ローランズが提供する「Team Blossom障害者自社雇用サポートプラン」は、花の栽培・加工という専門業務を通じ、障害者の特性や強みを活かした雇用を、企業と福祉事業所がタッグを組んで実現する仕組みです。
雇用主は企業(例:PR TIMES)ですが、障害者スタッフの勤務は雇用主とローランズの2拠点で行われ、担当した業務内容は企業の成果物として活用します。障害者スタッフにとっては、企業と直接雇用契約を結び、安定した収入と福利厚生を得られるだけでなく、働く障害者へのサポートをローランズから受けることで、安心して働くことができることがメリットです。
このプランでは、障害者スタッフが活躍できる業務設計、技術指導、第2の就業場所の提供、就労サポートまで、ローランズが一貫して行います。企業単独では難しい障害者雇用の拡大を支え、スタッフの能力が発揮され定着する職場づくりをサポートします。
PR TIMES様は、ローランズの理念である「みんなみんなみんな咲け。」に共感いただき、花の栽培に携わる障害当事者と、花束製作・装飾に携わる障害当事者の方を、直接雇用されました。
社員が花を自ら育て、アレンジした花を社内外の大切な方へ贈るという、新しい形の障害者雇用について、株式会社ローランズの代表取締役 福寿が、株式会社PR TIMESの労務担当 井口氏にお話を伺いました。
(インタビュー実施日:2025年5月12日)
写真左:株式会社ローランズ 代表取締役 福寿満希
写真右:株式会社PR TIMES 労務グループ 井口京子様
障害者雇用は数字合わせじゃない──PR TIMESが目指した「組織と人の成長につながる障害者雇用」
福寿:PR TIMES様が障害者雇用に取り組まれたきっかけや、取り組みを通じて感じた課題を教えていただけますか?井口:障害者雇用に取り組むきっかけとなったのは、障害者の雇用義務と、段階的に引き上げられる法定雇用率を満たすためでした。採用活動を始めた当初は障害者雇用というものを具体的にイメージできていなかったこともあり、まずは障害者の方にお願いする業務の洗い出しから始めました。
福寿:当時は、どんな業務を想定されていたのでしょうか?
井口:事務用品の発注や、社内にあるカフェコーナーでのお茶出しなどを想定していました。そのような業務を通じて社員とのつながりも持てるのでは、と思ったんです。
あとは情報収集をするため、ハローワークや人材紹介会社に話を聞いたり、訓練施設を見学したりしました。あと、農園のサテライト事業をやっている会社にも話を聞きに行きましたね。
福寿:当社と出会う前から情報収集をされていたんですね。

PR TIMESのミッションは「行動者発の情報が、人の心を揺さぶる時代へ」。主力サービスのPRプラットフォーム「PR TIMES」は国内シェアNo.1、累計200万件超のプレスリリースを配信するプラットフォームに成長。
井口:はい。でも、障害者雇用の実態を知れば知るほど「本当にこの方がやりたい仕事なのかな?」「やりたい仕事をこちらが提案できるのかな?」と思うようになってしまって。
また、当社のミッションは「行動者発の情報が、人の心を揺さぶる時代へ」なのですが、「この仕事で(当事者の方が)本当に行動者になれるのかな?」とも思いました。
福寿:一緒に働く障害当事者の立場になったときに、それが本当に“幸せな働き方”になるかどうか、というところですよね。
井口:そうなんです。当時は「本当にこれでいいのかな?」という気持ちが消えなくて。社員として迎える以上、当社のミッション・バリューを実現できる働き方で、その方が本当にやりたいと思える仕事を任せたいし、PR TIMESの社員とのつながりも持ってほしいと思っていました。
福寿:PR TIMES様が障害者雇用に取り組まれた際は、行政から「障害者雇用をしてください」とお知らせがあったのでしょうか?
井口:いえ、そういうわけではないのですが、2024年4月に法定雇用率が引き上げられた関係で、「あと2人足りない」という状況になっていて。でも、ただ数合わせで雇うわけにはいかないし、組織の成長にもつながる形で取り組まなければ意味がないと思っていました。
福寿:短期決戦で急いで動いたというよりも、積み上げてきた問題意識がある中で、「いよいよ本気で動こう」というタイミングだったんですね。
井口:はい。また、PR TIMESのスタッフの中には、PR TIMESに入社する前に特別支援学校の教員をしていた者がいることもあり「(障害者雇用を)やらなければ」という想いはずっとあって。障害者雇用を特別なものにするのではなく、いわゆる一般の採用と同じように、組織と事業の成長につながる採用にするんだと、強く思っていました。
福祉事業所との連携が突破口に──ローランズとの協業がもたらした転機

