血液型はどうやって決まるか。大阪大学名誉教授の深瀬浩一さんは「血液型には、A遺伝子・B遺伝子・O遺伝子という3種類の対立遺伝子が存在する。
※本稿は、深瀬浩一『血液型でわかる 病気とケガのリスク』(宝島社)の一部を再編集したものです。
■「AA」「AB」「AO」という3つの遺伝子構成
血液型の場合、A遺伝子・B遺伝子・O遺伝子という3種類の対立遺伝子が存在します。これらは単独で組み合わせをつくるのではなく、3つのなかから2つを選ぶという組み合わせパターンが生じます。両親ともにA型であった場合、父親からA遺伝子を受け継いだからといって、母親からも必ずA遺伝子を受け継ぐとは限らないのです。
たとえば、A遺伝子を含む「2つで1組」の対立遺伝子の組み合わせには、「AA」「AB」「AO」という3つのパターンが存在します。
ここで、みなさんに質問です。この3つの遺伝子構成では、それぞれどのような血液型になると思いますか?
最初の「AA」は両方ともA遺伝子ですから、当然A型になると予想できますね。次の「AB」は、そのままAB型になるでしょう。では、最後の「AO」はどうでしょうか。A型になると思いますか?それともO型になるのでしょうか?
■同じA型やB型でも、遺伝子構成が異なる
この疑問を解く鍵は、「A遺伝子とB遺伝子は、O遺伝子に対して顕性(優性)である」という遺伝的関係にあります。メンデルのエンドウ豆実験におけるRとrの関係と同様に、「AO」や「BO」という組み合わせでは、O遺伝子の形質は表面に現れず(つまり、O型にはならず)、A型またはB型として表現されるのです。
O型になるためには、両方の対立遺伝子がOでなければなりません。つまり、「OO」という遺伝子構成が必要なのです。
これらの原理を整理すると、血液型を決定する対立遺伝子の組み合わせは次のようになります。
・A型になる組み合わせ…AA、またはAO
・B型になる組み合わせ…BB、またはBO
・AB型になる組み合わせ…AB
・O型になる組み合わせ…OO
この分類を見ると、同じA型やB型でも、遺伝子構成が異なる場合があることがわかりますね。
■血液型の遺伝パターン
続いて、より具体的な例を通じ、血液型の遺伝パターンをくわしく見ていきましょう。
①両親がともにA型の場合
まず、両親の遺伝子構成がどちらも「AA」である場合を考えてみましょう。このケースでは、父親からも母親からもA遺伝子のみが子どもに伝わるため、すべての子どもの遺伝子構成は「AA」になります。結果として、どの子もA型になることは確実です。
次に、両親の一方が「AA」、もう一方が「AO」であったらどうでしょうか。この場合、子どもが受け継ぐ遺伝子構成は、「AA」または「AO」のいずれかになります。遺伝子構成には違いがあるものの、この両親から生まれる子は全員A型になります。
しかし、両親ともに遺伝子構成が「AO」であった場合、子どもの遺伝子構成は「AA」「AO」だけでなく、両親のO遺伝子が組み合わさった「OO」となる可能性もあります。
②父親がA型、母親がB型の場合
次に、父親がA型(AO)、母親がB型(BO)である場合です。この組み合わせでは、子どもが受け継ぐ遺伝子構成として「AB」「AO」「BO」「OO」の4通りが考えられます。
つまりこの両親からは、理論的にすべての血液型(A型・B型・AB型・O型)の子どもが生まれる可能性があるのです。
このように、血液型の遺伝は「両親の表現型(実際に現れている血液型)」だけでは予測できず、「両親がもっている対立遺伝子の具体的な組み合わせ」によって決まることがおわかりいただけたでしょうか。
