自慢話ばかりしてくる相手にどう対応すればいいか。作家のマティアス・ネルケさんは「自慢話には控え目な質問で返すのがお勧めだ。
具体例を2つ紹介しよう」という――。
※本稿は、マティアス・ネルケ『私を消耗しない賢明な態度』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
■“控え目な表現”が力を発揮する3つの条件
アンダーステイトメントとは何だろう?
英語の辞書でも意味は確認できるが、控えめな振る舞いを表す言葉だ。実際よりも小さく、低く、重要ではないかのように言い表すことを指す。
本当はドラマチックな状況なのに、たいしたことではないかのような言い方をするときがまさにそうだ。
どのような表現がアンダーステイトメントにあたるのか、具体的な例で説明しよう。
例えば、自分の講演に聴衆が大勢集まっているとする。
この状況を「客席がそこそこいい感じに埋まっている」と控えめに表現するようなケースだ。
語り手は、控えめに話すことで相手を惑わしたり、誤った情報を広めたりしようとしているわけでは決してない。
この場合、アンダーステイトメントが成立するには、次の3つの条件を満たす必要がある。
第一に、客席の聴衆の数は「そこそこ」ではなく、大勢であること。理想は満席。
第二に、説明を聞いた人も、客席の埋まり具合は「そこそこ」ではなく、それ以上に埋まっていると知っている、あるいは、盛況だと予想していること。
■幸せも不幸も控えめに表現する
第三に、講演するのは、語り手自身であること。
私たちが、たいしたことではないかのように控えめに表現するのは、ほとんどいつでも自分自身について説明するときだ。
それが喜ばしいことであろうと、それほど喜ばしくないことであろうと。
例えば、不幸なことが起きたり、ついていなかったりするとき。そんなとき、慰めや励ましの言葉をかけてほしいと思うだろう。
そこで不幸な出来事をこと細かに説明して同情を引こうとするのではなく、相手にこんなふうにほのめかす。
「まあ、この程度ですんでよかった。もっとひどい目にあうことも考えられただろうし」と。
このとき、自分の身にふりかかった災難については多くを語らない。よくないことがあったという事実だけで、それ以上は話さないのがポイントだ。
控えめに振る舞う代表的な機会は、何かに大成功したときだ。

私たちが偉業を成し遂げ、世界中が私たちに夢中になっているとき。
そんなことはめったに起こらないだろう。
だが、もしもそんな機会が訪れたら、スマートに控えめに振る舞う絶好のチャンスだ。
■軽んじられることには抵抗を
アンダーステイトメントで重要なのは、あなたが自分を低い位置に置いたとしても、
あなたは自信に満ちている、ということだ。
「外見は低ステータス、中身は高ステータス」と、トム・シュミットとマイケル・エッサーは著書『Status-Spiele(ステータスゲーム)』でそう呼んでいる。
あなたの意思に逆らって起きていることは何もない。
あなたは自信にあふれ、自らの意思で人に従い、決して卑屈にならない。
それはつまり、こういうことでもある。
思いどおりに進まないときには、その人には従わない。
軽んじられたり、だまされたり、尊厳を奪われたりするときにも当てはまる。このようなことに対しては寛大であるべきではない。
あなたは抵抗しなければならないのだ。

■自慢話には遠回しな質問で切り返す
例えば、相手に向かってこんなふうに返事をする。
反対の気持ちを示すときには「そうはいきません」。
相手の指示に従わないときには「いいえ、やりません」。あるいは「何をするかは自分で決めます」。
相手の気に入らない態度を直に指摘するのは、しばしば効き目がある。「その発言は失礼です」あるいは「そういう口のきき方はやめてください」。
そのような注意は、相手の地位があなたの地位よりも高いとき、つまり、あなたの上司に対しても有効だ。
いつも自分を低く見せてばかりいないで、ときには本来の高いポジションに切り替えて、相手をたしなめる必要もある。
例えば、相手の言葉遣いが悪いときや、あなたが上司の立場である場合(上司の場合はへりくだりは一時的なものにしておいたほうがいい)。
そのときには、いくらか声が大きくなってもよいので、はっきりとした言葉を選ぶ必要がある。
それほど深刻ではない場合には、そのまま下手(したて)に出てリラックスしていることもできる。
そのときには、誇らしげにアピールしてくる相手に対して、いくらか遠回しに対応するといい。

「お話は注意深く聞いたつもりですが、私にはおっしゃりたいことがよくわかりませんでした」あるいは「どうして私にそのお話をなさったのですか?」。
■自慢屋に「墓穴」を掘らせる
話し相手にほらを吹く傾向があるなら、スマートな対応の仕方がある。
相手に大言壮語してもらい、正体を暴くのだ。
あなたは相手に言い返さずに、「うわあ、すごいですね。そんなこと、私にはできないな」「そのためにどれくらいトレーニングしたのですか?」「ものすごいお金がかかったんでしょうね」と、感心しているように見せかける。
そう言われると、相手は急におとなしくなるか、ますます調子づくかのどちらかだろう。
前者であれば、そのままふつうの会話が続くが、後者であれば、相手は恥さらし街道を突き進むことになる。
自分が体験した素晴らしい出来事を他人に話したところで、相手がその話題に乗らなければ、話し手は恥ずかしい思いをする。
そして、そのことに本人がまったく気づかず話しつづけているのであれば、そのままにしておけばよい。
■尊厳のためなら「強い言葉」で自己主張
自己主張をすることは、アンダーステイトメントにおいては重要だ。
なぜなら、自己主張が一種のバランスを生みだすからだ。
特に、控えめな振る舞いを好む傾向がある人は、どの場面で、どのような口調で話せばよいか、注意を払ってほしい。

あなたは敬意を示してもらわなければならないし、尊厳を奪われてはならない。そうでなければ、アンダーステイトメントの基盤が失われてしまう。
これは、相手との力の差が大きく、自分を適切に守れない場合にも当てはまる。あなたは相手に依存していて、相手の言うとおりにしなければならないのかもしれない。
そんなときにも、あなたは自分の尊厳を守ることができる。
相手にわからせるのだ。
自主的にやっているのではない、好きでしているのではない、強いられてやっているだけだ、とはっきり伝えるのだ。
それによって、ときには状況を変えることもできる。
相手は自分が望む状態を手に入れるかもしれないが、その代償に、自分が悪人であることを明かすことになる。

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マティアス・ネルケ
講演者・作家

ドイツのマールブルクとミュンヘンにて文学、コミュニケーション学、政治学、音楽を学び、ミュンヘン大学にて博士号を取得。長年にわたり経営とコミュニケーションに関する書籍の執筆活動に勤しむ。主な分野は信頼、ミクロ政治、パワーゲーム、経営者のための心理学や経営バイオニクス(企業と経営者が自然から学べること)。
ドイツ・バイエルン放送にてラジオ番組の制作に携わる。また、大企業において数多くの講演をおこない、基調講演者として人気を博す。講演者向けのコーチングやセミナーを提供。プレゼンテーションや講演、挨拶、モチベーションを高めるためのスピーチの準備や企画の支援など、幅広い分野で活躍。

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(講演者・作家 マティアス・ネルケ)
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