脳の活性化に効果的な運動は何か。脳内科医の加藤俊徳さんは「音楽やラジオを聞きながら片足立ちすると、右足と左足にそれぞれ2.5倍以上もの負荷がかかり、筋肉を鍛え、同時に骨を丈夫にするウォーキングより効果が高い方法がある」という――。

※本稿は、加藤俊徳『80代でも若返る脳』(新星出版社)の一部を再編集したものです。
■「体を動かすこと」で脳に様々な刺激
脳は無数の細胞の集合体であり、同じような働きをする細胞の集まりを「脳番地」と私は名づけています。
機能別に大別して、思考系、感情系、伝達系、運動系、聴覚系、視覚系、理解系、記憶系の8つの脳番地は連携して働きますが、もし、「ひとつを重点的に鍛える」としたら、どの脳番地がいいと思いますか?
答えは断然「運動系」です。
運動系は他の脳番地との連携が強いので、「体を動かす、すなわち脳番地全体を動かす」といっても過言ではないのです。
例えば、運動系を鍛えるために散歩に出かけるときの行動を想像してみましょう。
まず、窓から空を眺めて(視覚系)天気を確認することでしょう。
曇り空なら今日の散歩はやめるべきかしばし検討し(思考系)、「この時間はニュースで天気予報があるはずだ」と思い出して(記憶系)、テレビを流し聞きしながら(聴覚系)、チラチラと空の様子をうかがいます。
「降水確率10パーセント」と情報を仕入れたら傘は不要と判断(理解系)して出かけ、散歩を終えて家に着いたとたんに雨が降り出したら「濡れずにすんだぞ、ラッキー」と、ちょっと得した気分になるでしょう(感情系)。
ここでは端折りましたが、もちろん散歩の道中も刺激に満ちたもので、各脳番地は好奇心いっぱいに刺激を楽しむことができます。
■体を動かして、食べて、喋る
運動系は胎児のときから発達しはじめます。人間の脳番地のなかで最初に発達し最後まで活動を続ける部分が運動系なのです。
常に活動をしている運動系は新陳代謝も活発なので、老廃物が速やかに排出されます。
全脳番地のなかで認知症を引き起こす原因物質とされるアミロイドベータが最後にたまるのが運動系なのです。
人間にとって「動くこと」は生きていくうえで当たり前の活動ですから、「当たり前」に関わる運動系の活動が低下すること自体が、人体にとって危機的状況といえます。
運動系の活動量が落ちていくと、それに引きずられて全ての脳番地の活動も停滞していき、老廃物を排出する力も弱くなるためアミロイドベータは蓄積していく一方なのです。
反対に運動系を活発に使っていると、運動系はもちろん、それ以外の脳番地にもアミロイドベータがたまりにくくなります。散歩の例で示したように、運動系はほかの脳番地と連携する力が強いからです。
さて、運動系には、「手と足」「口の動き」に関わる部分もあります。
スーパーエイジャーを目指すなら、いつも、いつまでも「体を動かして(手と足)、食べて、喋る(口)」こと。若々しい脳をつくる秘訣です。
ちなみに、運動系とは逆に「最後に発達を始める」のはどこかといえば、それは「感情系」です。感情を発達させるには、各脳番地を自在に横断して使いこなすさまざまな経験が必要だからです。
スーパーエイジャーの皆さんの人生経験が刻み込まれている脳番地といえるでしょう。
■「口」を動かせば人生が豊かになる
運動系の「口の動き」への意識の持ち方は大事。
「口の動き」への関わり方ひとつで、脳番地全体が刺激を受けるチャンスが広がるからです。
「口の動き」は「咀嚼」「発声」「コミュニケーション」と目的が広いため、刺激する機会をつくりやすいといっていいでしょう。
咀嚼、発声、コミュニケーションの3つが揃っている「会食」や「お茶会」などは、絶好の脳番地トレーニング。特に発声を伴うコミュニケーションは運動系だけでなく、思考系、感情系、伝達系、聴覚系、視覚系、理解系、記憶系のすべての脳番地が刺激されます。
会食やお茶会の集まりをもつグループに所属しているのなら、ぜひ幹事を買って出てください。日程調整・出欠確認、お店選び・予約などは、思考系、理解系、記憶系を、さらに鍛えることができるからです。
もちろん、朝の散歩でばったり会ったご近所さんと立ち話で盛り上がり、「今日の午後、うちでお茶でもしない?」という気楽な集まりも脳番地は大歓迎です。
家に帰ったら、約束の時間から逆算して作業スタートです。リビング、トイレ、玄関と掃除を進めながらお茶請けを考え、客用の茶器を出したら茶葉の確認……。
いくつもの作業を進めるときの、ギュッと集中して複数の脳番地が緻密に動き出す感覚は心地いいものです。
日々、「脳番地を鍛えるために」という意識をもって、創意工夫の機会をつくって生活していくことはもちろん大事です。その一方で、食事会の幹事や、自宅に友人を招待するような、「誰かのため、みんなのため」「喜びや楽しみのため」という気持ちもまた、脳の若返りにはたいへんプラスになります。

