家を安く建てるにはどうすればいいのか。「不動産Gメン」として活動する滝島一統さんは「ハウスメーカーを比較するために住宅展示場を訪れるのはアリだ。
だが、そこで営業マンから渡される『ある書類』には絶対にサインしてはいけない」という――。
※本稿は、滝島一統『得する不動産バイブル ハンコ押す前に読む本』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■家を建てるならトップクラスのハウスメーカー一択
土地を買ったり、土地を相続したりして家を建てるケースもあるでしょう。
建築をどこに依頼するかが悩みどころですが、自分で住むための家なら、できればトップクラスのハウスメーカーで建てるのが望ましいと思います。
一般的な工務店と、トップハウスメーカーは似て非なるものです。たとえば正規のiPhoneが10万円、誰かの“手作りiPhone”が8万円なら、多くの人は多少値が張っても正規品を選ぶでしょう。ところが、なぜか家だと“手作りiPhone”のような家を選ぶ人が少なくありません。
トップハウスメーカーではテレビCM代も上乗せされているから無駄に高いと考える人もいますが、請け負う戸数で考えれば、CMのコストなど微々たるものです。
家の値段は主に材料費と人件費で決まります。ウエイトが高いのは材料費で、適切な材料を使っていれば、価格が極端に変わることはありません。ハウスメーカーの家は工場で部材を大量生産することにより、高品質の部材を安く調達できます。したがって、極端に安いメーカーや工務店の見積もりには、どこかに不適切な点がある可能性があります。

人件費も同じです。価格が安い業者は、技術が伴っていない下請け先に発注して人件費を抑えているかも知れません。
■柱の本数や材料をケチる極悪業者もごくまれにいる
非常にまれですが、最悪なのは、材料を間引くケースです。実際に、完成後に柱の本数が足りていない、細い、壁が薄い、鉄筋コンクリート造(RC構造)で鉄筋が足りていないといったことが発覚したケースがあります。ここまでくれば法令違反です。外から見えないため、建ってしまうとわからないし、建築中に一般の人が見ても気付けません。
大切な我が家を任せるのであれば、万一、そうした問題が発覚した際にも補償してくれる財力がある大手企業に頼んだほうがいいということです。
■2割以上安い場合は「何かがおかしい」と疑え
前述のとおり、適切な施工をすれば、材料費も人件費も、それほど安くはできません。
大手や中堅、数社に見積もりを取っても、その差は2割以内でしょう。2割以上安い見積もりが出たら、何かおかしいと考えられます。たとえば、RC構造を坪単価100万円以下で建てるという触れ込みで不動産系ユーチューバーに紹介されていたデベロッパーがありましたが、いつの間にか倒産しました。
私のお客様の中にも、お止めしたのもかなわず、その会社に総工費約2億円の建物を依頼された方がいました。
結果、途中で倒産し、社長は行方知れずに。中途半端な建築段階で作業が止まったため、引き継いでくれる工務店と設計士を探しましたが、どこもやりたがりません。図面どおりに建っているかどうかも怪しく、問題が生じたら自分たちが責任を負うことになるからです。
かといって壊して建て直すと追加費用が発生します。それでもどうにか別の会社に依頼し、追加で2億円かかったそうです。お金も時間もかかり、周りからはいわく付き物件扱いされる。最悪です。
大手でも中堅でも、財務基盤が弱い会社は相当数、破綻しています。
材料費は高騰、人件費も高騰、しかし価格はそこまで上げられず、ギリギリで経営しているからです。大手のゼネコンでさえ、都心で高級マンションを建てる間にさまざまな問題が生じ、多額な損失を被った例もあります。
それでも大手であれば完工してくれますが、小規模な会社では体力がもたず、終了です。
建設会社とは、品質の問題だけでなく、倒産リスクも踏まえて契約しましょう。

