良質な睡眠をとるには、どんな過ごし方をするといいか。脳内科医の加藤俊徳さんは「布団に入って寝る体制なのにブルーライトで覚醒させられると、脳は混乱してなかなか寝つけなくなり、やっと眠っても熟睡できなくなる。
就寝1時間前に店内からあふれる強烈な光に誘われてついつい寄り道したくなるが、してはいけないお店がある」という――。
※本稿は、加藤俊徳『80代でも若返る脳』(新星出版社)の一部を再編集したものです。
■寝付けない人にお勧めの日中ルーティン
なかなか寝つけない方は、昼間に"睡眠の仕込み"をしておきましょう。
仕込みとして一番のおすすめは日中の散歩です。
太陽を浴びるとセロトニンが分泌され、それが夜になると睡眠ホルモンであるメラトニンに変わります。
また、散歩による「運動疲労」は、良質な睡眠をもたらすからです。
時間としては1時間。30分では短すぎます。昼間、家のなかを歩き回っている人は30分でも構いませんが、夜になかなか寝つけない方には1時間の散歩をおすすめします。
ほかにはスポーツジムに行く、軽いスポーツを始める、など運動を実践するのもいいでしょう。
人間の体は、常に正常な状態を保とうとする「ホメオスタシス(恒常性)」が作用しています。ホメオスタシスは睡眠と大きな関わりがあります。

運動だけでなく、労働、勉強などで日中に脳や体に負荷をかけると、その負荷による疲労が生じます。
疲労を取り除いて正常な状態に戻そうと、ホメオスタシスの作用によって睡眠がもたらされるのです。
ですから、労働や勉強をおこなって脳に負担をかけることも“睡眠の仕込み”として有効です。
■良質な睡眠のために避けるべき「強い刺激」
コンビニ、スマートフォン(スマホ)、パソコン、テレビ。これらには共通点があります。それは強い光である「ブルーライト(400~480nm)」の発生源であること。
ブルーライトは波長が短く散乱しやすい性質があり、照らされたものがチラついてボケてしまいます。ピントを合わせるため目に負担がかかるので、長時間、テレビを視聴すると目が疲れるのです。
目を疲れさせるブルーライトの洪水ともいえるのがコンビニの店内です。夜道のコンビニは距離があっても光でその存在を知らせてくれるほど。
店内からあふれる強烈な光に誘われてついつい寄り道したくなるかもしれませんが、逆算予定表に記入した就寝時間まで1時間しかないようなら急ぎ足で通りすぎてしまいましょう。
店内で強烈な光を浴びてしまうと脳が昼間だと勘ちがいしてしまうからです。
その覚醒作用の影響は1時間は続くので入眠に確実に影響します。
眠るときにBGM代わりに、スマホやパソコンの動画、テレビをつけっぱなしの方もいるかもしれませんが、これらの「画面」もブルーライトを発しています。
布団に入って寝る体制なのにブルーライトで覚醒させられると、脳は混乱してなかなか寝つけなくなり、やっと眠っても熟睡できません。
また一方で、ブルーライトは太陽光にも含まれています(空が青く見えるのはそのため)。朝の自然な光(ブルーライト)を浴びることは体内時計を整わせる効果があります。
■夜中のトイレは「明かり対策」をしっかり
就寝時に部屋が明るいとなかなか眠れません。部屋を真っ暗にしても1時間前に浴びた強い光の影響はまだ脳に残っています。寝室の照明は暖色系に変える、間接照明にするなどして、脳への刺激をやわらげる工夫をしましょう。
室内照明同様、気をつけてほしいのが「夜間のトイレと廊下の光対策」です。
加齢で膀胱の収縮力が弱まりためられる尿の量が減る、尿の量を抑えるホルモンの分泌量が低下するなど、年齢が上がると夜間頻尿の傾向が高くなります。
トイレの度に電気をつけて、強い光を浴びてしまうと再び眠りに入るまでに時間がかかってしまうこともあります。
トイレも暖色系の照明が望ましいのですが、トイレのつくりによっては隅々まではっきり見えずに掃除に不便を感じるかもしれません。

その場合は、天井の照明はそのままにして暖色系の人感センサーライトをプラスしてみましょう。夜間は天井の照明はつけず、人感センサーライトのやわらかな光だけを使うようにします。
寝室からトイレまでの動線にも同様の人感センサーライトをつけておけば、脳への刺激を最小限に抑えられます。
■お酒は深い眠りの邪魔をする
コーヒー、紅茶、緑茶など、カフェインを含む飲み物で目が冴えてしまうことはよく知られています。
一方、アルコールは睡眠を促すからと「寝酒に1杯ひっかける」方は多いのではないでしょうか。
確かに、アルコールは入眠までの時間を短くはしてくれますが、その後の睡眠の質を下げることがわかっています。脳がしっかり休める深い眠りが減って、体は寝ているのに脳が休めていない浅い眠りが増えてしまうのです。
また、喉の筋肉が緩んで気道を閉塞するため、閉塞性睡眠時無呼吸症の発症や悪化にも関わるほか、交感神経が刺激されて夜間頻尿を引き起こして中途覚醒(夜中に目が覚めて寝つくのに時間がかかる)の弊害も生じます。
さらに問題なのは飲酒が習慣化するとだんだんと量が増えることです。飲酒量の増加とともに先に挙げたような弊害も大きくなり、それらを解消するつもりでよけいに飲むという悪循環に陥ってしまうのです。

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加藤 俊徳(かとう・としのり)

脳内科医、加藤プラチナクリニック院長

新潟県生まれ。医学博士。
株式会社「脳の学校」代表。昭和医科大学客員教授。脳科学・MRI脳画像診断の専門家。脳番地トレーニング、助詞強調おんどく法の提唱者。14歳のときに「脳を鍛える方法」を知るために医学部への進学を決意。1991年、現在、世界700カ所以上の施設で使われる脳活動計測「fNIRS(エフニルス)」法を発見。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科でアルツハイマー病やMRI脳画像の研究に従事。ADHD、コミュニケーション障害など発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。加藤式MRI脳画像診断法を用いて、脳の成長段階、強み弱みを診断し、これまでに1万人以上を治療。著書には、『一生頭がよくなり続ける すごい脳の使い方』(サンマーク出版)、『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』(ダイヤモンド社)、『悩みのループから解放される!「執着しない脳」のつくり方』(大和書房)などがある。
※「脳番地」(登録第5056139 /第5264859)は脳の学校(登録4979714)の登録商標です。

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(脳内科医、加藤プラチナクリニック院長 加藤 俊徳)
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