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研究の背景
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蚊はデング熱や日本脳炎などの感染症を媒介することで知られており、その生態を様々な観点から理解することは、蚊から身を守るうえで非常に重要です。蚊は、暗い部屋の中でも360度目がついているかのように飛び、なかなか捕まえられません。実験的にも、蚊が暗闇で周囲の障害物を避けて飛ぶことが観察されていましたが、その科学的なメカニズムについては、これまで未解明のままでした。
一方で、蚊の触角の根元にはジョンストン器官(図2)と呼ばれる特殊な器官があり、11nm あるいは10のマイナス7乗m/s の空気の振動によって生じる0.005°の触角のふれに反応できるとの報告がなされています。これは、わずかな空気の流れも読み取ることができる「超高感度センサー」が、蚊の身体に備わっていることを示しています。
研究成果
今回、本研究チームは、蚊が真っ暗な環境でも障害物を避けて飛行できているのは、身体に備わる「超高感度センサー」によって、自らの羽ばたきで引き起こされた気流のひずみを検知しているのではないかと仮説を立てました。中田助教は、これまでにも高速度カメラによる3次元運動測定とシミュレーションによって、蚊の飛行メカニズムを明らかにしています。今回は、研究チームの先行研究データを利用し、数値計算で蚊の羽ばたきによって生じる気流を再現し、壁や床の存在による触角付近の気流の変動を調べました(図1)。
その結果、蚊の触角の感度であれば、わずか4mmほどの体長の蚊が、体長の10倍近い距離である約30~40mm離れた場所の気流の変動を感知し、壁や床などの障害物を検知できる可能性があることがわかりました。メスの蚊は、水面から20~70mm離れたところから、水中に卵を産み落とすことが知られていますが、今回の研究でのシミュレーション結果は、その知見とも一致していました。この知見をもとに、国際研究チームの研究者らが、ドローンを使ってプロペラが起こす気流の変動検知の機能を評価したところ、蚊と同様に壁や床が検知できることが実証されました。
今後の展望
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本論文の筆頭著者の一人である中田敏是助教は次のように述べています。「今回、自らの羽ばたきによる気流を使って障害物を回避する蚊の特性を示すことができました。これにより、蚊を寄せ付けない新しい手法の開発につながることが期待できます。また、こうした蚊の飛行特性に関する知見は、千葉大学の劉浩教授が開発したシミュレータによる検証で得られたことです。今後は同シミュレーターを活用し、他の飛行機能をもつ生物と比較しながら、より詳細な蚊の飛行特性の解明を進める予定です」
論文情報
Aerodynamic imaging by mosquitoes inspires a surface detector for autonomous flying vehicles,
Toshiyuki Nakata, Nathan Phillips, Patrício Simões, Ian J Russell, Jorn A Cheney, Simon M Walker,
Richard J Bomphrey, Science,
DOI:https://science.sciencemag.org/cgi/doi/10.1126/science.aaz9634
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