■退職金が大幅減額で優先は教育費? 老後資金?
今回は、一年後に定年退職を迎える榊原良平さん(仮名・59歳・会社員)と、その奥様・真理恵さん(仮名・45歳・パート)からのご相談です。お子さんは上から17歳(高校生)、15歳(中学生)、13歳(中学生)の3人で、これから教育費のピークを迎えます。
ご相談の内容は、来年支給される退職金から、教育費と自分たちの老後資金をどう割り振っていくかというもの。
「諸先輩方の話によると、私の勤続年数や役職なら4200万円くらいは出る見込みでした。4200万円あれば子供3人分の大学費用を払いきっても老後資金が2000万円は残るだろうと、ゆったり構えていたんです」(良平さん)
ところが、急に会社の業績が悪化し、制度が変更されて一時金が減額され、年金形式と併用支給になるとのお達しがあったと言います。「え、待って待って」「聞いてない、ありえない!」と青ざめたのも無理はありません。
「一時金と年金を合わせてトータルで2700万円程度だと言われています。定年間際に、こんなことになろうとは……」
そう、がっくりと肩を落とす良平さん。2700万円でも、世の平均に比べれば多いのですが、想定より1500万円もの減額となれば、ショックを受けるのも当然です。
仮に退職金が2700万円で決定した場合、3人分の大学費用を丸々支払うことは不可能ではありませんが、手元に残る資金はほぼゼロになることは覚悟しなければなりません。
大学4年間の教育費(授業料や教材、学校生活費)は、ざっくりと国立大は500万円程度、私立文系は600万円、私立理系は700~800万円を見ておくといいと言われています。仕送りする場合は、在学期間に一人あたりプラス350万円程度かかる可能性があります。
「借金は住宅ローン1本。完済は来年、定年と同時に“上がり”になります。これまで、3人の教育費は惜しみなくかけてきました。それだけに、現在の貯蓄額は400万円程度しかありません。この400万円は、3人が大学に行くまでの教育費に使う予定です。
果たして、退職金で大学費用を100%出し切り、老後資金はそれから貯めるべきか。それとも奨学金を活用して、退職金の一部は手元に置いておくべきか。どうしたらよいかお知恵をお貸しください」(良平さん)
■「大手志向」が家計のあだに
家計を拝見すると、手取り月収は真理恵さんのパート収入月8万円を含め、合計53万円。
食費は5人家族で8万5000円、小遣いも5人で2万5000円など、かなりがんばって切り詰めている様子がうかがえます。
一方で気になるのは、通信費3万5000円と、生命保険料7万円です。
「私もこのあたりは削る余地があると思っていました。ただ、主人が『契約するなら大手でないと』の一点張りでここまで来ました。生命保険会社もスマホも主人の希望で、伝統ある国内大手の会社と契約しているんですが、大手でなくても良心的な会社は多いと思うんですよね。ねえ、これを機に乗り換えてみても……」
そう真理恵さんが話すと、良平さんはすかさず反論。
「でも大手のほうが何かと安心でしょう? 格安スマホに乗り換えて、肝心な時に電波がつながらなくなったらどうするの?」
「やっぱりそうだよね……」とうなだれる真理恵さん。これまで幾度となくこうした会話が繰り返されてきたのでしょう。
ただ、そう反論してきた良平さんが「大丈夫だ」と信じてきた老後資金の設計がガラガラと音を立てて崩れたのが一カ月前。ピンチの今こそ、思い切った見直しをしてほしい。早速、削減できそうな支出を検討していきました。
■退職金減の危機は固定費を見直すチャンス
早速、“大手信者”の良平さんに格安スマホの仕組みとメリットをお話しました。
「格安スマホは大手から電波を借りてサービスを提供しています。私も15年前から、月額利用料が1500円程度の格安スマホを使っていますが、問題なく電波もつながりますし、特段困ることはありませんよ。それと、今契約しているネット使い放題のプランですが、現在良平さんは月何ギガ使ってらっしゃいますか?」
良平さんも真理恵さんも月の使用ギガ数を把握しておらず、その場でマイページにログインして確認していただくと、どちらも月に2ギガに達しないほど。にもかかわらず、ギガ使い放題のプランに入っていました。そこで、格安スマホに乗り換えるなら、ご夫婦だけでも最低限のギガ数でも足りる格安のプランを選ぶ方法があることを提案。
また、例えばY!mobileの親子割を使えば、月30GBも使えるプランでも一人3000円程度で済むこともお話ししました。4人分のスマホを格安スマホに替えてプランも見直すと、スマホ代だけで1万2000円程度になります。こうお話しすると、ならばと乗り換えを決意。結果的に、Wi-Fiと合わせて、通信費は3万5000円から1万7000円へと大きく減らせました。
生命保険料は、夫婦ともに国内大手の貯蓄があり、死亡保障、医療保障、がん保障もついたパック型商品に入っていました。その額、トータルで月7万円となかなかの高額。それを他社の掛け捨ての商品に見直しをしました。
そのほか、自動車に乗る機会を少し減らし、日用品も削りました。食費や被服費などの変動費はもともと切り詰めていたので、これ以上カットすると生活の質が下がる懸念もあり、手をつけないことに。
結果的に、総計6万1000円を家計から削減しました。53万円の収入に対し、家計改善後の支出合計額は48万3000円で、収支の差額は4万7000円の黒字です。
良平さんは定年後、嘱託社員として手取り月収が約30万円に減額され、世帯収入は真理恵さんのパート代と合わせて38万円になる予定です。
住宅ローンは定年退職と同時に完済するのでアフター支出からさらに7万2000円が減り、定年後の収支はマイナス3万1000円の予定に。退職金の一部が年金形式として支払われるため、家計はプラスマイナスゼロになる見込み。また、真理恵さんもパートを増やしていく予定だそうで、今より5万円パート収入が増えれば安心でしょう。
■資産運用するなら教育費と運用原資は5:5
さて、家計が整ったところで本題です。退職金をどう割り振るか。
結論として、退職一時金の半分程度を手元に残し、残りを大学費用に充てることになりました。学費の不足分は、奨学金の申請を活用します。