■足腰を鍛えて運動貯金をためる
運動貯金をためるために、散歩より負荷のかかる運動をするのもおすすめです。
ここでは手軽にできて、ウォーキングよりも効果が高い方法を紹介します。
効率的に鍛える「片足立ち」
最初に紹介するのは「片足立ち」。人間の足1本分の重さは体重の約6分の1とされているので、体重60キロなら両足が支えているのは両足分(20キロ)を引いた40キロ。片足が受け持つのは半分の20キロです。
一方、片足で立った場合は、40キロ+反対側の足の10キロ=50キロを支えることになります。両足で立ったときの20キロに比べて、2.5倍以上もの負荷がかかり、この負荷のおかげで筋肉が鍛えられ、同時に骨も丈夫になり、骨粗鬆症の予防や改善にもつながるのです。
ウォーキング時も片足になるタイミングがありますが、前に進む勢いがあるため、片足立ちほどの負荷はかかりません。
片足立ちの強い負荷は、運動系の活動を盛んにします。音楽やラジオを聞きながら片足立ちすると、聴覚系を皮切りに、思考系、理解系、記憶系といった脳番地も一緒にトレーニングに参加できます。
■インナーマッスルを鍛える「あおむけ足回し」
次に紹介するのは、腹部から足先までのインナーマッスルを鍛える「あおむけ足回し」です。下図のような運動を続けていくと、体幹が鍛えられ、姿勢がよくなり、歩行時のぐらつきもなくなり、転倒防止にも役立ちます。

ベットであおむけになっているときに音楽・ラジオを聞きながらする、朝起きたときにするなど、いつでもできる運動です。
ながら運動は運動系を鍛えるだけでなく、聴覚系、理解系、記憶系も刺激できます。

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加藤 俊徳(かとう・としのり)

脳内科医、加藤プラチナクリニック院長

新潟県生まれ。医学博士。株式会社「脳の学校」代表。昭和医科大学客員教授。脳科学・MRI脳画像診断の専門家。脳番地トレーニング、助詞強調おんどく法の提唱者。14歳のときに「脳を鍛える方法」を知るために医学部への進学を決意。1991年、現在、世界700カ所以上の施設で使われる脳活動計測「fNIRS(エフニルス)」法を発見。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科でアルツハイマー病やMRI脳画像の研究に従事。ADHD、コミュニケーション障害など発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。
加藤式MRI脳画像診断法を用いて、脳の成長段階、強み弱みを診断し、これまでに1万人以上を治療。著書には、『一生頭がよくなり続ける すごい脳の使い方』(サンマーク出版)、『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』(ダイヤモンド社)、『悩みのループから解放される!「執着しない脳」のつくり方』(大和書房)などがある。
※「脳番地」(登録第5056139 /第5264859)は脳の学校(登録4979714)の登録商標です。

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(脳内科医、加藤プラチナクリニック院長 加藤 俊徳)
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