そう問われて、すらすら答えられる人は、どれだけいるだろうか。何年も成果を上げてきたのに、いざ言語化しようとすると、途端に言葉に詰まる。
採用担当者も同じ課題を抱えているケースは少なくない。スキルが本当に合っているかどうか、選考の最終局面でフィーリングに頼らざるを得ない場面も多くある。 そして入社後にミスマッチが表面化し、誰も望んでいない結果につながってしまう——採用・転職支援の現場に向き合い続けてきたからこそ、そういった話を耳にすることは少なくなかった。
SQiL Career Agentが開発したSales PRO-FIT™(セールス・プロフィット)は、その「なんとなく」に輪郭を与えるために生まれた。営業職を124種類に細分化し、10の営業スキル(Sales Skills)と7つの行動特性(Sales OS)を共通言語として、求職者と企業を同じロジックで可視化する。——誰も踏み込んでこなかった未知の領域への挑戦。その裏側を、事業オーナー・武 拓矢が語る。
「営業力って、何ですか?」 誰も答えを持っていなかった
インタビューの冒頭、武にこう問いかけた。「営業スキルの言語化が難しいと言われますが、なぜだと思いますか?」彼はしばらく間を置いてから、こう答えた。——求職者と企業の間に、どんな「すれ違い」を感じてきましたか?
武:
営業スキルには、業界共通の基準がないんです。採用する側も、「大卒・法人営業経験3年以上」といった目に見えやすい条件で判断しがちです。その先の部分——本当にこの人が自社で活躍できるのか、チームに馴染めるのかは、最終的にフィーリングに頼らざるを得ない。
——それは求職者側にも同じことが起きていたのですか?
武:
求職者も同じで、自分の営業スキルや強みを言語化できていないケースがほとんどです。「なんとなくこういうことが得意です」と言えても「それは具体的にどういうことですか?」と深掘りされると言葉が出てこない。なぜかといえば、そもそも基準がないから。何をもって自分の強みとするのかの物差しがないまま、ふわっとした言葉で自己表現するしかない状況なんです。
そして企業が見えやすい条件だけで判断し、求職者も自分を正確に伝えられないまま入社が決まる。入社後に「なんか違う」「思っていた仕事と違う」となって、モチベーションが上がらなかったり、成果が出なかったりする。その原因が何なのかも双方わからないまま、ミスマッチだけが積み重なっていく。そういう現場を何度も見てきました。
武のこの問題意識は、今の仕事に就く以前から徐々に深まっていた。 前職でスポーツ選手のセカンドキャリア支援に携わっていた当時から、「これまでの経験で培った能力を、ビジネスの言葉に翻訳して可視化できないか」という構想を持っていたという。
武:
能力を可視化するというイメージに最も近かったのが、スポーツゲームのステータス画面でした。パワーや走力、技術などの要素に分けてチャートや数値で表すことで、それぞれの特徴が一目でわかり、どの選手を起用するかという判断軸もはっきりする。 同じように、営業スキルをチャートとして可視化できれば、その人がどんな営業スタイルに向いていて、どんな強みを持っているのかが伝わるはずだと思っていました。
前職でアスリートのセカンドキャリア支援をしていた当時、スポーツで培ってきた能力を仕事で活かせるスキルへ変換することは、決して容易ではありませんでした。ただ、必ず活かせる何かがあるはずという確信は常にあって、これはスポーツに限った話ではないとも思っていました。 接客や事務職、エンジニアなど、どんな仕事で積み上げてきた経験であっても、営業スキルと本質的につながっている部分は必ずある。営業スキルはポータブルスキルですから、これまでの経験を可視化することで『自分の経験は、営業でいうとこういうことに活かせる』という変換ができるはずだと、ずっと確信していました。Sales PRO-FIT™は、その構想をようやく形にできたサービスです。
「想い」だけでは足りなかった PVMと、具体的な「武器」の必要性
SQiL Career Agentは先日、新しいPVM(Purpose・Vision・Mission)を策定した。Purpose「働くに、希望を。」、Mission「転職をゴールにしない」——その言葉が生まれた背景には、想いを現場で体現するための具体的な仕組みへの強い問題意識があった。
——PVMを策定する中で、「具体的な仕組み(プロダクト)が必要だ」と思い至ったターニングポイントは何でしたか?
武:
PVMを言葉にすることで、私たちが向かう方向性は示せます。ただ、ミッションを掲げるだけでは、目の前の求職者や企業の方々への支援は変わらない。アドバイザーが面談を通じて一人ひとりのスキルや価値観を言語化していくことはできます。
必要なのは、求職者の強みと企業が求める要件を、同じ軸・同じ粒度で可視化し、共通言語として比較できる仕組みだと感じました。スキルをチャートとして捉え、双方が同じ定義のもとで対話できる土台を作ること——それがSales PRO-FIT™へ取り組もうと決めた一番のきっかけです。
——サービス名「Sales PRO-FIT™」に込めた意味を教えてください。
武:
3つの言葉が重なっています。まず「PRO」プロフェッショナルとして介在するということ、そして「PROFILE」、つまり表面の経歴だけでは見えない部分を丁寧に見ていくという意味があります。「FIT」は、営業スキル(Sales Skills)と行動特性(Sales OS)の両軸で、求職者と企業をフィッティングしていくということです。
さらに「PROFIT」には、単なる利益という意味を超えた思いを込めています。求職者も企業も、このサービスを通じて「本当に実現したかった未来——成果や成長」へと辿り着いてほしい。そのBenefitを双方に届けられるサービスでありたいという思いが、この名前に込められています。
定義づけに向き合った日々 「感覚」を「データ」に変えるまで
Sales PRO-FIT™の立ち上げにおいて、最も時間を要したのが「定義づけ」の作業だった。AIを活用しながらも、積み重ねてきた現場の知見を丁寧に言語化していくことが、このサービスの根幹を形成している。——124種類の営業職分類、10項目のスキル、7項目のOS——どのように作り上げたのですか?
