※本稿は、佐藤優『還暦からの人生戦略』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
■平均寿命ではなく「平均余命」が重要
還暦をすぎていよいよ私たちは人生の最終コーナーを回り、ゴールへ向かって最後の直線に入ります。
今はどんなに元気でも、そう遠くない将来、死という人生のゴールはやってきます。どうその準備をするかということは、還暦をすぎてからの大きなテーマでしょう。
今や日本人の平均寿命は女性が87.45歳、男性は81.41歳(2019年、厚生労働省調べ)となっています。これは、今60歳の女性が平均であと27年生きる、男性が21年生きるということではありません。
この場合は平均余命という数字を見る。すると60歳での平均余命は女性が89.17歳、男性が83.97歳となっていて、平均寿命より長生きすることがわかります。これは60歳以前に亡くなった人を除いて計算するので、長くなって当然なのです。
ですから、還暦を迎えてもだいたい30年は生きるということを前提にして考えること。「意外に長い」というのが実感ではないでしょうか。このことを認識してから自分の死までの大まかなイメージを描かないと、思わぬ失敗をすることがあります。
■男性が85歳まで生きたら平均余命は6.46年
たとえば保険でも、毎月かけ捨てで死亡時に一定額の死亡保険金を受け取れるものがあります。この場合、ある一定以上長生きすると、死亡保険金より支払う保険料の総額の方が高くなってしまう。
自分はせいぜい平均寿命くらいまでしか生きないだろうと考えていたら、意外に長生きしてしまった――。このようなケースは実際によくあります。
平均寿命ではなく平均余命で考えると、自らの介護について考えるときも現実的で間違いがありません。
平均余命で面白いのは、仮に男性が平均寿命を超えて85歳まで生きたとすると、その時点での平均余命は6.46年もあって平均で91.46歳まで生きるのです。90歳の平均余命は4.41年で、平均で94.41歳まで生きる。
もちろん、どんどん該当者は少なくなりますが、長生き家系の人は100歳近くまで生きるという心づもりでいた方がいい。「自分はせいぜい80歳まで」なんて考えていても、そのときになってみなければ寿命など誰にもわからないのです。
■「あと何年生きるか」を明確に想定する
還暦を迎えると、誰もが潜在的に死というものを意識し始めます。50歳をすぎたあたりから、同級生や同僚に病気などで倒れたり、亡くなったりする人が出始めます。
自分自身も体力が落ちたり、血圧、肝臓、腎臓の数値が悪化して、糖尿病などの危険信号が点灯したりする。
少しずつ老化が身に染みるようになり、死が間近に感じられるようになる。そして親の死を体験することで、自分の20年後、30年後のリアルな姿として迫るようになります。
人間は死を避けられないのだという現実、割り切らなければならない最大のものが死であるということに、否応なく気づかされるのです。
そこで、きちんと準備をしなければならないことがあります。
まず自分の健康状態をしっかりと把握すること。そのうえで、どれくらいまで生きられるか、あるいは生きるのかをざっくりでいいので自分のなかでイメージする。
健康診断や人間ドックなどで、自分の体をしっかりチェックすることは、年齢を問わず大切です。血圧、コレステロール値や血糖値、肝臓や腎臓、心臓の状態を把握して、どこがどの程度悪いのか、今後悪化していった場合、どれくらいでどんな状況になるかをあらかじめ想定しておきます。
■余命を少しでも長くして活動時間を確保
たとえば血糖値が高く、糖尿病予備軍の人であれば、食習慣を中心に生活全般を改善していかなければなりません。主治医としっかり話をして、今の状況と今後の状態の予測を確認する。
それをふまえて、自分があと15年元気で生きていくとしたら、どのようなことに注意しなければならないのかを明確にしておきましょう。
健康については、データに基づいたさまざまなエビデンスが蓄積されているので、食生活をはじめとした日常生活の何を、どのように改善すればいいか、やるべきことは自ずと導かれてくるはずです。
私の場合、腎臓の数値がかなり悪化していることはすでにお話ししました。人工透析は時間の問題ですが、少しでも透析を先延ばしにして、自由に動ける人生の残り時間を増やしたい。
そこで医師とじっくりと話をして出た結論が、体重を落とすということ。余命を伸ばすなら、まず体重をまっさきに落とさなければならない。私の場合は特に悠長にやっている時間がないということで、カロリーをかなり制限しています。
