■まさかの決選投票で起きた珍事
異例の決選投票にもつれこんだ社民党の党首選は、4月6日に開票作業が行われ、最終的に現党首の福島瑞穂氏が再選された。だが、当選後の記者会見では、対抗馬となった大椿裕子元参院議員の発言が認められず、大椿氏が抗議の退席をして、怒号が飛び交う事態に。

「福島体制」の継続は決まったものの、大椿氏も決選投票で一定の支持を集めており、党内に福島氏への批判と不満が根強くあることを露呈する結果となった。
3月4日に告示された社民党党首選には、福島氏と大椿氏のほか、副党首のラサール石井参院議員の3人が立候補した。23日の開票結果は、有効投票4140票のうち、福島氏が1876票を得てトップに立ち、大椿氏1297票、ラサール石井氏967票と続いた。だが、福島氏は当選に必要な有効投票の過半数には至らず、2位の大椿氏との決選投票となった。
決選投票は、1996年に旧社会党から党名変更後、初めての事態だった。福島氏は、周辺に「圧倒的な票差で勝利したい」と話していただけに、党内には衝撃が広がったという。
だが、その後の展開は、社民党のガバナンス能力を疑わせることが相次いだ。
■福島瑞穂氏の理解に苦しむ「ダブスタ」
まず問題となったのが、決選投票までの期間中、福島氏と大椿氏による公開討論会が一度も行われなかったことだった。最初の選挙期間中は、東京・新宿駅前などで立候補した3人がマイクを握り、それぞれが党改革ビジョンなどを訴える場面があった。しかし、決選投票が決まると、福島氏は「もともと決まっていた日程が詰まっている」と述べて、早々に公開討論会には否定的な考えを示した。
大椿氏は「社民党の政策を広く知ってもらう機会だ」と、福島氏や党本部に公開討論会の開催を求めたが、最後まで応じないままだった。
国政選挙の際に行われる日本記者クラブ主催の党首討論会では、社民党は所属する国会議員が5人以上という参加基準を満たしていないとの理由で、招かれていない。
それに対して福島氏は「民主主義の危機を招く行為だ」と抗議していた。その一方、社民党党首選の決選投票で、政策を広く訴える機会を自ら否定したのは、まったく理解に苦しむと言うしかない。
さらに混迷ぶりを露呈したのが、福島氏が当選した後の記者会見だった。
■なぜか大椿氏の発言を拒否
決選投票で、福島氏は2364票を獲得して当選したものの、大椿氏も1792票を獲得。得票率は「57:43」で、決して福島氏が圧勝したとは言えない結果だった。それだけに、福島氏が今後、どうやって党内融和を図っていくかが課題となっていた。
会見で私は「大椿氏への票は、福島氏への批判票と受け止められる。今後、どういった党運営を行っていくのか」と福島氏に質問した。だが、その答えは「党の役員人事については、まだ全く白紙」「党を変えてほしいという声があることは認識している。その声を聞きながら改革に努めたい」などとはぐらかし、抽象的なものに終始した。他社の記者からも同様の質問が相次いだが、自身のこれまでの党運営に対する反省点など、踏み込んだ発言は聞かれなかった。
その後、記者会見は予期せぬ方向で紛糾した。

