※本稿は、和田秀樹『ストレスの9割は「脳の錯覚」』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
■エビデンスは疑ったほうがいい
「エビデンス」に基づいていれば、なんでも信じるべきなのかというと、これもまた違います。「個体差」の問題があるからです。
たとえば、教育心理学の調査で「褒めて育てると、7割の子どもの成績が上がった」ことがわかったとします。このエビデンスを踏まえれば、「子どもは、叱るより褒めて育てたほうがいい」という調査報告になります。
しかし、そこで「自分の子どもも褒めて育てるのがいい」と決めつけるのは早計です。なぜなら、その自分の子どもの場合は、「叱って成績が上がった3割の子どものタイプ」にあたるかもしれないからです。叱るべきタイプの子どもを褒めて育てたら、増長して、むしろ勉強しなくなるかもしれません。
このようにどんなことも、マジョリティ(大多数)の意見による対応と、個体差による対応とは、分けて考えなければなりません。
「タバコは体に悪い」とするエビデンスは、たくさんあります。でも、タバコによるリラックスタイムのおかげで、ストレスが軽減され、「タバコを吸ってきたから長生きできた」という人だっているはずです。
これからゲノム解析が進めば、「タバコを吸っても肺がんにならない人」や「血圧が高くても大丈夫な人」などが明らかになる可能性だって、ないとは言い切れません。
■自分がストレスを感じない健康法を選ぶ
そうすれば、マジョリティな医療とは異なる、個体差に応じた「テーラーメイド医療」が可能になるでしょう。「これまで自分が食べたいものも我慢してきたのに、これまでの我慢は一体何だったんだ」と怒り出す人も出てくるかもしれません。
医学は常に発展途上であり、現在信じられている学説も、疑いの余地はあるということです。それまでの常識がくつがえることも、よくある話です。
それであれば、エビデンスがどうあろうと、無理に我慢したりしないで、自分がストレスを感じない健康法を選ぶというのも、ひとつの手です。
苦い顔をしながら節制するよりも、笑顔で気楽に過ごしたほうが、免疫機能も上がります。免疫機能が上がれば、がんなどの病気にも強くなります。コロナにしても、免疫機能が高いほど、発症する可能性が低くなります。
今ある常識をいったん疑ってみることで、意外と新しい道が見えてくるものなのです。
■日本の視聴者は、こうして思考停止していく
日本人は、欧米の人に比べて、テレビからの情報をすぐに信じ込んでしまう傾向もあります。
日本の主要テレビ局(キー局)は5局しかありません。
「よその局がこの主張で放送するなら、うちは反対の主張でいこう」といったような、報道姿勢の棲み分けもありません。
これがアメリカでは、保守的なFOXのような放送局もあれば、政権批判が当たり前になっているCNNのような放送局もあります。共産党による1党独裁で「言論の自由がない」と日本人が批判する中国でさえ、30局くらいからチャンネルを選べます。
視聴者は、ニュースに関するいろんな意見を、自分の嗜好(しこう)で選ぶことができ、いくつかの局の言説を比較することもできます。
それに比べると、日本のテレビ局はあきらかに画一的な報道スタンスです。つまり視聴者は、どのチャンネルを回したって、同じようなニュースや論調を「刷り込み」されるわけです。
疑おうにも、対極の主張をするチャンネルがないので、批判もしにくい。こうして、日本の視聴者は、思考停止していきます。
■滅多に起きないことを報道し怖がらせるTV
たとえば、「高齢ドライバーの運転はあぶない」とテレビ局が報じれば、それを鵜呑みにしてしまいます。たしかに、「高齢ドライバーが高速道路を逆走」「エンジンとブレーキを踏み間違えて暴走し、死者○名の事故を起こした」といったニュースが、しばしば世間を騒がせました。
ところがデータを調べてみると、それも単なる「印象」であることがわかるのです。
内閣府による「令和2年交通安全白書」のなかの「運転者が第1当事者となる交通死亡事故発生件数(令和元年)」を年齢層別に見てみると、免許保有者10万人当たりの死亡事故は、20~29歳が3.8件、40~49歳が2.8件に対し、80歳以上は9.8件となっています。
この数字だけを見ると、高齢者の運転は危ないように見えます。
しかし法務省の「令和2年犯罪白書」のなかの「交通事故発生件数(令和元年)」を、第1当事者の年齢層別に見てみると、20~29歳が6万3749件、40 ~49歳が6万5838件に対し、75歳以上は3万459件程度。ほかの世代と比べて決して多くないことがわかります。
また、高齢者が運転者の場合、若い世代に比べて第1当事者自身が事故で亡くなることが多いため、交通安全白書では数字が高くなっているとも考えられます。
■「人間が犬を噛んだ」ときにニュースになる
テレビ報道の「暴走高齢ドライバー」のようなイメージとは違って、私たちが普段、車を運転しているとき、高齢者マークをつけている車を見かけると、スピードの出しすぎどころか、「慎重すぎるほど、ゆっくり安全運転」のドライバーが多いのが実感ではないでしょうか。
つまり暴走高齢ドライバーは「とても珍しい事件」だからこそ、ニュースで報じられるし人々の注目を集めるのです。大切なのは、けっして「高齢ドライバーの事故が多いから」報じられるわけではないこと。
それなのに「高齢ドライバーの運転は危ない」と、国民が簡単に刷り込まれてしまうのが、日本という国なのです。
また日本では、ニュースによって世論が作られ、それによって政策が変わることさえ珍しくありません。
ほかの国なら、政策を変えるのは、客観的な「統計情報」に基づいた議論によってなされます。日本を含めて、ほとんどの先進国で統計調査を行うのはそのためです。
ところが日本では、「確率的にはとても珍しいことが起きた」からニュースになっているのに、なぜか、その確率的に低いことへの「世間の注目度」によって、政策が変わってしまうのです。
テレビを観るときに覚えていてほしいのは、「犬が人間を噛んだ」ではニュースになりませんが、「人間が犬を噛んだ」ときにニュースになるということです。
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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。幸齢党党首。立命館大学生命科学部特任教授、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)、『60歳を過ぎたらやめるが勝ち 年をとるほどに幸せになる「しなくていい」暮らし』(主婦と生活社)など著書多数。
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(精神科医 和田 秀樹)

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