人間の体の約60%は水でできており、生活をしていくためには十分な水分補給が欠かせない。厚生労働省が「健康のため水を飲もう」推進運動を後援するなど、近年では体に水を取り入れることの重要性が叫ばれている。


そんな中、水分補給時の選択肢のひとつとして一部で注目され始めているのが「シリカ水」だ。シリカの構成元素であるケイ素はミネラルの一種で人の体内では生成できず、普段私たちは食事や飲料から摂取しているが、「シリカ水」からも取り入れることができる。

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山口県宇部市に社を構える株式会社シリカテックス宇部は、シリカを含む霧島の水の魅力を伝えるべく設立された。同じ地域で老舗アパレル企業を営んでいる株式会社ローズの子会社として作られた。

老舗アパレル企業がなぜシリカ水の販売に至ったのか。その背景には、日本の貴重な水を守りたい、そして水分補給の重要性を改めて伝えたいという企業の代表と担当者の強い想いがあった。

「お客さんのためになることがしたい」老舗のアパレル企業が水の事業に踏み切った理由



霧島の貴重な天然水を守りたい。高濃度シリカ水の価値を伝えるため二足の草鞋で奮闘する担当者の想い


今回、話を伺ったのはシリカテックス宇部で営業マネージャーを務める持溝だ。山口県防府市の出身で、地元で長年アパレル事業に携わってきた。2021年に同社が設立されてからは、アパレル事業と水事業を兼任している。

アパレル事業と水事業は、繋がりがないように思える。持溝によると「代表が霧島の採水地のオーナーと偶然知り合ったことがきっかけ」だという。しかし、宝飾品などを取り扱う事業を行っていたこともあり、商品の価格帯も違うことから最初は水の取り扱いを断っていた。

心境の変化があったのは、新型コロナウイルスが拡大した頃だった。
老舗の企業ということもあり年配のスタッフが多かった。そのため彼らの健康をサポートする意味合いで社内で提供したり、原価で販売したりしたところ、良い反響があった。また、代表自身も水を飲み始めたところ、さまざまなポジティブな変化が見られた。

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「新型コロナウイルスによって、自分たちの事業を見つめ直すことができたのも大きかったですね。アパレル企業として商品を販売してきましたが、どちらかというとそれは自分たちが売上を作るためでした。それが不要不急な外出の制限により、商品を仕入れて販売するという小売業の限界が見えた。それに加えて健康志向が高まり、代表も自分たちではなくお客さんのためになる事業ができないかという思いが芽生えていたようです」

また、会社を構える山口県に何かしら還元がしたいという気持ちもあった。山口県は人口の流出が多く、流入が少ない地域。そのため、年々人口が減っており、2045年には104万人になると推計されている。

参考資料

https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/uploaded/attachment/12036.pdf

「地域に根差した企業として、自分たちにできることはないだろうか。地域への貢献活動のひとつとして、健康にまつわる事業を始めても良いのではないか。そう思いました」

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同社が扱う水は、鹿児島県の霧島連峰・高千穂峰の深層地下144mから採水している。
霧島は雲仙、瀬戸内海と並ぶ日本初の国立公園で、環境破壊や汚染の心配が少ないとして知られている。実は近年、日本の水は産業排水や生活排水、気候変動などさまざまな影響による水質汚染のリスクが高まっている。霧島で採水した水はそうしたリスクが少なく貴重だ。

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「代表としては、そうした日本の素晴らしい水資源を守りたいという気持ちもあったようです。神聖な土地から湧き出る水に価値と可能性を感じ、地域資源の魅力をもっと多くの方に知っていただきたいと思い、本格的に水事業をスタートすることになりました」

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素晴らしい水との出会い、コロナによる心境の変化、地域に貢献したい気持ちーー。複数の要素がパズルのピースのように組み合わさった結果、同社の高濃度「シリカナノコロイドウォーター」が誕生した。

継続しやすい水でなければ意味がない。“何でも屋”と称する営業マネージャーの奮闘

「シリカナノコロイドウォーター」を本格的に販売し始めたのは2022年頃。水の販売に関して代表を含めて社内に知見を持つ人間がいなかったため、販売に至るまで準備・構想・試作を含めて3年ほどかかった。また、水事業は基本的に代表と持溝の2名で行っている。そのため、営業・PR・生産管理・EC管理・契約・問い合わせ対応など、多くの業務を持溝が担当することとなった。

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「肩書は営業マネージャーですが、要するに何でも屋ですね。
でも、新しいことにチャレンジするのが元々苦手ではないので、色々と担当することに対して抵抗感はなかったですね。今振り返ってみると、水事業を通してよりビジネスパーソンとしてマインドが強くなったと思います」

しかし、最初は水を販売することに対して社員の多くは半信半疑だったという。「はたから見た時に、水の販売って怪しいイメージがありますよね。我々も、最初は代表がなんか言ってるぞと斜に構えていましたから」

ただ、今までに水を飲んだ方からはポジティブな感想を複数もらっていた。疑う気持ちもありながら、その思いを抱え、事業を形にするべく奔走した。

まずは商品作りからスタートした。同社が扱う「シリカナノコロイドウォーター」はシリカ濃度が高いのが特徴だ。シリカはミネラルの一種であるケイ素を構成元素としているため、シリカの濃度が高まることはミネラル成分が多いことを意味する。水はミネラルが少ないモノが軟水、多いモノが硬水で、その中間は中硬水と呼ばれる。軟水はまろやかで、硬水は飲みにくいという味の違いがあるが、日本人は基本的に軟水に慣れている。

