自分や親が大切に保存してきたモノがお金になる。業界専門紙「リユース経済新聞」によれば、市場規模は2009年1.1兆円強だったものが2023年は3.1兆円規模に膨み、2030年には4兆円の大台に乗ると予測している。
ノンフィクションライターでデジタル遺品を考える会代表の古田雄介さんがサブカルチャーグッズ専門店として知られる「まんだらけ」が全国展開する「生前見積」サービスでの買取事例を取材した――。
※本稿は、古田雄介『それ、死後もお宝ですか?』(集英社インターナショナル)の一部を再編集したものです。
■リユース市場規模は2030年に4兆円台
私物に対して私たちが選べる最終的な処分の手段は次の3つに大別される。
A 売る(換金して手放す)

B 託す・渡す(無償で手放す)

C 捨てる(支払って手放す)
まずはAの「売る」手段を考えてみたい。私物、あるいは遺品を売るとなると、相手として浮かび上がるのは様々なジャンルの買い取り専門店だ。
宝飾品や家具、古着、クルマやバイク、スマホやパソコンなどには専門の買い取り店が多数あるし、横断的に査定してくれるショップも増えている。個人で直接取り引きするなら、フリマアプリやオークションアプリを利用する手もある。売ろうとする際の窓口は10年前と比べて確実に増えている。
実際、買い取りを含めたリユース市場は10年以上にわたって右肩上がりが続いている。業界専門紙の「リユース経済新聞」が2024年9月に報じた推計によると、2009年に1.1兆円強だった市場規模は上昇し続け、2023年には3.1兆円規模にまで膨らんだという。
リユース意識の高まりだけでなく、長引く不況でコストパフォーマンス意識を持つ消費者が増えていることや、コロナ禍明けの物価上昇、円安によって買い取った品物を海外で売る利益の増大などが重なっており、今後も活況が続くとの予想の根拠となっているようだ。同紙は2030年には4兆円の大台に乗ると予測している。

■家には「隠れ資産」が眠っている
卑近なところでも、2025年に入ってからは新聞などに買い取り専門店の折り込みチラシが挟まれることが明らかに増えたし、取材で訪れる様々な街で商業ビルの空きテナントに同種の店舗が入店する光景をしばしば目にするようになった。メルカリの推計によれば、各家庭には無視できない価値を持つ「隠れ資産」が眠っているわけで、掘り起こしに動く企業が増えるのは自然な流れといえるだろう。
複数の買い取りサービスを併用すればあらゆる私物が換金できる。値がつかないものでもタダで引き取ってくれるサービスも多いことを考えると、費用を払って捨てる選択をする前に、とりあえず買い取り先を探すほうがお得といえそうだ。
ただし、結果が出るまでに一定の時間がかかることもあるし、旬の過ぎたジャンルは丸ごと買い取り対象から外れることもある。
たとえばリユース業界で最多のチェーン店数を抱えるゲオ(ゲオホールディングス、2026年10月からは社名変更によりセカンドリテイリング)は、2022年9月をもって音楽CDの買い取りサービスを終了している。
また、ソフトコンテンツのなかでもアダルト向けは買い取り対応する店舗が限定される。売りに出す品々のラインアップに合わせて、余裕のあるスケジュールを立てて、場合によっては複数の店舗に相談することを意識したほうがいい。
複数のジャンルを広域で扱うショップは万人向けの品揃えを志向する半面、一部の界隈だけで高値で取り引きされているようなレアアイテムの扱いは不得手ということもしばしばある。マニアの間ではプレミアモノとして知られる希少本がその価値に気づかれないまま100円コーナーに並べられることもある。
■「まんだらけ」の「生前見積」サービス
市場が狭くて深いマニア向けのアイテムを高く買い取ってもらうなら、その事情をよく知る買い取り先を探したほうがいい。しかしそのぶん手間がかかるし、買い取りに至るハードルも高くなるのが常だ。