また個人住宅建設の際に、国や自治体などの助成金が受けられる場合がありますが、そうした情報を持っていない小規模な業者も少なくありません。その点ハウスメーカーでは情報を得ているのはもちろん、メーカーによっては専門の部署が情報提供してくれたり、手続きについて教えてくれたりすることもあります。
■住宅展示場の書類には絶対署名してはいけない
住宅展示場(以下、展示場)では、最初に入ったメーカーで家を建てることになるケースが多い、という話があります。入ったら最後、一日中その家の説明を聞かされる羽目になり、契約まで持っていかれるのだというのです。理想の家を建てるため、複数のメーカーを比較検討するほうがいいのは言うまでもありません。
ちなみに私は展示場が大好きです。ヒーローショーなどのイベントもやっていますし、風船やノベルティグッズももらえるし、何より、建物を見るのは楽しいものです。
ただ、依頼する可能性があるハウスメーカーのモデルハウスで署名するのはご法度です。
展示場で署名すると、展示場のお客として名簿に入り「一定の利益率を確保しなければいけないお客」として登録されてしまうことがあるからです。
■展示場経由のお客は「利益を多く取るリスト」に入れられる
ハウスメーカーでは、そのお客がどの集客窓口を経由してきたかによって稟議の通し方が異なります。ハウスメーカーにとって一番集客コストがかかる窓口は、住宅の建築コストがかかっている展示場です。よって、展示場からのお客からは利益を多く取ることになっています。
対して、不動産会社から紹介されたお客にはコストがほとんどかかっていないため、利益率は下げていいことになっています。
また不動産会社からの紹介を受けたものの契約に至らない、ということが重なると、以降紹介してもらいにくくなります。そんな事情があり、メーカーも懸命に契約しようと努力します。そのため、不動産会社を通したほうが、価格などの交渉が通りやすいメリットも生じます。
展示場に行き、いいハウスメーカーが見つかったら、サインはせずに帰宅する。そして、そのハウスメーカーが不動産会社からの紹介を受けているかどうか、調べてみましょう。
「○○(メーカー名)不動産会社紹介」などと検索、紹介してくれる不動産会社が見つかったら、その不動産会社に相談して、ハウスメーカーを紹介してもらうのがベストです。
■「交渉の小技」の積み重ねて数百万円得することも
8室のアパートを建てたお客様の例をお話しします。キッチンに食洗機を付けたほうが入居率も家賃も上げやすいもの。そこでハウスメーカーに連絡して、すべての部屋に食洗機を付けてくれたら今契約してくれるそうですが、どうしますか? と尋ねました。するとすぐに聞き入れてくれたのです。食洗機の価格は約10万円、8台で80万円くらいです。

一棟を受注できるのであれば、利益を80万円減らすくらい、メーカーとしては何の問題もありません。いつもお世話になっている不動産会社からの紹介ということで稟議が通るのです。お客様は80万円得をする、ハウスメーカーは受注できる、不動産会社には紹介料が入る。まさに三方良しです(紹介料はハウスメーカー側から入るので、お客様の負担にはなりません)。
そのほか、完成後にほかのお客さんに建物を披露する見学会に応じる約束をすることで、サービスを引き出す手もあります。
地味に効くのが、ハウスメーカーの決算月を狙う方法です。3月、9月などの決算月の前月末までに契約すると値引きに応じてくれやすいのです。営業マンは目標の契約戸数、売上に足りていないことが多いので、「希望日までに契約するから値引きかオプションを」と話を持ちかけると、「上司に確認します」といった展開になります。
そうした小技を重ねると、数百万円単位で金額が変わってきます。価格が安いものを選ぶのではなく、いいものを選び、上手に交渉して買い値を下げていくのです。
■「展示場の家を建てる部隊」はもれなく腕がいい
同じハウスメーカーでも、誰が担当してくるか、どんな人が施工するかによって、クオリティが変わることがあります。
大手ハウスメーカーには数多くの設計士や営業マンがいますが、実力はピンキリです。

ハウスメーカーの家は部材を組み立てて造るプラモデルのようなものですが、同じガンダムのプラモデルでも、小学生が作ったプラモデルとプロのモデラーが作ったものではまったく異なるように、腕のいいプロが建てた家は細部までとてもきちんとしています。
とはいえ、ハウスメーカーの家であっても、施工する工務店がよくないと、レベルが下がります。では腕のいいプロとはどこにいるのか。それは本部直轄の展示場の家を建てる部隊です。会社の顔となる展示場の家を建てる部隊に建ててもらうのが、最も成功率が高いのです。
不動産会社を通じてハウスメーカーに依頼するのであれば、本部直轄の部隊に建ててもらいたい、と頼んでみましょう。
■「一生に一度の買い物」くらい言いたいことを言おう
ハウスメーカーが不動産会社からの紹介を受けていない場合は、ご自身で直接本部に連絡してもいいでしょう。「私は御社で家を建てたいのですが、この地区で一番優秀な営業マンと設計士を担当に付けていただけますか? それが可能なら契約する考えがあります」と言うのです。一生に一度の買い物、それくらい言ってかまいません。
その道20年の優秀な営業マンと、入ったばかりの営業マンでは、社内営業の力が段違いです。社内営業力が強ければ、依頼主の要望も実現しやすくなります。優秀な営業マンを紹介してくれたら、その人に「下請けではなく、本部直轄の部隊に施工してほしい」と依頼しましょう。
家は展示場で見ても住み心地はわかりにくいもの。住んでみて失敗したと気づいても、取り返しがつきません。人生を左右するかも知れない大きな買い物です、勇気を出して言いたいことは言いましょう。

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滝島 一統(たきしま・かずのり)

不動産系YouTuber

1976年東京都生まれ。明治大学商学部卒業後、ミサワホーム入社。25歳の時に渋谷区初台に不動産会社光文堂インターナショナルを設立。2011年より海外不動産事業にも進出。2022年6月、YouTubeチャンネル「不動産Gメン滝島」をスタート。不動産業者に騙されないための情報、物件の見方など、ユーザー目線の情報をコワモテで語る動画が人気を集め、1年で登録者数26万人を突破した。漫画原作者として『SWEET DEAL(スウィートディール)』でデビュー。

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(不動産系YouTuber 滝島 一統)
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