記者会見の場には大椿氏とラサール石井氏も同席していたが、記者が大椿氏に敗戦の弁を求めたのに対し、司会を務めていた社民党本部職員の男性が「これは新党首の会見なので、党首への質問に限るように」と一蹴。大椿氏が「候補者を平等に扱うべきでは」と抗議すると、司会者は「ちょっと静かにして」と遮った。大椿氏は「ひどい」と声を上げて退席し、記者会見の場は一時騒然となった。
■日大アメフト部の会見と同じひどさ
こうした状況の中、福島氏は「今日は私の就任会見なので、私がお答えしたい」と述べるだけで、大椿氏の発言制止を追認する態度を示した。記者からは「自民党の総裁選でも敗者の弁はあり、候補者が手を取り合う場面もある。こういうやり方は良くない」と問題視する声も上がったが、福島氏は反応を示さなかった。
この光景を見ていて頭をよぎったのは、2018年に日本大学アメリカンフットボール部の悪質な反則問題が起きた際、日大側が開いた記者会見の模様だ。そこでも広報部所属の司会者が、質問する記者に対し「やめてください、打ち切りますよ、会見!」「これで会見を打ち切ります」と威圧的な発言を何度も繰り返し、報道陣と対立した。これによって、日大の自浄能力が欠けていることを如実に示すこととなった。
今回の記者会見での対応は、社民党が長年抱えてきた「内向きの論理」と「外向きの発信力の欠如」という問題点が浮き彫りになったと言えるだろう。
福島氏は、4月8日に行われた定例記者会見で、大椿氏らに発言機会を与えなかった対応を「配慮が足りなかった」と陳謝した。その一方で福島氏は「(記者会見の進行は)全て党首選挙実施本部が決めた。
私が口を出す話ではない」とも述べ、発言制止に自らは関わっていないことを強調している。しかし、大椿氏は実施本部長が3人で会見するよう福島氏に働きかけていたと反論しており、対立が解消する気配は全くない。
■内紛の発端となった「沖縄2区」の“自殺点”
6日の記者会見後、退出した大椿氏に話を聞くと、決選投票で公開討論会が一度も開かれなかったことについて「福島さんが逃げたと思っている」と明言した。では、福島氏は何から逃げようとしたのだろうか。その主な一つが、前回の衆院選での沖縄2区を巡る対応についての議論だ。
沖縄2区では、社民党唯一の衆院議員だった新垣邦男氏が離党後、中道改革連合から立候補したのに対し、社民党は対抗馬として元衆院議員の瑞慶覧長敏氏を擁立。米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設に反対する勢力「オール沖縄」の分裂選となり、新垣氏と瑞慶覧氏はいずれも落選、自民候補が当選する結果となった。
新垣氏と瑞慶覧氏の得票数を単純に足せば自民候補を上回っただけに、福島氏の対応に疑問の声が上がった。大椿氏は瑞慶覧氏の擁立を公然と批判し、服部良一幹事長から「反党行為」と糾弾され、副党首を辞任した経緯がある。それでも大椿氏は自らの主張を変えることなく、福島氏と真っ向から対立することとなった。
沖縄では、社民党の候補者擁立に反発の声が強く、地方議員の離党も相次いだ。社民党は決選投票での各都道府県の投票結果を公表していないが、関係者から入手した資料によると、沖縄県では有効投票数65票のうち大椿氏が44票で、福島氏の21票を2倍以上上回っている。

■「このままでは存続できない」
今後は、福島氏が社民党の執行部人事で大椿氏をどう処遇するかが焦点となる。大椿氏は、幹部ポスト就任の打診があった場合、「受けるかどうかは、沖縄2区の問題に関する検証委員会の設置が条件」と述べている。福島氏は、瑞慶覧氏擁立の判断に間違いはなかったとの考えを強調しており、着地点を見つけるのは現状では困難だ。
大椿氏は、より根本的な問題として後継者育成の欠如を挙げる。福島氏が自身の後継者を党内で育ててこなかったとし「次を誰に託すかを考えていない指導者のいる組織は、存続できない」と語った。「社民党の理念は、この社会において必要だ」としながらも、今回の党首選を巡る動きで「ともに頑張ろうという意欲を失った支持者も少なくないのではないか」と指摘。「このままでは存続できない」と言い切った。
4月28、29日には党大会が開かれ、福島氏が党首として正式に就任する。だが、各都道府県の組織には大椿氏を支持するところもあり、沖縄2区問題を含めて、福島氏の対応を批判する意見が噴出する可能性もある。
「社民党リブート(再起動)」を掲げる福島氏が、いかにその言葉に実効性を持たせることができるのか。抱えている課題は、あまりに大きい。

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佐藤 大介(さとう・だいすけ)

共同通信社 編集委員兼論説委員

1972年、北海道生まれ。
明治学院大学法学部卒業後、毎日新聞社を経て2002年に共同通信社に入社。韓国・延世大学に1年間の社命留学後、09年3月から11年末までソウル特派員。帰国後、特別報道室や経済部(経済産業省担当)などを経て、16年9月から20年5月までニューデリー特派員。21年5月より現職。著書に『13億人のトイレ 下から見た経済大国インド』(角川新書)、『オーディション社会 韓国』(新潮新書)、『ルポ死刑』『韓国・国家情報院』(ともに幻冬舎新書)などがある。

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(共同通信社 編集委員兼論説委員 佐藤 大介)
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