検討材料のため、2パターンのライフプラン表を引きました。
① 100%教育費に全振りするプラン
② 教育費に50%、資産運用に50%で、一時金の半分程度を手元に残すプラン
この2つをシミュレーションして比較すると、②の資産寿命のほうが大きく延びたのです。そして①の場合、相当家計が厳しくなります。教育費を出しきった後に、さあ老後資金を貯めようといっても、原資となる年金が生活費でほぼほぼ消えてしまいますし、時間を味方に増やすこともできません。
資産寿命は、運用するか否かで、大きく変わってきます。運用せず、預貯金で持つなら、退職金は教育費と生活費で減る一方でしょう。しかし運用するなら、預貯金以上の利回りが期待でき、長く持つほど増えることも期待できます。そうするためにも、まとまった原資を確保するため、退職一時金の半分は残しておきたいところ。そのため、奨学金の利用も視野に入ります。
違う視点でも見てみましょう。
これは住宅ローンにもいえることです。早く完済したいからと、退職金の一部を使って繰り上げ返済される方もいらっしゃいますが、ローンの金利と運用利回りを比較し、運用のリターンのほうが大きければ、あえてローンを返済せず、手元に原資を残して運用していく方が資産寿命が長くなります。
■親自身の老後が危ういなら奨学金の活用を
そう話すと、真理恵さんは「でも、子供には借金を負わせることには抵抗があります。これまでも借金は住宅ローン以外して来なかったわけですし……」と、ためらいを見せました。
「子供に負担をかけたくない」という親心は素晴らしい。ただ、その一心で頑なに借りず無理して頑張りすぎた結果、親自身の老後資金が足りなくなり、子供に泣きついてしまうケースも度々見てきました。
安易に奨学金を借りることは推奨できませんが、数十年後に子供たちに援助を求めることになるくらいなら、今のうちに制度に頼ったほうがお互いのためではないでしょうか。実際、お二人の場合、奨学金を借りずに①でいけば老後が危うくなるのはシミュレーションが明示していますから。
私がこう話すと、真理恵さんは「後で子供たちに迷惑がかかるよりは」と、奨学金の申請に前向きになりました。良平さんも2パターンのグラフを見て納得したのでしょう。お二人は腹をくくって「家計の負担を軽減したいから、本当に必要な分だけ借りてもらえないか」とお子さんに話をしました。お子さんは了承してくれ、月々7万円の奨学金を申請することに。
■退職後はややスピーディーな運用スタイルに
今、お二人は家計改善で生まれた黒字額4万7000円を使って、少しずつ積み立て投資を始めています。ただ、退職一時金が入ったら、投資の額を増やし、ややスピーディーな運用スタイルにシフトしていくことを視野に入れています。
投資の鉄則は「長期・分散・積立」。退職金が入ったからといって一気に投資に充てるのは厳禁です。今まで堅実にやってきたのに、退職金の大部分をまとめて投資につぎ込み、その直後に相場が暴落して損をするケースは少なくありません。相場が高い時に買ってしまう“高値掴み”をしてしまうリスクもあります。
良平さんにしても、そうしたケースは回避したい。ただし、老後資産を貯めておらず、60歳頃から運用を始めるとなると、あまりに細々と積み立てをしていくと寿命との兼ね合いでせっかくのお金を生かせられなくなる可能性もあります。
そこで、資産形成のスピードをあげたいのであれば、成長投資枠も使いながら、NISAの月の上限額30万円ずつ積み立てていったり、10万円ずつ積み立てて時々スポット買いをすることもできることをお伝えしました。いずれにしても、長期・分散・積立のセオリーは守る形になります。
今後の“頼みの綱”は、14歳下の真理恵さんのパート収入になります。そして、良平さんがどこまで就労を続けられるか。
パートから正社員への変化は、気持ちも体力も追いつかないかもしれません。現在の真理恵さんのパート収入は月8万円ですが、それをいきなり20万円に増やすのは心理的にも抵抗が大きいでしょう。
ただ、老後資金を貯めるためには、現在の1.5倍くらいは働いて14万円ほどは稼いでおくほうが安心です。お二人でゆっくり老後の生活を楽しみたいなら、良平さんの再雇用が終わる65歳までの5年間は思いっきり働くのもいいかもしれませんね。
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横山 光昭(よこやま・みつあき)
家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表
お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の確実な再生をめざし、個別の相談・指導に高い評価を受けている。これまでの相談件数は2万6000件を突破。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。著書は90万部を超える『はじめての人のための3000円投資生活』(アスコム)や『年収200万円からの貯金生活宣言』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を代表作とし、著作は171冊、累計380万部となる。
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桜田 容子
ライター
明治学院大学法学部を卒業後、男性向け週刊誌、女性向け週刊誌などで取材執筆活動を続け、気付けばライター歴十数年目に突入。にもかかわらず、外見は全然ライターっぽく見られない。趣味はエアロビとロックンロールと花見など。
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(家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表 横山 光昭、ライター 桜田 容子)

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