※本稿は、和田秀樹『ストレスの9割は「脳の錯覚」』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
■悩んだら散歩に出ると、うつを防ぐ効果も
ある経済学者は原稿執筆に行き詰まったら、そこで無理に続けようとせず、いったん散歩に出かけるそうです。
そうして無心に身体を動かしていると、頭が活性化し、机の前では思いもよらなかった発想が頭に降りてくるのだとか。
彼のように賢い人は、自分が書くものに対して「このレベルはクリアしなければならない」という要求水準が高いのだと思います。だからこそ質の高い文章を書ける反面、「いい加減なことは書けない」というプレッシャーも相当なはずです。
そこで意図的に「何も考えない」時間を作り、スキーマから抜け出そうとしているのかもしれません。身体を動かしていると、「こうあるべき」という頭のなかの縛りもゆるんでいくものです。
精神科医の立場からは、日光を浴びる効果を指摘しておきます。
外を歩いて日光を浴びると、セロトニンという脳内物質が分泌されます。セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれているのですが、セロトニンが減ると、うつになりやすいと言われています。
散歩をする習慣にも、頭をからっぽにする効用のみならず、太陽にあたってセロトニンの分泌を良くし、うつを防ぐ効果が期待できます。
■和田秀樹が一番大切にしている習慣
「煮詰まったら、思い切って寝てしまう」という人もいます。
たしかに睡眠にも、同じ効果があるのです。私自身、一番大切にしている習慣は昼寝です。自宅にいるときは、毎日昼間の1~3時の1時間くらい、昼寝にあてています。スムーズに眠りにつけるよう、昼食には必ずワインを飲むようにしています。
これには休憩の意味もあるのですが、睡眠中に記憶が整理されるのか、起きてからいいアイデアが出てくることが、しばしばあるのです。なので私は昼寝を邪魔されると、機嫌が悪くなります。その時間に電話がかかってくると、いかにも不愉快そうに対応してしまうことがあり、申し訳なく思います。
テレワークが普及し、時間の使い方が自由になっているおかげで、ほかの人にも昼寝をおすすめしやすくなっています。サボるためではありません。それが仕事のパフォーマンスを上げるからです。また思い詰めたり、不安がふくらんだりしたときも、思い切って寝てしまうのが手です。
余談ですが、大学受験も「寝る子は受かる」と言われます。
かつては「四当五落」といわれ、「4時間しか寝ない子は受かる。5時間以上寝ると落ちる」と受験生たちは脅されたものです。過酷な受験競争を論じる際にもやり玉に上がりました。
ところがその後、ある教授が東大合格者の受験生時代の睡眠時間を調査したところ、結果は平均8.5時間と出ました。
つまり、四当五落はウソ。正確には、8.5時間寝ていれば受かり、5時間しか寝てないと頭がちゃんと働かないので落ちる、とするべきでした。
■「本業」とは別に、何か活動の場を持つ
日本では、多趣味な人や、副業をいくつもしている人が、軽んじられる傾向があります。
私もまた、本業以外にさまざまな活動をしている1人です。さきほど話したような本の執筆だけではありません。本業のかたわらで映画を撮り、これまで4つの作品で、海外の映画賞を12とっています。
それでいて、精神分析の世界で、英文の論文が専門誌に掲載された日本人の医者は、私を含めて3人だけ。
「本業をおろそかにする、いい加減な人間」というイメージがついているせいでしょう。専門としている領域でほかの医者に負けている気はしないのですが、どうしても片手間でやっていると思われがちです。
このように「その道一筋」とほめそやすのは、日本人特有の価値観です。医療の世界でもそうですし、映画の世界でも、私は異業種監督あつかいされて、日本ではほとんど評価されません。
対照的に、外国の映画祭で、「精神科医をしながら、映画監督をやっている」と言えば、むしろ興味を持ってもらえます。日本とは大違いです。
そういえば、北野武さんも、ビートたけしとして芸人をやりながら、映画監督をしています。武さんですら、海外で賞をとるまで日本国内ではほとんど評価されませんでした。それが予想できていたからでしょう、武さんは海外の映画祭にどんどん出品しました。海外で賞をとらない限り、頭の固い日本の映画評論家には評価されないとわかっていたのでしょう。
私は、さまざまな活動をしているほうが、視野が広がり、本業にも役に立つと思っています。
■大谷翔平選手が二刀流をやるのも賛成
私のまわりを見ても「できる医者」ほど、多趣味な傾向があるように思います。「趣味のせいで本業が手抜きなのでは」と疑われがちですが、実態は逆です。ジャズピアノの腕前がプロ並みの医者が、名医と謳われていたりします。
自分が持っているスキーマを自覚できるのも、本業以外の活動をするメリットです。私自身、映画監督をやってみないとできなかった体験も、たくさんあります。
例えば「頭を下げる」体験です。よほどの売れっ子やメジャー監督は別にして、たくさんの人に頭を下げてお金を集めなければ、映画は作れません。
普段は医者として患者さんに頭を下げてもらえる立場ですが、自分がペコペコする立場になってみて、人の心がより理解できた気がします。選挙のときしか頭を下げない日本の政治家では、庶民の気持ちはわからないだろうと思います。
なので、メジャーリーグの大谷翔平選手が、二刀流をやるのも私は賛成です。
「どちらかに専念しろ」という声がいまだに根強く聞かれますが、ピッチャーをすることでバッターの「こうあるべき」が外れ、バッターをすることでピッチャーの「こうあるべき」が外れます。
おかげで、ピッチャーをするときにバッターの心理が読みやすく、バッターをするときピッチャーの心理を読みやすくなっているはず。バッターだけ、ピッチャーだけやっていては得難い経験です。
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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。幸齢党党首。立命館大学生命科学部特任教授、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)、『60歳を過ぎたらやめるが勝ち 年をとるほどに幸せになる「しなくていい」暮らし』(主婦と生活社)など著書多数。
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(精神科医 和田 秀樹)

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