株式会社RingsCareは、『病気や障害があっても一人ひとりの いのちの輝きを支え続ける』をパーパスに、高齢者向けに美整容ケアサービスを展開するベンチャーです。2016年に看護師だった代表の大平が起業し、2023年6月に法人化しました。


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RingsCare社は看護師、介護士、精神保健福祉士のメンバーで構成され、病と共に自分らしく生きることや尊厳ある死を迎えるため本人と家族に伴走し、他職種との連携を図ります。治療や疾患、加齢に伴い変化する”心”と“外見”にフォーカスし、ご自宅や施設に定期訪問する美整容ケアサービス(Rings Care®︎:リングスケア)を提供しています。

このストーリーでは『Rings Care®︎』の誕生の裏側について、代表の大平 智祉緒が語ります。

看護師から起業家へ。超高齢社会での「美とケア」を再定義する新たなサービス「Rings Care」誕生秘話


肉親の死を目の前にした時、人は無力だと痛感した学生時代

中学3年の頃、最愛の父に癌が見つかり、見つかった時はすでに末期の状態でした。どんどん弱っていく父の姿を目の前にして、当時はその現実と向き合えませんでした。父は余命宣告から1ヶ月半でこの世を去り、私は生まれて初めて経験する最愛の人の死を目の前に、何もできなかったという自責の念だけが残る結果となりました。人は自分の大切な人の弱っていく姿を直視できず、思わず目を背けてしまうのだという事実を身をもって体感しました。
“死”というものに対する漠然とした恐ろしさ、そしてその後の悲しみや寂しさ、行き場のない孤独感。しかし、いつかは必ず全ての人にその日がくる。それならば、大切な人を失う時に、少しでも後悔がのこらないようにするには・・・?そんなことを父の死後、一人で考えるようになりました。医療には限界があるけど、そばに寄り添う“ケア”ならきっとできることがあるはず。だから私は、ターミナルケア(人生の最終段階のケア)ができる看護師になろうと決意したのです。

看護とは。
医学とは何が違うのか。高齢者医療の現場で気づく新たなケアの必要性

ターミナルケアをやりたかった私は、高齢者の多い病院に就職しました。しかし、病院はやはり治療を行うところです。90歳、100歳近い患者さんであっても、ご本人の意識がなくても、当時はたくさんの点滴やモニターに繋がれながら治療をし続ける姿がありました。その姿からは元気な頃を想像しにくく、医療の力で「生かされ続ける」姿に生物学的な生命と、心理・社会的な「いのち」のあり方になんとなくモヤモヤする新人看護師時代でした。看護とは一体何なのだろう、医学とは何が違うのか、自分にできることは何だろうと悶々とする日々が過ぎていきました。


そんな時、ある急性骨髄性白血病の70代の女性患者さんとの出会いがありました。彼女は個室に入院していて、普段はとても物静かで自分のことを語るタイプではありませんでした。面会もほとんどなく、身寄りもいなかったため、彼女がどんな方なのか、いまいちつかめずにいました。病状が改善せず、最終的には病棟でお看取りとなったのですが、亡くなった後にご友人からいつもとてもきれいにしていた方だったことを聞きました。闘病中はそんな姿は全く想像もできないほど地味な印象の方だったので、驚きと申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。

看護領域では、亡くなった後に行うお化粧(エンゼルメイク)はありますが、生きているうちから患者さんに対してお化粧する事はありません。
しかし、治療や疾患を理由に外見に変化が表れることはよくあることですし、入院をきっかけに男女問わずこれまで当たり前にしてきた整容習慣をやめてしまう方が多いのも事実です。どんどん変化していく自分自身の外見と心とどのように向き合い、個室で一人、過ごしていたのだろう。人生の最期をそのように過ごさせてしまったことをとても後悔しました。私は患者さんの支えになりたいと思って看護師になったはずだったのに、いつの間にか治療を支える看護師になっていたことに気づきました。

そんな時に出会ったのが、メイクセラピー(化粧ケア)です。実習に来ていた看護学生が、認知症の女性患者さんにメイクセラピーだと言ってマニキュアをつけたのです。
それまで全く表情のなかった方に笑顔が戻りました。そのことをきっかけに、私は看護にメイクセラピーを活かせないかと考えるようになり、インターネットや書籍や学会誌で調べたり民間の資格を取得したりしました。しかし、当時医療現場での化粧ケアの前例は少なく、臨床で実践するのは簡単なことではありませんでした。結婚を機に病院を退職し、出産・育児を経験する中で、自分自身も化粧の力を感じるようになり、メイクセラピストとして起業をすることを決意しました。

