■こんな着こなしは「サイレント減点」
夏季のみならず通年でノーネクタイやオフィスカジュアルが定着し、日本のビジネスウェアはかつてないほど自由になりました。選択肢に幅が生まれ、その人の「ビジネスパーソンとしての知性」や「メタ認知(客観視する力)」が、身だしなみを通じて、相手に伝わってしまう時代です。
筆者は、企業の印象管理研修を請け負うスタイリストとして、ビジネスリーダーの「見られ方の相談」に乗ってきた経験があります。そこで今回は、取引先に「この人に重要な仕事は任せられない」とサイレントに減点されている、一発アウトな着こなしの3つの特徴とその本質を解説します。
■NG①:全体最適のない「ノーネクタイ」姿
ノーネクタイが許容された職場で、最も多く見かける姿といえば「いつものジャケットから、ただネクタイを外しただけ」の状態です。この問題はスーツのみならず、ジャケット&パンツ(通称:ジャケパン)と呼ばれる着こなし、どちらにも共通します。
もちろんクールビズが浸透したおかげで、「ネクタイを外しても襟の形が崩れないよう、襟先を留めるボタンダウンシャツを選ぶ」といった工夫は定着しつつあります。そのため、襟先が不自然に浮いてしまうような失敗は、以前ほど見かけなくなりました。また「第一ボタンを開けた首元から、丸首の肌着がだらしなく覗いてしまう」というNGも、Vネック肌着の普及などにより、この10年でだいぶ減っているのではないでしょうか。
■「見えない部分への配慮」が伝えること
ただ、こうした対策は、あなたのビジネス能力を可視化するという意味では、十分とは言えません。ルールの本質を理解していない「表面的な言語化」に他ならないからです。
ノーネクタイを前提とするワイシャツならば、第一ボタンを開けたとき、襟が美しくロールする「ワンピースカラー(イタリアンカラー)」を選ぶことで、同じようなノーネクタイ姿のなか、明らかな違いが生まれます。というのもネクタイという支えを失ったシャツ襟は、自重でペチャっと潰れ「襟元がだらしない」状態に陥りやすく、実はこれはボタンダウンであっても同様です。一方のワンピースカラーは、前立てと呼ばれるパーツが「襟からひとつながりで2重につながっている」ため、襟の重みに負けづらいのです。
また肌着についても同様です。「第1ボタンから見えなければVネックでOK」という表面的なルールに満足し、白シャツから、白や黒の肌着の輪郭がクッキリと透けている事実に気づいていない男性が後を絶ちません。これは、「自分がルールを守ったか」に終始し、「相手の目にどう映っているか」を想像するメタ認知の欠如している状態です。
このとき、スキンカラーと呼ばれるベージュ系の肌着を選べば、皮膚に同化し、白シャツでも透ける心配がありません。こうした「見えない部分への配慮(全体最適)」こそが、初対面の相手にあなたの仕事の緻密さを伝えるのです。
■NG②:TPOを無視した「商談にビジネスリュック」
両手が空く「ビジネスリュック」も、この10年で定着しました。機能的ですばらしいツールですが、問題は「使用場面」にあります。
カッチリとした仕立てのウールスーツに、パンパンに膨らんだナイロン製のビジネスリュックを背負ったまま、初対面の商談や重要な会議に現れる。
1つ目は、「スーツという構造物への想像力」です。ジャケットと重いリュックの摩擦によって、スーツの命である肩パッドが潰れ、背中の生地がテカテカに摩耗していくことに無頓着です。
2つ目は、「TPOと相手への想像力」です。たとえば3WAY仕様のビジネスリュックならば、リュック・肩掛け・手持ちと使い分けられます。道中は背負っていても、取引先のビルに入る前や、初対面の挨拶の直前に「手持ち(ブリーフケース型)」に切り替える。そのほんの少しの気遣い(切り替え)が欲しいところです。
初対面のカッチリとした場に、リュックを背負ったまま現れる。この無自覚な行動は、相手の脳内に「その場の空気を読もうとしない人だ」という静かなノイズを生み出します。特に決裁権を持つ相手が世代の離れた年長者だとしたら、「相手への敬意より、自分のラクさを優先する人間だ」という疑念を抱かせるリスクも拭えません。
