デビュー20周年記念日の5月21日に、突如6年ぶりの再結成を発表したWyolica(以下 : ワイヨリカ)。現在もソロで活動中、ジャズシンガー、DJ、ヘアアクセサリーデザイナーとしても人気の高いボーカリストAzumiと、ソロユニットSoulcolorを始め、レコーディングやライブのサポート、サウンドプロデューサーとしても活動中で、ワイヨリカではギター&サウンドメイクを担当するso-toによる男女デュオだ。
INTERVIEW:Azumi(ワイヨリカ)
──今回の再結成、いきなりの嬉しいニュースには驚きました。いつ頃からこの画策を?2年ぐらい前かな、「2019年には20周年になるんだな……」と思いつつ、ただその時はまだ「何かやりたいな……」程度だったんです。そんな中、サブスクリプションを含め、今ワイヨリカの音源を身近に聴ける環境がないことを知って。だったらこのタイミングで何か形に残して、改めてみなさんの耳に触れる機会を作りたいなって。そこからですね、「新曲を入れたらみんな喜ぶかな?」等々を考えはじめて。「新曲を入れるなら、やっぱり再結成」という選択肢にたどり着きました。──今回、「Beautiful Surprise」と銘打った再結成への一連の動き(仕掛け)には都度ワクワクさせられています。最初は「せっかく20周年のデビュー日だから何かしたいよね」から始まりました。
Wyolica –“Beautiful Surprise”(short lyric Video)
──ワイヨリカとして再びso-toさんと久しぶりに一緒にやられてみていかがでしたか?この6年間、お互い培ってきたものをそれぞれがより一層持ちよれたかなって。以前よりワイヨリカについて俯瞰でみることができたので、以前よりなんか余裕をもって取り組めました。

──改めて、デビュー当時の話について。あの頃は空前のディーバブームで。前年にMISIAさん、宇多田ヒカルさんがデビューし大ヒット。その翌年の1999年デビューとなると、いわゆるそれを受けた歌姫たちが続々とデビューをしていたわけですが……。いやー、あの年は女性シンガーが多くデビューし、ライバルも多かったですね。むちゃくちゃ忙しかったです(笑)。当時は「ディーバ」って括りではありましたが、各々はかなり個性的でしたよ。そんな中でも、私たち自身はその括りからはちょっと違うところにいたんじゃないかなって思いますね。私もブラックミュージックが根底にはありましたけど、歌い上げるソウルフルなシンガーたちとはまたちょっと違う分野かなと。

──ここからはベスト盤『Beautiful Surprise ~Best Selection 1999―2019~ 』の話にうつります。2枚組全30曲で新曲も入り3,000円はかなりお買い得ですね(笑)。お買い得でしょ~(笑)!やはり今回、感謝の気持ちを込めて。これまでのファンの方にも、ここから私たちに触れてもらう方にも、手にとってもらいやすい内容と価格にしました。先ほどの話じゃないけど、この20周年で絶対に多くの人に聴いてもらえる環境を作りたかったんです。──選曲はお二人でやられたんですよね?そうなんです。おかげさまでかなりお互い思い入れのある選曲になりました。シングル曲はマストで、かつ各アルバムから満遍なく入れました。お互いに重なる曲もありましたし、「えっ、その曲!?」って曲も入っています。2人の入れたい曲を優先的に入れられたので大満足です。全体的にやはりライブで印象的な楽曲が中心になったと思います。
「Beautiful Surprise ~Best Selection 1999-2019~」紹介動画
──曲順やリリース時期もランダムですが、アルバム通して全体的にどこか流れやストーリーを感じました。曲順に関してはほぼほぼ私が決めさせてもらいました。私にとってアルバムの曲順や曲間ってすごく大事だし、こだわっている面でもあって。今回はほとんどが既発曲ではありますが、新しいアルバムを聴いているような感覚になってもらえる作品を目指しました。──その為に曲順にはこだわったということですね?そうですね、いわゆるDJ的な並べ方をしたんです。音楽的な手触りをブロックブロックにして流れを作ったり、あとはライブの感覚ですね。ライブ時のセットリストというか、ストーリーを大事にしつつ、緩急やメリハリ、コントラスト等のドラマティックさは考えました。──だからこそ、発表時とはまた違った響きかたをしていました。まずは聴いてくださる方を思い浮かべながらの曲順でした。聴いてくださる方の感情の動きや揺れ、機微を想像しながら。そう考えるとそれこそDJに近い感覚でしたね。「ここからこの曲の展開がくるとは思ってなかったでしょ?」といった思惑も含めていろいろ考えました!