■血液型が変わる唯一の例外
血液型は遺伝によって決まる「生まれつきの特徴」であり、通常は生涯にわたって変わることはありません。しかし、現代医学により、この原則に対するただ1つの例外が存在するようになりました。
白血病や再生不良性貧血など、血液をつくる機能(造血機能)に深刻な異常をきたす病気があります。これらの疾患では、正常な血液細胞を産生することができなくなり、患者さんの生命に重大な危険が及びます。
このような病状に対する治療法が、「造血幹細胞移植」です。造血幹細胞とは、赤血球・白血球・血小板といった血液成分の「親細胞」ともいうべき細胞で、骨髄の中に存在しています。この細胞を健康な提供者(ドナー)から提供してもらい、患者さんの体内に移植することで、再び正常な血液産生能力を回復させることが治療の目的です。
移植が成功すると、患者さんの体内では、ドナー由来の造血幹細胞から新しい血液細胞が次々とつくられるようになります。つまり、患者さんの血液が、「ドナーの血液」に置き換わるのです。
移植後に体内を循環する患者さんの血液型は、患者さんのもともとのものから、ドナーの血液型へと変化します。これは、血液型が変わる唯一のケースといえるでしょう。
たとえば、もともとA型だった患者さんにO型のドナーから造血幹細胞移植が行われた場合、移植後の血液型はO型になります。そのため、移植後に輸血などの医療処置を行う場合は、患者さんの生まれつきの血液型ではなく、移植後の新しい血液型に合わせた対応が必要になります。
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深瀬 浩一(ふかせ・こういち)
大阪大学名誉教授
1960年、岡山県生まれ。大阪大学大学院博士後期課程修了・理学博士。大阪大学大学院理学研究科教授、理学研究科長、大阪大学理事・副学長、大阪大学総長参与を歴任。2025年、大阪大学名誉教授。専門は糖質化学、有機合成化学、生体分子化学。2025年4月より、大阪大学放射線科学基盤機構特任教授として、自然免疫活性化分子・ワクチン・新規免疫療法の開発ならびにがんの核医学治療研究を進める。
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(大阪大学名誉教授 深瀬 浩一)
対立遺伝子の組み合わせにより、同じA型やB型でも、遺伝子構成が異なる場合がある」という――。
※本稿は、深瀬浩一『血液型でわかる 病気とケガのリスク』(宝島社)の一部を再編集したものです。
■「AA」「AB」「AO」という3つの遺伝子構成
血液型の場合、A遺伝子・B遺伝子・O遺伝子という3種類の対立遺伝子が存在します。これらは単独で組み合わせをつくるのではなく、3つのなかから2つを選ぶという組み合わせパターンが生じます。両親ともにA型であった場合、父親からA遺伝子を受け継いだからといって、母親からも必ずA遺伝子を受け継ぐとは限らないのです。
たとえば、A遺伝子を含む「2つで1組」の対立遺伝子の組み合わせには、「AA」「AB」「AO」という3つのパターンが存在します。
ここで、みなさんに質問です。この3つの遺伝子構成では、それぞれどのような血液型になると思いますか?
最初の「AA」は両方ともA遺伝子ですから、当然A型になると予想できますね。次の「AB」は、そのままAB型になるでしょう。では、最後の「AO」はどうでしょうか。A型になると思いますか?それともO型になるのでしょうか?