ビジネスリュックが絶対にNGという訳ではありません。
■NG③:変化を見逃す「くたびれたTシャツ合わせ」
オフィスカジュアルの浸透により、ジャケットのインナーにTシャツ(カットソー)を合わせるスタイルも定番化しました。しかし、ここで「Tシャツの肌着見え」という盲点を見逃せません。
SNSなどで散見される「ジャケットに白Tシャツを合わせればこなれて見える」という情報を鵜呑みにして、本来はインナー用やカジュアル用にすべき安価なTシャツを、ドレス感のあるウールジャケットに合わせてしまうケースです。ジャケットの重厚な質感に対して、Tシャツの素材がチープすぎるため、安っぽくチグハグな印象になります。
ワイシャツの代わりに襟がないTシャツをジャケットに合わせる着こなしが、オフィスカジュアルの主流であることは間違いありません。ところが問題は、SNSや雑誌の写真を参考にインナーの「色合い」だけを真似してしまい、最も重要な「質感のバランス」を見落としている点にあります。
そのチグハグな質感を自分の目で測ることを放棄し、「白TならばOK」というおすすめ情報で思考停止するのは、極めて危険です。さらに深刻なのが、そのTシャツの「劣化」に気づいていないことです。
■ジャケットに負けない「ビジネスT」が買える場所
「洗ってもシワになりにくい」という機能性に安堵してヘビロテした結果、首元はヨレヨレになり、生地は黄ばんだり毛羽立ったりしています。
毎日見ているからこそ、「消耗品の劣化」という微細な変化を見逃してしまう。これは、ビジネスにおいて「市場の微細な変化」や「自社サービスの陳腐化」を見逃すこと(メタ認知の欠如)にも共通しています。
だからこそジャケットに合わせるTシャツは、紳士服量販店で「ビジネスTシャツ」として売られているような、肉厚でストレッチが利いたリッチな質感のものを選んでください。その質感の場合のみ、ジャケットのドレス感に負けないからです。消耗品のライフサイクルを冷静に見極め、ヨレる前に新品に更新する。その微細な変化に気づく力こそが、自身のビジネス感覚を保つ能力と直結しているのです。
■服装は「相手を想像する力」のトレーニング
ここまで挙げてきた3つの「一発アウトな着こなし」に共通する根本的な原因は何でしょうか。
それは、「自分がラクかどうか」「ネットで正解と言われていたから」という、思考停止で完結しているという点です。ビジネスファッションの本質は、「相手から自分がどう見えているか」や、「この場において、相手に安心感を与える振る舞い(装い)とは何か」という想像力を働かせることです。
身だしなみの乱れやチグハグさは、単なる「ファッションセンスの欠如」や「心の乱れ」として片付けられる問題ではなく、あなたの「思考の解像度」や「相手への配慮」がそのまま表出するビジネススキルと言えます。
着こなしの選択肢に幅がある時代であり、さらに春に向かって装いが軽くなるこれからの季節。
その「客観視するプロセス」こそが、自身のビジネススタンスを研ぎ澄まし、取引先からの強固な信頼を勝ち取るための、最も投資対効果の高いトレーニングになるはずです。
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森井 良行(もりい・よしゆき)
スタイリスト、服のコンサルタント協会代表理事
1979年千葉県生まれ。日本大学卒業後、一般企業を経て2007年に独立。これまでのべ5500人を超えるビジネスパーソンの買い物に同行し、スタイリングを手がける。感性で語られがちなファッションを独自のロジックで言語化し、戦略的にビジネスパーソンの魅力を引き出す着こなしのメソッドに定評がある。MENSA会員。著書に『38歳からのビジネスコーデ図鑑』(日本実業出版社)、『男の服選びがわかる本』(池田書店)などがある。
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(スタイリスト、服のコンサルタント協会代表理事 森井 良行)

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