──新曲の”Beautiful Surprise”はシンプルながら、この上なくワイヨリカのこれまでや今、そしてこれからを伝えている感があります。ありがとうございます。歌詞は私史上、最もシンプルなものになりました。タイトルも分かりやすいワードが2つ並んでいるのでそれだけでも伝わりやすいですし、シンプルだからこそ人それぞれ色々な意味に捉えてもらえるかなと思います。みなさんの心の中で育つであろう言葉だし、あえてその辺りを狙っています。元々ワイヨリカは多くを語らないし、メッセージや主張を押し付けたくないユニットなので。余白や行間、そこにみなさんの中で楽曲の意味を捉え、育てて欲しいというのが常にありました。今回は6年を経て、それの究極が出来たと思います。──よりシンプルにすることで、更に強くその辺りが出た感があります。これこそ作っている間にファンのみなさんの顔が浮かんできた曲で、歌うたびに言葉の意味も増えていきました。ホント自分でも興味深い曲です。──もうひとつの新曲の”Beep-Beep-Beep”。これはかなりライブ映えしそうな曲ですね。ライブのセットリスト的に考えると、メリハリとしても楽しくみんなと一緒になれる曲が欲しくなるんですよね。その流れで作りました。元々、歌詞のモチーフはso-toさんだったんです。彼の実家では昔フォルクスワーゲンに乗っていたらしくて。この曲は、それに乗ってカップルが楽しくドライブにいく様子を描いてます。でも、ドライブ中にカップルが喧嘩しちゃうっていうのをふざけながら書いていたら完成していました(笑)。「自分の人生の歩みもこの車のように時代に追いつけていないし、速度も遅いかもしれないけど、それでも僕を愛してくれるかい?」、というような歌になってます。──3つ目の新曲”ONE ROOM”は夜で、ややセクシーさを擁したアダルティな雰囲気の新曲で。どこか背徳感とスイートさの同居を感じます。背徳感、当たってます。バッチリです(笑)。これも立派なこれまでのワイヨリカの側面ではありました。この曲は女性の恋愛観の真骨頂のような曲を書きたかったんです。それを昔だったらもっと暑くるしく伝えていたと思いますが、それをあえてサラッと書きました。その方が女性の人生、その奥の何かも伺えるし、想像できるかなと。──デビュー曲の”悲しいわがまま”も今回、20年ぶりにリメイクして収録していますね。これは2人だけで一発で録りました。もうライブでやるそのままでしたね。私たちのキッカケの曲でもあるし、それを「時を経て今の私たちはこうですよ」と、今の自分たちのライブ観をまじえて、「今のso-toさんのギターです!」、「私の歌です!」との思いを込めて、改めて録りました。──久しぶりのライブも予定されてますね。ファンからやって欲しい曲のリクエストを募り、1位の曲は必ずやるという趣旨のものですね。今からライブはかなり楽しみにしています。と同時に想像するだけで緊張してきますね。ソロでもずっとやってきてはいたので、当初は「大丈夫だろう」と高を括ってましたが、久々に全曲ワイヨリカですからね。やはり近づくにつれ……。──リクエストは予想通りでしたか?かなり分かれました!意外さも含め、すごく面白かったです。それぞれの人にそれぞれの想いが各曲にあったことに改めて気づかせてもらいました。特に現状2位の曲は意外で。現在想定しているセットリストには入ってなかったので入れるべきか今悩んでます。──これを機にワイヨリカは今後も続けていく所信ですか?当初はその辺りフワッとしていたんですが、so-toさんがこの前「やる!!」と言ってました(笑)。ですが、昔みたいに気負って曲を作ったり、頻繁にライブをやったりのスタイルとはまた違った活動の仕方になるでしょうね。それが出来ないのではなく、あえてやらないスタンスという意味です。その「無理のない活動」というのが今のワイヨリカにとっては重要なスタンスなんです。なので、頑張るけど無理はしない。そんなスタンスで活動していければなと思っています。──では最後に。20年前の自分にメッセージをするとしたら?うーん……。なんだろう……。「続けることが一番難しいけど、そこにはご褒美がちゃんと待ってるから頑張って」かな。あとは、「そんなに必死にならなくてもいい……」、いや、逆に「今は必死にガムシャラにやっとけ!!」って言いたいです(笑)。あとは「仕事を断るな!来た仕事は全てやれ!!」。それがのちに色々な糧になったり、点が線に繋がっていったりしますから。ホント20年経って、その辺り改めて実感しています(笑)。
Text by 池田スカオPhoto by Haruka Yamamoto
INFORMATION

Beautiful Surprise ~Best Selection 1999―2019~
2019.08.07(水)¥3,000+tax詳細はこちら

Wyolica 20th Anniversary ~ Beautiful Surprise Tour~
2019.08.18(日)OPEN 16:30/START 17:30場所:東京・duo MUSIC EXCHANGEADV ¥6,000/DOOR ¥6,800(1ドリンク別)
2019.08.31(土)OPEN 17:00/START 17:30場所:大阪・心斎橋Music Club JANUSADV ¥6,000/DOOR ¥6,800(1ドリンク別)
Wyolica(ワイヨリカ)
北海道札幌市出身のAzumi(vo)と大阪府出身のso-to(池宮創人)(g,programming)による2人組音楽グループ。名前はネイティヴ・アメリカンの言葉を用いた造語で“草原の民”の意。それぞれに活動していた二人がオーディションを機に出会い、大沢伸一プロデュースとして99年5月にシングル『悲しいわがまま』でデビュー。ブラック・ミュージックを軸に、切ない歌詞や洒落たセンスとポップ感覚を合わせた爽やかで甘酸っぱいサウンドで人気を博す。2013年5月の正式解散発表後は、それぞれソロで活躍していたが、デビュー20周年を期に再結成を発表した。
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