福寿:井口さんが「本気で動こう」と決めた頃に、私たちローランズとのご縁ができたんですよね。
井口:そうなんです。ちょうど情報収集が一通り終わって、「これからどうしようかな」と思っているときに、他の社員から「ローランズさんって知っていますか?」と声をかけられて。
福寿:タイミングが本当にぴったりだったんですね。

井口:そうなんですよ。お花屋さんで、従業員の7割の方が障害や難病と向き合いながら働かれていると伺いました。
「Team Blossom障害者自社雇用サポートプラン」では、採用前の相談、業務の設計、花の栽培やアレンジに必要な技術指導、日々の就業サポート、成果物の提供や社内活用のアイデアまで、ローランズが包括的に伴走してくれると知り、「自社単独では難しい部分を、プロと一緒に一歩踏み出すことができるのでは」と感じたんです。
すぐにローランズさんのホームページを見たのですが、「排除なく、誰もが花咲く社会(※)」という理念が目に飛び込んできて、「これだ!」と。その瞬間、「今すぐにでも会いに行きたい!」って思いました(笑)
すぐに当社からローランズさんにご連絡して、返信をいただいたときには「これで何かできるに違いない!」と確信していました。
※現在のミッション・ステートメントは「みんなみんなみんな咲け」に変更
ローランズファームで生まれた「花と人がつなぐ新しい雇用のかたち」
福寿:ローランズ原宿店でお会いした際に、障害者雇用に関するアイディアを提案してくださいましたよね。
井口:はい。福寿さんから「横須賀に、ローランズで活用するフラワーを育てる『ローランズファーム』がオープンする」と伺って、それならばと思って。「PR TIMESはお花を使う機会が多いので、収穫したお花を社内の花束に使うのはどうでしょうか?」と提案させていただきました。


ローランズファーム横須賀では、ローランズのフラワーアレンジメントに活用する花を自社で栽培。真夏には一面のひまわりがファームを埋め尽くす。
福寿:PR TIMES様がお客様の上場や社長就任などでお祝いのスタンド花をよく出されているのは知っていたのですが、社内でもお花を贈る習慣があったことは、私たちも知りませんでした。
井口:当社では新卒入社式や中途入社式、誕生会などで花束贈呈をしているのですが、福寿さんのお話を聞いているうちに「ファームで育てたお花を、花束やスタンド花に使えたら素敵だな」と思いました。
障害者の方からしても、贈る相手の顔は見えなくても「自分が誰かのために働いている」「人とつながっている」という感覚が持てるのでは、と思ったんです。

当月生まれの社員を主役に誕生日を祝う社内イベント 「It’s You」開催の様子
福寿:本当にそうですね。自分で育てたり、アレンジメントした花がちゃんと「使われている」「喜ばれている」と感じられるのは、障害当事者のやりがいになると思います。
井口:実際にファームを見学させていただいた際も、みなさん本当にいきいきと働かれていて。
それもあって、お花を育ててもらうフラワーファーマーと、収穫したお花のアレンジをしてくださるフローリストの2名を直接雇用したいなと思いました。
福寿:ありがとうございます。井口さんからのご提案が、そのまま今の仕組みに直結しましたよね。栽培スタッフとフローリスト、それぞれの役割があって、きちんと社内で活用されるサイクルができていて、すばらしいと思います。
井口:あのとき、「どうかな、こんなこと言って困らせないかな」と不安もあったんですが、福寿さんが「そのアイディア、いいですね」って即答してくださって本当に嬉しかったです。「これでやっと、ちゃんと進める気がする」って心から思えた瞬間でした。
社内に笑顔を広げる“特別じゃない”働き方~スタッフから花の企画提案、場所は離れていても、心は【花】でつながっている
福寿:その後、両社でのミーティングを経て障害者雇用が始まりましたね。雇用スタート時のプレスリリース(PR TIMES発信)はこちら
井口:2名の採用が決まって、「ようやくスタート地点に立てたな、ここからが始まりだな」と思いました。入社されたのは11月だったのですが、すでにファームでマリーゴールドを育てていらっしゃったので、12月には収穫ができて。
それを花束にアレンジしてもらって、PR TIMESの中途入社式で渡すことができました。その様子を見た社員から歓声が上がって、とても嬉しく思ったのを今でも覚えています。