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「シリカナノコロイドウォーター」は採水した水にシリカを足しているためシリカ濃度が高い中硬水にあたるが、非常に飲みやすく仕上がっているという。そこには「飲みやすく続けやすい水を届けたい」という思いがあった。


「いくら健康のためと言っても、飲みにくいのであれば継続はできません。なので、飲みやすさと健康への実感を両立させるための調整には一番時間をかけています。試作段階では、シリカ含有量を含めることで味のまろやかさが失われてしまうという課題がありました。何度も調整と試飲を重ねる中で、ようやく高含有でありながらまろやかな口当たりの水を実現できました」

また、「ナノコロイド化」技術によりシリカをナノサイズに分散させているのも特徴だ。ナノコロイド化することで水の中でミネラルが沈殿してしまうのを防ぐと共に、水に均一にシリカを分散させている。採水した水を独自製法で長期間熟成させているため、商品を作るには時間がかかる上、一度に作れる数にも限りがあるという。

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商品開発の苦労もありながら事業をスタート。

3年目で、徐々に売上が立ち始めた。誰かの役に立つ商品を作り、必要な人の元に届けたいという熱意とそれを原動力とした行動が成果に繋がった。

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薬機法の壁、商流の開拓ーー。大変だったゼロからの立ち上げが3年目に花ひらく

問題なく事業がスタートし、その後軌道に乗ったのかと思いきや、持溝は「最初は苦戦しました」と話す。中でも大変だったのが、薬機法に則った表現と水の特徴を理解してもらうことの2つだ。


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持溝は「商品の特性上、販売する上で薬機法の壁はすごく高かった」と話す。自身を含め周囲に薬機法について知識がある人間がほとんどいない状態だったため、ホームページ上での表現は弁護士に相談しながら決めていった。薬機法を気にして抽象的かつ曖昧な表現になることについて、代表と衝突することもあったという。

「良いモノを事実として伝えたいという代表の気持ちもわかるんですけどね。しかし、我々も取引先を抱えている以上、そこで目立って迷惑をかけるようなことは避けたかった。そこで、我々の中でこの表現ならOKというガイドラインを設け、代表にも少しずつ理解してもらえるよう話し合いを重ねました」

そうしたやり取りもあり、今は代表にも理解してもらい、表現周りについては一任されているという。

とは言え、表現についてはまだ勉強中で、競合他社から学びながら取り組んでいるそうだ。

水の特徴を理解してもらうことに関しては、展示会や試飲会など地道な活動を重ねていった。水は実際に飲み、そして継続することで初めて良さを知ってもらえる。リアルな接点作りに取り組んだ結果、現状メインの取引先となっている整体院や整体師との繋がりができた。

「一口に患者さんと言っても、一人ひとり体の状態は違います。また、施術で対応できる範囲にも限界がある。
整体師さんと話をする中で、施術を受け入れる土壌を作るという意味合いで患者さんに水を飲む習慣をつけてもらうことの大切さを知りました」

その場で試飲してもらったところ、嬉しいことに水の良さを知ってもらうことができた。今では整体師さんだけでなく、患者さんや整体のお弟子さんなど整体院を通してさまざまな方に習慣的に飲んでいただける環境が整っている。

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地道な広報活動と偶然の出会いにより、徐々に商流を確立。継続的に注文していただいている顧客の方からは、「飲みやすい」「水を飲む習慣がついた」「子供やペットがちゃんと水を飲むようになった」など、嬉しい声が多数あり、それが励みになっているという。

水分補給の習慣付けを啓蒙。必要としている方に自社の水を届けたい

持溝は、水分補給の重要性を改めて伝えたいと話す。

「政府が啓蒙しているように、水分補給は健康を維持していく上で非常に大切です。しかし、多くの方は水を飲む習慣がありません。弊社の水でなくても良いので、まずは水分補給の習慣をつけましょうと伝えたいですね」

特に冬は水分補給が疎かになりがちだ。人体は季節を問わず水分を必要としているため、冬場は意識的に水を飲む必要がある。しかし、自然と水を飲む機会が増える夏場に比べて冬は喉の乾きを覚えにくいため、水分補給のタイミングを逃してしまいやすい。

また、今後自社の水を飲んで欲しい方について持溝は「若い方にも飲んでいただきたい」と話す。現在の顧客の多くは高齢者だ。若年層が少ない理由については価格が要因だとする。

「弊社で扱っている水は一般的なミネラルウォーターと比べると少し高い。でも、価格で大手と戦うことは考えていません。重要なのは、弊社の水の価値や特徴を理解してくださる方を増やすことです」

そのため、若い人に向けてシリカ濃度を低くした水も展開している。パッケージを変えるなど手に取りやすい工夫もしているそうだ。

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最後に、事業のやりがいについて聞くと「顧客の方が喜んでくれること」と返ってきた。

「水の事業も、アパレルの事業も本質は同じです。良い商品を紹介してくれてありがとうと言われることが嬉しいですね。しかし、事業としてもちろん売上も大切にしていきたい。弊社の商品を必要としている方にしっかり届けること、そういった活動は今後もしていきたいですし、重要だと思っています」

顧客の笑顔と日本の大切な資源を守る使命感ーー。偶然からスタートした水事業は今後大きく拡大し、より多くの方の健康をサポートしていくだろう。
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