59回毎日出版文化賞特別賞を受賞。『自壊する帝国』(新潮社)で新潮ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション賞受賞。
獄中記』(岩波書店)、『交渉術』(文藝春秋)など著書多数。

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(作家・元外務省主任分析官 佐藤 優)
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