武:
まずAIのディープリサーチ機能を活用して、国内外の文献から営業職の種類を網羅的に洗い出しました。
この定義づけの土台となっているのは、セレブリックスが1,400社・12,700件超の営業支援を通じて積み上げてきたデータと知見、そして私自身がキャリアアドバイザーとして10年現場で培ってきた経験です。どの企業がどのような人材を必要とし、求職者がどこでつまづくのか、そうした現場感覚があるからこそ、どの営業スタイルにも偏らない共通の物差しを作ることができました。
——定義づけの過程で、特に難しかった点はどこでしたか?
武:
最も難しかったのは、すべての営業スタイルをカバーできる10項目への絞り込みです。最初は8項目で設計していたのですが、既存営業のアップセルやクロスセルに関わるスキルが十分に表現できず、試行錯誤の末に10項目へと整理しました。この定義が本当に正しいのかという問いは、600件超のPoC(Proof of Concept) を通じた検証を経て、ようやく確信へと変わりました。PoCにご協力いただいた方々から「これまで曖昧だった部分に根拠が持てる」「転職活動のとき、このツールがあればよかった」という声をいただき、大きな支えになりました。
また、想定していなかった反応もありました。アンケートに回答するプロセス自体が「自分の現在地がわかった」という体験になっていたのです。124種類の営業職と各職種ごとのSales Skills・Sales OSを突き詰めて設計したからこそ、回答することそのものに意味が生まれていた。これは、私たちにとっても大きな気づきでした。
スコアの先にある対話——セールスバイタルシート™が生む「共通言語」の力
セールスバイタルシート™が真に提供するのは、求職者・企業・アドバイザーが「同じ言葉で話せる場」だと、武は言う。可視化されたデータをもとに、人が丁寧に介在することで初めてマッチングの精度が高まる——それがこのサービスの本質だ。——セールスバイタルシート™は、具体的にどのように活用するものなのですか?
武:
セールスバイタルシート™の価値は、求職者の方・企業の方・私たちアドバイザーが「同じ言葉、同じ定義」で話せるようになるところにあります。たとえば、求職者の方が「提案力があります」と表現しても、企業の方が思い描く「提案力」とは異なる場合があります。セールスバイタルシート™があることで、「提案力」というこれまで人によって解釈が異なっていた言葉を、同じ粒度の共通言語として抽象化し、求職者と企業が対等に比較・対話できる状態が生まれます。
だからこそアドバイザーは「このスキルは、具体的にどのような場面で発揮されましたか?」と深掘りができる。その対話を通じて、アンケートの回答だけでは見えていなかった強みが引き出され、その方だけのセールスバイタルシート™に仕上がっていくのです。
企業の採用要件についても同様で、セールスバイタルシート™をもとにアドバイザーが対話することで、これまで感覚的に捉えていた要件が共通言語へと整理されていきます。スコアはあくまで対話の起点であり、人が介在することで初めてマッチングの精度が高まります。
セールスバイタルシート™のサンプル
転職を「点」で終わらせない 人生の伴走者へ
Sales PRO-FIT™が目指すのは、単なるマッチング精度の向上ではない。採用と転職の在り方そのものを変え、営業キャリアに関わるすべての人の伴走者になること——武はその実現を見据えている。——Sales PRO-FIT™を通じて、どのような未来を描いていますか?
武:
企業は感覚的な採用から根拠のある採用へ、求職者の方は漠然とした自己表現から「だから私はこの企業に合う」と自信を持って言える状態へ。そして私たちアドバイザーも、セールスバイタルシート™をもとに丁寧にすり合わせを重ね、求職者の方の現状とキャリアの方向性を深く理解したうえで企業への打診ができるようになります。
転職支援は、転職が決まったら終わりという「点」のサービスがほとんどです。しかしキャリアは続いていく「線」ですから、Sales PRO-FIT™はその起点でありたいと考えています。将来的には入社後の育成・活躍支援にも展開していきたい。転職エージェントという枠を超えて、営業に関わるすべての方の伴走者になることが、私たちの目指す場所です。
——最後に、キャリアや採用の言語化に悩んでいる方へメッセージをお願いします。
武:
言語化の前に必要なのは、まず可視化だと思っています。セールスバイタルシート™に回答することで、漠然としていた自分のスキルや強みに輪郭が生まれます。その可視化をもとにアドバイザーと一緒にすり合わせをしていくことで、「自分はこういう強みを持っていて、だからこの企業・このポジションが合う」という言葉が初めて生まれてきます。まずは現在地を知ることから、一緒に始めていきましょう。
「キャリアは点じゃなくて、線だ」武が何度も口にしたこの言葉が、Sales PRO-FIT™誕生のすべてを語っている。124種類の定義も、定義づけに向き合い続けた日々も、すべてはその「線」を可視化するためにあった。営業職のミスマッチをなくし、「働くに、希望を。」を現実にする——その挑戦は、まだ始まったばかりだ。