ローランズファームで花の育成を担当する、PR TIMES社員
福寿:そういった反応があると、障害当事者の方にとってもやりがいになりますよね。
井口:そうですね。横須賀のファームに所属されている栽培スタッフさんはとにかく発信が得意で、チャットで「ひまわりの種まきをしました」「ダリアの植え替えをしました」って頻繁に報告してくれますし、本社に出社するときには、ファームの様子をノートにも記録してくれるんです。絵も上手で、「次にどんな花を育ててほしいか」をイラストにしてくれたり。

栽培スタッフがPR TIMES社内のチャットに投稿した、ファームの様子

PR TIMESのフラワーを育てているエリア

ローランズファーム所属のPR TIMES社員が、どんな花がほしいかアンケートを行ったときのノート。花の名前と花言葉も記載されている。

花ができるまでのプロセスを記載したノート
福寿:それが「お花総選挙」につながったんですね。
井口:はい。栽培スタッフさんの提案で、社員に「どの花がいいですか?」と投票してもらいました。フローリストさんとも連携して、チャット上で打ち合わせして「花言葉を添えたメッセージカードをスタンド花に付けたい」なんてアイディアも生まれて。
福寿:そうやって仕事の中で自分の考えが反映されるって、すばらしいことですよね。
井口:3人で「どの花が育てやすいか」「花束を製作した場合の見栄えはどうか」なんて話しながら、今後のスケジュールを決めています。
福寿:そういう積み重ねが、きっと自然な関係を育てていったんでしょうね。
井口:はい。初めて会った時は2人ともとても緊張していたんですけど、チャットに「お会いできて嬉しかったです」と書いてくれて、涙が出るほど嬉しかったです。仲間になれて本当に良かったなって。
当社の社長である山口も、お花が好きなんです。2人と山口が初めて会ったときにも「このお花の花言葉は何ですか?」などと話していて、本当に良かったなって。
あと、花束をもらった社員が別の女性社員にやり方を聞いて、ドライフラワーにしてくれたこともありました。「井口さん、いただいた花束をドライフラワーにしたんです」って見せてくれて。それもとても嬉しかったですね。

PR TIMES社員がドライフラワー化したお花

2024年度入社 新卒入社式の様子
福寿:障害者福祉事業所の仕事ではなかなか経験できなかったことが、障害当事者の方々にとって新しい経験になっていますよね。それがチャットからも伝わってきて、私も本当に嬉しいです。PR TIMES様のみなさんが障害当事者の一人一人としっかり向き合ってくださっていることが分かります。
井口:ありがとうございます。
福寿:PR TIMES様には社員に名刺もご用意いただき、スタッフも「名刺を持つことが夢だったんです」と喜んでいました。