看護師から起業家へ。超高齢社会での「美とケア」を再定義する新たなサービス「Rings Care」誕生秘話


初めは事業にはならず、ボランティアから始めました。しかし、実践をする中で、化粧には非常に広義な意味合いを含む言葉であり、化粧ケアといえどネイルケアやヘアケア、髭剃りや耳や鼻、口など、整容も含むケアであることがわかってきました。
そして、医療や介護が必要な方にとって“身なりを整える”というのは、単に外見がキレイになるだけではない大きな価値があることに気づきました。他者の“顔”に触れるという行為は、非常に密接な関係性が構築され、そこには目に見えない深い情動的交流があったのです。これは全人的なケアであることを実感しました。だからこそ、このケアを今まさに苦しみの中にいる方のもとに届けたい、「ベッドサイドでの継続的なケアがしたい!」と思うようになりました。どうにかこれを事業にできないのかと考え、試行錯誤の上、できあがったのが今のRings Care®︎の前身であるNursing&Beauty Careです。看護師が一人ひとりに伴走する“ケアとしての化粧”として、医療で取りきれない心理的・社会的・スピリチュアルな痛みを軽減する可能性があると思っていました。病と闘っている方々、そしてそれを支えるご家族にとっても希望の光となるケアだと感じたのです。

誰がサービスの対価を払うのか。「化粧ケア」の事業化は容易ではなかった

しかし、なかなか医療の中に入る隙もなく、そもそも誰がその対価を支払うのか、どのように当事者の方に届けるのかという壁にぶち当たりました。医療や介護を受ける当事者ご本人にご負担いただくのはおかしいのではないかと考える一方、医療・介護領域では“化粧”に払える財源的ゆとりはないと言われてしまいます。そもそも、“化粧”というと女性だけのものだとか、贅沢なものだと思われてしまうという障壁もありました。

本当は老若男女問わず、自分で整容行動が取れなくなっている方や精神的にも落ち込みが見られる方、生きる気力が低下している方に必要なケアなはずなのに、なかなか受け入れてもらえませんでした。もっと自然に、当たり前のようにこのケアが受けられる環境が必要なのだとずっと考えていました。

Rings Careというネーミングへの変更とそこに込めた想い

少しずつ私の想いに共感してくれる介護関係の方々とのつながりができ、お金を払ってでも受けたいと思われるケアにすること、そしてその価値を見える化することの大切さを知りました。女性のイメージの強い“化粧”や“美容”という言葉は控え、伝え方も変化させていきました。そして、このケアの本質である、人と人とがつながる温もりと共に成長していく“ケアリング”、外見が整うことにより周囲の人との輪が広がっていく“ring(輪)”を語源として、Rings Care(リングスケア)と命名しました。商標権を取得し、Rings Care®︎が社会のインフラになるようにと、会社名も『RingsCare』としました。

Rings Care®︎は、ご本人だけではなく、ご家族や現場スタッフにとっても幸せな気持ちになれるケアであることを意識しています。目の前の利用者さんは、ご家族にとって“大切な存在”であるということを決して忘れずに、ご家族には定期的に報告書を作成して提出したり、写真を送るようにしています。また、現場スタッフたちも常に利用者さんのその人らしさを探っているため、リングスケア中の様子や声かけのポイント、アセスメントの結果を必ず情報共有するように努めています。ケアに関わる全ての人の輪が繋がり、利用者さんの生活全体がより良い方向へ進んでいけるよう、対話を進め、和を奏でる意味も込められています。

看護師から起業家へ。超高齢社会での「美とケア」を再定義する新たなサービス「Rings Care」誕生秘話


しかし、今はまだ介護保険外の自費サービスなので、届けられる方には限りがあります。より多くの方に届けたいという気持ちが大きくて焦ることもありますが、ご契約をいただいた方には「あなたは、大切な存在です。だから、綺麗にさせてくださいね」と、どんな健康状態であっても、そんな想いが伝わるように、ご本人に声をかけ、笑いかけながら、ゆっくり丁寧に触れることを意識しています。