■同じA型やB型でも、遺伝子構成が異なる
この疑問を解く鍵は、「A遺伝子とB遺伝子は、O遺伝子に対して顕性(優性)である」という遺伝的関係にあります。メンデルのエンドウ豆実験におけるRとrの関係と同様に、「AO」や「BO」という組み合わせでは、O遺伝子の形質は表面に現れず(つまり、O型にはならず)、A型またはB型として表現されるのです。
O型になるためには、両方の対立遺伝子がOでなければなりません。つまり、「OO」という遺伝子構成が必要なのです。
これらの原理を整理すると、血液型を決定する対立遺伝子の組み合わせは次のようになります。
・A型になる組み合わせ…AA、またはAO
・B型になる組み合わせ…BB、またはBO
・AB型になる組み合わせ…AB
・O型になる組み合わせ…OO
この分類を見ると、同じA型やB型でも、遺伝子構成が異なる場合があることがわかりますね。
■血液型の遺伝パターン
続いて、より具体的な例を通じ、血液型の遺伝パターンをくわしく見ていきましょう。
①両親がともにA型の場合
まず、両親の遺伝子構成がどちらも「AA」である場合を考えてみましょう。このケースでは、父親からも母親からもA遺伝子のみが子どもに伝わるため、すべての子どもの遺伝子構成は「AA」になります。結果として、どの子もA型になることは確実です。
次に、両親の一方が「AA」、もう一方が「AO」であったらどうでしょうか。この場合、子どもが受け継ぐ遺伝子構成は、「AA」または「AO」のいずれかになります。遺伝子構成には違いがあるものの、この両親から生まれる子は全員A型になります。
しかし、両親ともに遺伝子構成が「AO」であった場合、子どもの遺伝子構成は「AA」「AO」だけでなく、両親のO遺伝子が組み合わさった「OO」となる可能性もあります。
つまり、A型の両親からO型の子どもが生まれる可能性があるのです。
②父親がA型、母親がB型の場合
次に、父親がA型(AO)、母親がB型(BO)である場合です。この組み合わせでは、子どもが受け継ぐ遺伝子構成として「AB」「AO」「BO」「OO」の4通りが考えられます。
つまりこの両親からは、理論的にすべての血液型(A型・B型・AB型・O型)の子どもが生まれる可能性があるのです。
このように、血液型の遺伝は「両親の表現型(実際に現れている血液型)」だけでは予測できず、「両親がもっている対立遺伝子の具体的な組み合わせ」によって決まることがおわかりいただけたでしょうか。
■血液型が変わる唯一の例外
血液型は遺伝によって決まる「生まれつきの特徴」であり、通常は生涯にわたって変わることはありません。しかし、現代医学により、この原則に対するただ1つの例外が存在するようになりました。
白血病や再生不良性貧血など、血液をつくる機能(造血機能)に深刻な異常をきたす病気があります。これらの疾患では、正常な血液細胞を産生することができなくなり、患者さんの生命に重大な危険が及びます。
このような病状に対する治療法が、「造血幹細胞移植」です。造血幹細胞とは、赤血球・白血球・血小板といった血液成分の「親細胞」ともいうべき細胞で、骨髄の中に存在しています。この細胞を健康な提供者(ドナー)から提供してもらい、患者さんの体内に移植することで、再び正常な血液産生能力を回復させることが治療の目的です。
移植が成功すると、患者さんの体内では、ドナー由来の造血幹細胞から新しい血液細胞が次々とつくられるようになります。つまり、患者さんの血液が、「ドナーの血液」に置き換わるのです。
移植後に体内を循環する患者さんの血液型は、患者さんのもともとのものから、ドナーの血液型へと変化します。これは、血液型が変わる唯一のケースといえるでしょう。
たとえば、もともとA型だった患者さんにO型のドナーから造血幹細胞移植が行われた場合、移植後の血液型はO型になります。そのため、移植後に輸血などの医療処置を行う場合は、患者さんの生まれつきの血液型ではなく、移植後の新しい血液型に合わせた対応が必要になります。
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深瀬 浩一(ふかせ・こういち)
大阪大学名誉教授
1960年、岡山県生まれ。大阪大学大学院博士後期課程修了・理学博士。大阪大学大学院理学研究科教授、理学研究科長、大阪大学理事・副学長、大阪大学総長参与を歴任。2025年、大阪大学名誉教授。専門は糖質化学、有機合成化学、生体分子化学。2025年4月より、大阪大学放射線科学基盤機構特任教授として、自然免疫活性化分子・ワクチン・新規免疫療法の開発ならびにがんの核医学治療研究を進める。
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(大阪大学名誉教授 深瀬 浩一)
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