ファーム担当者の名刺
社内に根付いたのは、“障害者雇用”ではなく“仲間の存在”
井口:私たちも嬉しいです。フローリストさんには社員の中で固定ファンがついているんです。違うお花だと「今日のお花はいつもの方のじゃないですよね?」って聞かれたりします(笑)福寿:すごいですね。それだけフローリストさんの仕事が、ちゃんと社内に浸透しているっていうことですよね。
井口:そう思います。「障害者雇用で作られたお花」っていうよりも、「フローリストさんのお花」っていう感じで。特別視されていない、それが本当に良かったなと思っています。
福寿:障害者雇用が始まったことで、社内にあった「障害者雇用は難しいよね」という感覚や、障害者雇用に対する意識の変化はありましたか?
井口:ありましたね。というより、あまり“特別”と捉えてないんじゃないかと思います。2人がいることで社員のつながりも広がっていて。先ほどのドライフラワーの件も、多分もともとはあまり接点がない社員同士だったと思うのですが、この取り組みのおかげで会話が生まれたりとか。
福寿:そういう小さな交流が、自然と雇用の質を高めていきますよね。
井口:はい。「この取り組み、誇らしいです」と言ってくれる社員もいて。お客さまに話してくれる人もいるくらいです。
福寿:それはすばらしいですね。最初から「障害者雇用は特別」ではなく、「一緒に働く仲間」として始められたのが大きかったのかもしれませんね。
井口:本当にそう思います。ローランズさんのように、寄り添ってくれるパートナーがいたからこそ、私たちも変に構えることなくスタートできました。
福寿:そのように言っていただけると嬉しいです。ありがとうございます。
共同雇用が生んだ好循環と、PR TIMESが見据える今後の展望
福寿:精神障害のある方が1年以上働き続けられるのは全国平均で見ると50%を切っているんです。そういう中で、PR TIMES様の取り組みは本当に貴重な事例になっていると思います。※出典:障害者職業総合センター「障害者の就業状況等に関する調査研究」
井口:ありがとうございます。でも、当社だけでこの仕組みをゼロから構築するのは、正直難しかったと思います。ローランズさんにご提案いただいたり、細やかなサポートをいただいたりしているからこそ、今の形があるんだと実感しています。
福寿:今後、2人に続いてさらに障害者雇用の人数が増えていく可能性もあるかと思うのですが、何か新しい取り組みは考えられていますか?
井口:そうですね……。実はまだ構想段階なのですが、「花束やスタンド花以外の取り組みもできないかな」と考えています。
福寿:たとえば、どんなことですか?
井口: 出産祝い用のギフトで、おむつでできた「ダイパーケーキ」というものがあるんですが、それにドライフラワーが使われることが多いんです。当社には若い社員が多いので、出産のお祝いとして社内でも活用できたらいいなと思っています。
福寿:おむつと装飾品が用意できれば、お花はもうあるので実現できそうですよね。
井口:はい。そういう“社内や社外で使えるもの”を、雇用を通して作っていけたらいいなと考えています。
「障害者雇用」ではなく「一緒に働く仲間」として迎えるために

福寿:障害者雇用が必要とされている企業のうち、実際に取り組めているのは半数ほどとも言われています。まさに、ご縁をいただく前のPR TIMES様のように、最初の一歩に悩まれている企業も多いかと思います。そういった企業に向けて、何かメッセージをいただけますか?
井口:そうですね……。まず、「一人で完結させようとしないこと」が大事だと思います。私たちにとってはローランズさんの存在がとても大きくて、プロフェッショナルに頼ることで視界がクリアになりました。
福寿:障害者雇用の準備を進める段階から、一緒に考えるパートナーを持つということですね。
井口:はい。最初は誰でも足踏みしてしまうと思うんです。でも、誰かの力を借りてその一歩を踏み出すことで、道が拓けることもある。私もまさにそうでした。
福寿:私たちも企業さんからお問い合わせをいただく際、たとえば「法定雇用率を満たすために10人採用したい」といった数字の話だけで終わってしまうことがあります。もちろんそれが悪いわけではないですが、「その10人が幸せに働けるのか」という本質の部分も一緒に見ていきたいんです。
障害者雇用って、数字を満たすためのカウントとして扱われがちで。数字が先行することが多いので、PR TIMES様のように「そこで働く人」という大事なところを見て取り組んでいただける企業があるのは、この業界にいる身としてとても嬉しく思います。
井口:ありがとうございます。私たちも最初は「あと2人雇わなければ」と、数字から始まった部分もありました。でも、そこから一歩立ち止まって、「この人が本当にやりたい仕事なのか」「その力を発揮できる場になっているのか」を考えるようになりました。
今回私たちが障害者雇用を通じて得たのは、数字の達成ではなくて、“人と人とのつながり”なんですよね。2人を通じて社員同士の関係も変わりました。
福寿:まさに理想的な循環だと思います。最初は「Team Blossom障害者自社雇用サポートプラン」のような共同雇用モデルからスタートして、いずれは自社単独でも継続して雇用ができるようにしていく。そんなモデルが広がっていくといいなと思っています。
本日は貴重なお時間をいただきありがとうございました。こうして丁寧に取り組まれている様子を、たくさんの企業さんにも知っていただきたいなと改めて思いました。
井口:こちらこそ、ありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願いします。

障害者雇用の最初の一歩を、ローランズと一緒に踏み出してみませんか?
「Team Blossom障害者自社雇用サポートプラン」についてのご相談は、ぜひお気軽にローランズまでお問い合わせください。
お問い合わせはこちら:info@lorans.jp / 03-4400-9430
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