看護師から起業家へ。超高齢社会での「美とケア」を再定義する新たなサービス「Rings Care」誕生秘話


お話ができる方からは、

「あぁ、気持ちがいい。生きていて よかった」

「あなたに出会えた私は本当に、ラッキーよ」

「人生の最期に、こんな幸せが待っているだなんて思わなかった」

このようなたくさんの言葉をいただきます。

また、ご家族からは満足度95%以上をいただいており、90%以上の施設スタッフ様からも利用者さんの笑顔が増えたと回答していただいております。

そして、亡くなるその日までケアを継続させていただいた利用者さんからの以下の言葉は私に大きな勇気と力をくれました。

その方は慢性的な疾患を抱え、ずっと「つらい、つらい」と言っていた方でしたが、Rings Care®︎の導入により、穏やかさを取り戻していきました。

そして、

「あなたピッタリな “お仕事” ね、多くの人を幸せにできる、とっても素敵な "お仕事"ね。大平さんの優しさを、多くの方に届けてあげてね」と、私の手を握り、伝えてくれたこの言葉は今も私の心の支えになっています。

この言葉が、Rings Care®︎を、自己満足の個人的な“活動”で終わらせてはいけない、社会的に認められる“仕事”にしなくてはいけないんだという私の覚悟を決めさせてくれました。

いつまでも一人ひとりの “いのち” 輝く社会へ

現在は私1人で30名のお客様からご契約をいただき、毎週もしくは各週で定期的に介護施設に訪問し、1ヶ月に100回以上のRings Care®️を実践しています。しかし、私一人で、どんなに頑張っても50名程が限界です。Rings Care®︎をより多くの方に届けるために、このケアが当たり前に提供されるシステムを社会全体に作っていかなくてはなりません。

直近の課題はセラピストの育成と、市場開拓の両軸をバランス良く進めていくことです。難しい事は承知ではありましたが、法人化したおかげで、このケアを一緒に広げていきたいと思うメンバーが設立から3ヶ月間で6人に増えました。メンバーは、看護教育の現場に従事する者や、ずっと急性期での医療の最前線で活躍してきた看護師、介護の仕事が大好きな介護福祉士、精神保健福祉士もいます。それぞれが各々の場所で "いのち” と向き合いながら、この化粧・整容の力と人と人とのかかわりの重要性を感じてきた者ばかりです。

看護師から起業家へ。超高齢社会での「美とケア」を再定義する新たなサービス「Rings Care」誕生秘話


人は、病気や障害を患ったからといって、そこで人生が終わるわけではありません。病気や障害があっても、これまで積み上げてきた自分自身というかけがえのない存在を見失わず、これからの未来をありたい自分に描いていくために、私たちができることを模索していきたいと思っています。

超高齢社会を迎えるわが国では、一生涯のうちでがんになる確率は男性で49%、女性で37%(国立がんセンターがん対策情報センター推計)、また65歳以上の高齢者の5人に1人は認知症を発症すると言われています(厚生労働省)。病気や障害と共に、自分らしく生きること、それは決して他人事ではありません。自分の心と魂と向き合い、さらに周囲との関係性を円滑にするための『外見と心』のケアへのニーズはこれからますます高まるでしょう。

ケアという仕事の尊さ

私は、父の死には多くの後悔が残りましたが、きっと父の死がなかったらRings Care®︎は生まれていません。なので会社の設立日は父の命日に制定しました。深い深い悲しみから、患者さんや利用者さんたちの笑顔が私の心を癒し、看護師になって良かったと心から思わせてくれたのがリングスケアです。悲しみは悲しみだけで終わらず、新たなものが生まれる可能性を教えてもらいました。

人は人の『死』から改めて『生きる』ことを学ぶのだと思います。これから日本は年間150万人以上が死を迎える多死社会に突入します。ケアという仕事はこの “いのち” と最後まで向き合うとても尊い仕事ですが、過酷な労働条件のもとで低賃金で働き続けている方も多くいます。ケアをする側も誇りと豊かさ、そして軽く笑えるユーモアを持てるくらいの余力の中で働けるよう、改めてケアの仕事の社会環境整備が必要だと思います。AIやICTをうまく活用しながら、人間にしかできない部分に時間をかける、最後まで人の尊厳を大事にするシンボルマークのようにRingsCareがなれればいいなと思っています。RingsCare社はケア職の新しい働き方を提案しながら、ケアを受ける側だけでなく、ケアをする側も幸せになる、そんな環境を作っていきたいと思っています。

看護師から起業家へ。超高齢社会での「美とケア」を再定義する新たなサービス「Rings Care」誕生秘話


株式会社RingsCare

東京都中央区日本橋2-2-3 RISHEビルUFC4階

Mail : info@ringscare.com

https://ringscare.com/

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