すかいらーくが買収した北九州発のうどんチェーン「資さんうどん」が好調だ。流通アナリストの中井彰人さんは「実質賃金マイナスが続く国内での低価格ニーズに、ローカルチェーンとして鍛え抜かれた資さんがぴったりだった。
加えて、単なるうどん店にはとどまらない役割を果たすことで売上を増やしている」という――。
■地味なローカルうどんチェーンが全国銘柄に
最近、話題の外食チェーンといえば、北九州市発祥のうどんチェーン、資さんうどんは外せない銘柄のひとつだろう。北九州では昔からファンが多かったが、最近では大手外食チェーンすかいらーくのグループ入りをして、関東でも店舗を増やしており、その知名度は全国レベルになってきた。
SNSやメディアで話題になることも増え、出店すれば行列ができることでも有名だ。自分の生活圏にも少し前にオープンしたが、平日の昼時を過ぎても入店待ちで驚いた。2024年度売上は160億円であったが、2025年度は227億円(+42%増)と順調に成長基調に乗り、その勢いはまだまだ続きそうなのである。ちょっと前までは、地味なローカルうどんチェーンだったこの会社、なぜ全国区の成長銘柄に変身したのか。そのあたりを、ちょこっと深堀りしてみることにした。
■トップシェア丸亀製麺との「違い」
うどんと言えば、さぬき風のこしのある麺と出汁のうまさで、丸亀製麺(トリドール)が全国を席巻して急成長し、うどん、そば業界では圧倒的なトップシェアを確立している。丸亀製麺はその味やメニューが評価されたことに加えて、郊外ロードサイドの広めの店舗にオープンキッチンタイプの調理場をつくり、その周囲に並び列を一周させて、店内で製麺しているところ、その場で揚げている天ぷらなど、すべて店内調理で提供するところを見せることによって、できたて感をアピールするモデルで成功した。
回転すしに共通するエンタメ性のアピールを集客エンジンとした丸亀は、人流の薄いロードサイド(その分店舗コストが安い)に人気店を作り出すことで、出店を加速し、861店、売上1281億円(2024年度)の一大チェーンを実現した。
それまでも、はなまるうどん、サガミチェーン、グルメ杵屋などが大手チェーンとして存在していたが、繁華街や商業施設内といった人流の濃い場所に出店することが前提となっていたため、店舗数にも店の大きさにも限界があり、売上も数百億円で頭打ちとなっていた。

丸亀は、ロードサイドという巨大な出店余地を開拓したことにより、圧倒的なトップシェアを実現することができたのである。その観点で言うと、資さんもクルマ社会の九州で多店舗展開し、ロードサイドに数多く店舗展開してきたチェーンであり、潜在的成長力は丸亀と同様といえる。
そうなると、丸亀とモロにバッティングしそうにも思えるのだが、そこはキッチリとした差別化ポイントを確立している。それは麺の違い、メニュー構成、営業時間であるようだ。
■丸亀派と資さん派は共存可能
うどんといえば、コシの強い麺と柔い麺とで好みが分かれるようで、九州方面の人たちはコシの強い麺を好まない。自分の場合、家人も九州人で、知人も九州出身者が多くいるのだが、口を揃えて「丸亀はおいしいとは思うが麺がいかん」と言っている。これは九州に限った話ではなく、全国的にも好みが分かれるようで、柔い麺のほうが好きな人は意外と多いようなのだ。その点で、丸亀派と資さん派は共存可能なのであろう。
メニューに関しても丸亀は、基本はうどん×アレンジ+トッピングのイメージであるが、資さんは、うどん、そば、丼もの、おにぎり、甘味、おでん、つまみとアルコール類、と幅広く、リーズナブルな和風ファミレス&チョイ飲み屋といったニーズを取り込む。飲みもあるため、多くの店が深夜まで営業しており、既存店では24時間営業も多い。
考えてみれば、昔の個人店のそば、うどん屋は資さんのような品揃えで夜は飲み屋的な存在だったのだが、時代を経てどんどん少なくなり、特に地方、郊外では繁華街の衰退とともになくなってしまった。でも、国民食でもある、そば・うどん店の需要は決して廃れたわけではなく、大都市で残ったそば・うどん店は結構流行っているという実感もあるだろう。