査定額を重視するならサブカルチャーグッズに精通した専門店ということになるだろう。たとえば、東京・中野に本拠を置く「まんだらけ」なら全国展開しているので、物量的にもミスマッチが起きにくいと予想が立つ。しかも同社は2016年から「生前見積」サービスを展開している。
「死期を悟り、生前のコレクションの行く末を考える」コレクターを対象としたインターネット専用のサービス窓口で、手持ちのコレクションを1点から最大100点まで無料で査定してくれる。原則として査定は送付された画像データで行い、見積もりの結果は通常1週間から10日ほどで依頼者の元に届く仕組みだ。
しかし、晴れて見積書発行に至るケースは多くはない。同社広報部の中村勝也部長によると、依頼のペースは月に4~5件程度で、見積書発行まで進むのはその半数程度だという。
同社は「まずはご自身のコレクションのなかで価値が高いと思われるモノのなかから10~20点程度メールでお申し込みください」と案内しているが、そもそも対象となるのが現在入手困難になっているレアモノなので、市場で普通に買えるものは省かれるし、見積書の発行は1点あたり買い取り評価額が5000円以上のものに限られる。
■6点で買取評価額は105万円超
1点のみでの依頼の場合はさらに厳しく、3万円以上の評価額が求められる。中村部長は「コレクションのなかで、価値が高いと思われるものの画像を10~20点を送っていただければ、見積もり可能か否かはだいたいすぐに分かります」と言う。
同社の公式ページにリンクされている「生前見積」の参考例を見ると、例示されている品目の並びが「敷居」の役割を果たしているともいえる。
たとえば見積書の最初にある「クローバー ダイカスト 無敵超人ザンボット3 コンビネーションプログラム」という品目を見たとき、どこまでが企業名で、何がブランド名であり、どんな作品のどの商品なのか理解できることが最低条件となる。

参考までにこの生前見積の品目と買取評価額を書き出してみると、
・(前出の)「クローバー ダイカスト……」が50万円

・「カルビー旧ライダーカード【表25局版】㊵仮面ライダーのひみつ」2万7000円

・講談社テレビコミックス ウルトラセブン第4集」8万円

・「ブルマァク(移行期)キングジョー」2万5000円

・「イヤーズペコちゃん(初代から2016年まで)」17万2000円

・「M1号 キングギドラ 1988 1/1 ヘッド」25万円(原型師 直筆サイン入り)

で、計105万4000円となっている。
そのうえで、その商品がマニアにどんな評価を受けているのか見当が付けられるくらいの知識がないと、「価値が高いと思われるもの」を選定することはかなり難しくなるはずだ。
見積書の発行が即日の買い取りにつながるわけではないが、査定の基準は変わらない。所持するコレクションのなかから、現在は入手困難であって価値が高そうなものを10~20点限定したうえで相談するというプロセスを経ることになる。
それぞれの価値をよく知る本人なら、最新の相場を少し調べただけでスムーズに依頼まで進められるかもしれない。しかし、遺品になった後で、その道についての造詣がそこまで深くない遺族が同等の選定を行うのはあまりに無理難題だ。
■古書店大手の「ブックオフ」の場合は
そう考えると、ニッチな界隈のグッズをニッチ市場で売る場合は、入手した本人が行うことが基本条件といえる。その道に精通していない遺族が判断しなければならなくなった時点で、最高水準の価値共有は諦めたほうがいいのかもしれない。ある程度のところで割り切り、もっと広い需要がカバーできる買い取りサービスに照準を合わせるのが現実的だろう。
全国展開している古書店大手の「ブックオフ」は依頼者が箱に詰めた本やグッズなどを集荷し、後に査定額を提示して買い取る「宅配買い取り」というサービスを行っている。幅広い消費者に向けて展開しているので買い取りの対象が広いし、特定のジャンルへの依頼者の選定眼も求められない。
つまるところ、売りに出す当事者自身が「自分は誰に向けて売る知見をどれだけ備えているか」を見定めたうえでアクションを起こすことが重要だ。
そのうえで、より高額での引き取りを追求するなら、それなりに時間をかける必要がある。

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古田 雄介(ふるた・ゆうすけ)

ノンフィクションライター、デジタル遺品を考える会代表

ノンフィクションライター、デジタル遺品を考える会代表。1977年、愛知県生まれ。名古屋工業大学工学部社会開発工学科卒業後、ゼネコンと葬儀社勤務を経て雑誌記者に。2007年にフリーランスとなり、2010年から亡くなった人のサイトやデジタル遺品についての調査を始める。著書に『ネットで故人の声を聴け 死にゆく人々の本音』(光文社新書)、『故人サイト 亡くなった人が遺していったホームページたち』(鉄人文庫)、『バズる「死にたい」 ネットに溢れる自殺願望の考察』(小学館新書)、共著に『第2版 デジタル遺品の探しかた・しまいかた、残しかた+隠しかた』(日本加除出版)など。

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(ノンフィクションライター、デジタル遺品を考える会代表 古田 雄介)
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