どこかで透析を受けなければならないことはたしかですが、それを少しでも先に延ばし、余命を少しでも長くして、活動できる時間をもう少し確保したいというのが今の私の率直な気持ちであり、目標なのです。
落ち込んだり悲観したりして、感情的に反応してもいいことはひとつもありません。現実と向き合って、やるべきことを淡々とやる。健康管理に関しては、主治医と二人三脚で目標に向かってできる限り科学的、合理的に行うだけです。
■健康と介護にどれだけお金をかけられるか
平均余命と同じくらい重要なのが健康寿命です。
厚生労働省が発表している健康寿命は、女性が74.79歳、男性が72.14歳(いずれも2016年)です。これを平均寿命と比較すると、女性はその差が12.35年、男性は8.84年もあるので、健康寿命をすぎてからのほぼ10年間、何かしらの支援や介護が必要になるということになります。
自分の健康状態を勘案して、自分がいつまで働けるか、いつくらいから介護が必要になり、どんなサービスを受けることになりそうかを自分なりに想定しておくべきでしょう。
それに合わせて、まずしっかり考えなければならないのがお金の使い方、割り振り方です。
自分の死から逆算して、お金をどうやりくりするかを考えることが重要です。終活を見すえたマネープランを立てる。健康の問題と同じく、お金の問題でも余計な感情を挟まず、淡々とやるだけです。
まずはあなたの持っている資産がどこにどれだけあるのか? 預貯金や株式、投資信託、金などの金融資産と、不動産などを含めた総資産のリストをつくりましょう。
同時にどのような保険に入っているか、生命保険、火災保険など保険の種別、保険金の額などがわかるようにリスト化しておきます。こうして資産の棚卸し、見える化をしておくと、自分の資産状況について意外に把握できていなかったと気づくことがあります。
資産をリスト化すると同時に、仕事や年金による収入の額をしっかり把握しておきましょう。自分の資産、お金がどれくらいあって、どれくらい使えるのかは、1年に1回確認するくらいで十分です。毎年の確定申告の際にするのが一番いいと思います。
エクセルが使えるなら、項目を書き出して毎年の数字を書き込んでいく。一度つくれば、あとは毎年入れていくだけで立派な資産表になります。
■介護施設のメリット・デメリット
しかし、介護に際して具体的にどんなサービスが受けられるか、想像できないという人が多いかもしれません。大きく分けると、体が動く自立したシニア向けの施設には、公的施設としてケアハウス(軽費老人ホーム)があり、民間施設としてはサービス付き高齢者向け住宅、シニア向け分譲マンション、健康型有料老人ホームがあります。
一方、要介護者向けの施設としては、公的施設として特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)、介護医療院などがあり、民間施設として介護付き有料老人ホーム、住宅型有料老人ホームなどがあります。
これらの施設をだいたいどの段階で、どの年齢から利用するか。それによって、どのくらいお金が必要なのかを想定できます。ネットで調べれば、これらの施設の詳細やメリット・デメリットなどについて知ることができるでしょう。
そのうえで、自分の地域にある施設の入居条件、サービス内容、利用料金などを調べておきます。
かかるお金は施設の種類によって大きく変わってきます。公的なものは当然安く、年金の範囲内で入居が可能なものもあれば、シニア向け分譲マンションなどの高額な民間施設もあります。
こちらは入居費だけで数千万円から数億円、毎月数十万円と、ごく一部の富裕層でなければとうてい利用できないものまであります。
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佐藤 優(さとう・まさる)
作家・元外務省主任分析官
1960年、東京都生まれ。85年同志社大学大学院神学研究科修了。2005年に発表した『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)で国策捜査の裏側を綴り、第59回毎日出版文化賞特別賞を受賞。『自壊する帝国』(新潮社)で新潮ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション賞受賞。『獄中記』(岩波書店)、『交渉術』(文藝春秋)など著書多数。
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(作家・元外務省主任分析官 佐藤 優)

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