■今「すかいらーく」という店名はない
図表1は、そば・うどん店の事業所数と一人あたりのそば・うどん支出の統計だが、店は減っても需要が減ったわけではないことを示している。九州のロードサイドで生き残りモデルを生み出した資さんにとって、全国に新たなスペースが生まれていた、ということになる。
ただし、そば・うどん店の減少が生み出した成長余地に気付いたのは、資さんの経営をオーナーから事業承継で引き継いだファンド(ユニゾン・キャピタルなど)や、グループに迎え入れた外食大手すかいらーく、だっただろう。ファンドがこのローカルうどんチェーンに投資したのはこうした構図が見えていたからだ。
取得後、九州の外へと店舗網を拡大し、当該マーケットが全国に存在していることを検証した上で、最も相性のいい、すかいらーくに持ち込んだといえる。なぜ、すかいらーくが最適なのかといえば、すかいらーくという会社に「すかいらーく」という店がないことを思い出してもらえば、わかるかもしれない。
国内外食産業の最老舗として知られる、すかいらーくは、日本にクルマが普及し始めていた1970年に日本初の郊外型ファミリーレストラン「すかいらーく(国立店)」を東京都府中市に出したことから始まっている。その後はすかいらーくを全国展開しつつ、別業態であるジョナサンやバーミヤンなども開発しつつ、外食大手チェーンとしての地位を確立した。
■既存店を新業態に転換して生き残る
そして、バブル崩壊後には消費の低迷などに対応して、1992年に低価格業態のガストを出店、93年には720店のうち420店をガストに転換するという大規模な業態転換を実施した。その後、2009年にはすべてのすかいらーくを業態転換、この店名は消滅している。時代に合わせて既存店を新業態に転換して生き残るというのが、すかいらーくのDNAであり、コロナ後の転換の選択肢として選ばれたのが資さんであった、ということなのである。
すかいらーくのHPには、「特集『株式会社 資さん』の買収その狙いは?」というページがあり、ここをみてみると、すかいらーくの狙いが詳細かつ、わかりやすく書いてある(参考:図表2、図表3)。

■低価格ニーズにぴったりだった
ざっくり言えば、数多くの店舗を運営するすかいらーくにおいては、時間の経過とともに陳腐化による不採算店が一定割合発生する。収益の悪化と減損損失の拡大を低減するためには、必ず業態転換を実施していかねばならない。成長余地がある資さんをグループに加えることで、資さんにとっての大きな出店余地=すかいらーくの業態転換が実現され、グループにとって大きなシナジーを生み出す、ということである。
ポジショニング図を見ればわかるが、ファミレス各業態が徐々に高価格帯へとシフトしつつあることに加え、実質賃金マイナスが続く国内での低価格ニーズに、ローカルチェーンとして鍛え抜かれた資さんがぴったりであったのである。
加えて、近年の建設価格の高騰も、資さんのグループにおける価値を大きくした。業態転換して成長できる資さんは、新店投資がかなり安く済むようなのだ。厨房施設をそのまま生かし、内装リニューアル中心で転換できる資さんはこのご時世、とても貴重な業態となった。その上、安く出せるのに店舗あたりの売上を稼ぐ力は既存店を上回っているという優れものなのである。
■勝てるのは「スシロー」だけ
図表4は、主なそば、うどんチェーンの事業規模、店舗数、店舗あたり売上、そして外食の主要企業のそれを併記したものである。規模感もさることながら、見てほしいのは、資さんの店舗あたり売上がそば・うどん業態トップであること、さらに言えば、ファミレス各社を上回り、あの人気回転すしチェーン・スシローしか勝てない、というところであろう。
単なるうどん店ではなく、コスパ和風ファミレスでもあり、深夜営業に適しており、アルコール需要も取り込める郊外業態、資さんは最優良モデルだった、ということが一目瞭然である。すかいらーくの平均が1.4億円だとして、転換する際はかなり減っているとすれば、資さんに転換すると売上が倍くらいになるのである。
なんとありがたい助っ人であろう。
■すかいらーくの目利きや恐るべし
流行り廃りの激しい外食業界において、店舗、業態の陳腐化による急速な減益や減損の発生は死活問題になることは業界の常識である。そのため、この陳腐化リスクに備えるため、外食では業態を多様化することでリスク分散することが求められてきた。
コロナにより、アルコール比率の高い業態が危機的状況に陥ったこと、そして、今でも需要が7割にしか戻っていないこともあり、ステークホルダーからリスク分散に関して問われる機会は増えている。老舗かつ大手のすかいらーくの分散体制は整ってはいるが、自前での転換業態開発が簡単ではないことも明白になっていた。そうした危機感から、コロナ以降、特にM&Aへの取組を強化してきたのであるが、一発目で大当たりをつかんだことになる。
大老舗すかいらーくの目利きや恐るべし、この点は大いに評価されるべきであろう。ちょっと前にも炭火焼干物定食屋しんぱち食堂の買収を報じられていた、すかいらーく、これから業界再編のメインプレイヤーとして、まだまだ続報がありそうな気がする。

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中井 彰人(なかい・あきひと)

流通アナリスト

みずほ銀行産業調査部を経て、nakaja lab代表取締役。執筆、講演活動を中心に、ベンチャー支援、地方活性化支援なども手掛ける。著書『図解即戦力 小売業界』(技術評論社)、共著『小売ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)。東洋経済オンラインアワード2023ニューウエーヴ賞受賞。


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(流通アナリスト 中井 彰人)
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