※『Mondo Alfa』に掲載されている内容を一部改変して転載したものです。

EMS技術を活用したトレーニング・ギア『SIXPAD』。
今世紀最高のサッカープレイヤーと称されるクリスティアーノ・ロナウド選手を始めとするトップアスリートから絶大の信頼を得ているブランドだ。彼らにとって欠かせない存在となっているSIXPADの魅力を探るとともに、大ヒットの裏側についてブランドマネージャー・熊崎嘉月氏に話を伺った。

実体験で変わったSIXPADのイメージ

大好きなクルマを運転して出かけることもままならない。ましてや自宅の扉を開けるのすらためらわざるを得なかった今回の自粛生活を振り返ってみると、全世界的に一人ひとりが健康の意味に向き合った機会だったと言えるかもしれない。その渦中で注目されたのがSIXPAD(シックスパッド)だ。
“本物”を目指したSIXPADの知られざる真実
タイムリーな理由としては、場所を選ばずどこでも筋肉トレーニングができるEMS(Electrical Muscle Stimulation=筋電気刺激)の利便性が挙げられる。潜在的な部分では、SIXPADのテレビCMなどで記憶に刷り込まれたサッカープレイヤーのクリスティアーノ・ロナウド選手や女優の菜々緒氏の肉体美を思い出し、「自分もそうなれるのでは?」という期待が首をもたげたところもあるだろう。果たしてSIXPADはどんな効果をもたらすのか? 装着体験を求めてSIXPADを開発した株式会社MTGの東京支社ショールームを訪れた。出迎えたのは、意志の強さを全身で表現する、ロナウド選手を精巧に再現した等身大のサイバークローンだった。
“本物”を目指したSIXPADの知られざる真実
展示コーナーを見渡すと、見覚えのあるEMS機器の他に、着圧スーツやダンベル、ストレッチツールからサプリメントまで多岐に渡る製品が並べられていた。聞けばSIXPADの技術を応用したトレーニングジムも開設されているそうで、ショールームではこのブランドがトレーニング全般に関わっていることを知らされる。
“本物”を目指したSIXPADの知られざる真実
“本物”を目指したSIXPADの知られざる真実
では、体験。SIXPADと言えば思い浮かぶお腹周りを鍛えるAbs Belt(アブズベルト)と、腕を鍛えるArm Belt(アームベルト)。
この二つを同時に試してみた。巻くだけで装着完了。Bluetooth搭載なので各種操作はスマートフォンのアプリと連動可能。設定された1回のトレーニング時間は23分。強弱や休息のタイミングは機械任せ。すべてがイージーだ。
“本物”を目指したSIXPADの知られざる真実
しかしトレーニング状況を言葉で表すのは難しい。チクチクもピリピリもしないが、電気信号と思しき刺激が加わると腹や腕が勝手に動いてしまう。その感覚はフィジカルな運動とは別物だ。目に見えない小人が皮膚の下に潜り込み、直に筋肉を押したり引いたりつまんだりするような……。感覚としては、整形外科医院などで使われている電気刺激に似ているが、SIXPADのほうが芯を喰っている感じがする。そして終了後、しばらくしたらお腹周りや腕にそこはかとないだるさを覚えた。
これはフィジカルな運動後の要するに筋肉痛そのものだった。どうやら効いているらしい。さらにもう一つ。裸足を乗せることで足裏やふくらはぎなどの“歩く力”を鍛えられるFoot Fit(フットフィット)を試した瞬間、私事ながら80歳代の母親に贈りたいと思った。
“本物”を目指したSIXPADの知られざる真実
以上はあくまで個人の感想だ。これも個人的見解の範ちゅうだが、実際の体験によってロナウド選手/菜々緒氏/母親がつながるとは夢にも思わなかった。SIXPADのイメージが大きく変わったのは言うまでもない。「本物をつくりたかったのです」時節柄のリモート取材。モニターの中の人物は、淀みなくそう言った。

世界的権威との共同開発

名古屋本社との遠隔取材で話を伺ったのは、SIXPADブランドマネージャーの熊崎嘉月氏だ。まずはMTGという会社の概要を紹介する。
“本物”を目指したSIXPADの知られざる真実
▲SIXPADブランドマネージャー熊崎嘉月氏1996年に創業したMTGは、クリエイション/テクノロジー/ブランディング/マーケティングを柱に、ビューティ&ウェルネスの領域で多数のブランドを開発している企業だ。電気刺激で筋肉トレーニングをサポートするEMSの技術を使ってSIXPADを開発したのも、美と健康を提供し健やかな社会づくりに貢献する事業理念に即したものである。
“本物”を目指したSIXPADの知られざる真実
さて、熊崎氏は何故“本物”を口にしたのか。理由の一つは“偽物”の存在にある。「我々がSIXPADの開発に着手したのは今から7年前。製品発売の2年前にさかのぼります。その時点でも2000年頃にブームとなった家庭用EMS、中でも“つけるだけで痩せる”と謳い、火傷などの被害を招いた粗悪品によるEMSの胡散臭いイメージがしっかり残っていました」そんな悪評を払しょくするため開発チームが取り組んだのが、EMSの世界的権威との共同開発だった。様々な研究や論文を探る中で目に留まったのは、電気生理運動学や運動生理学等において世界中の学会で理事や評議員を歴任し、現在は京都大学名誉教授を務める森谷敏夫氏だった。運よく日本在住なので、すぐさま訪ねることにした。「いきなり怒られました。君たちみたいなメーカーがEMSをダメにしたんだと。けれど自分たちは違う。先生のご協力を得て、本物をつくりたいのだと必死で説得しました」
“本物”を目指したSIXPADの知られざる真実
▲京都大学名誉教授 森谷敏夫氏何度も何度も通いつめ、「根負けしてくださった」形でようやく教授の了承を得た。ゆえにSIXPADの開発も森谷氏の研究成果に基づいて行われることになった。
大枠だけ説明するが、筋肉を効率的にトレーニングできるのは20ヘルツという低周波。それを与え続ける時間は20分。開発チームの課題は、低周波特有の肌をチクチク刺すような痛みを取り除く波形の模索だった。その他コードレスで手軽に装着できる設計にも知恵を絞った。「本物をつくりたい!」という情熱のもと、100を超える試作品でテストを重ね、いよいよプロトタイプが完成したところで、もう一人のキーパーソンが登場する。ロナウド選手だ。
“本物”を目指したSIXPADの知られざる真実
「彼とはMTGの別ブランドでパートナー契約を結んでいた関係で、当社の社長は新ブランドとしてのSIXPADの構想を事前に伝えていました。ロナウド選手もEMSの存在は知っていたようです。そうして試作品をロナウド選手の自宅に届けたら、社長の前でその薄さに怪訝な顔をしたそうです。ところがスイッチを入れた途端、表情が一変。彼もプロだからわかるんですね。これは本物だと言ってくれました」そこでロナウド選手はこんな提案をした。
「自分は合間に休息をとるトレーニングを大事にしているから、休息を含んだ僕ならではのメソッドを入れてほしい」そこからまた新たな波形を研究。製品化されたトレーニング時間が23分に設定されたのはロナウド選手の意見によるものだ。SIXPADが彼を共同開発者とするのは、そういう理由に基づいている。

SIXPADで社会貢献するという大義

“本物”を目指したSIXPADの知られざる真実
これも熊崎氏に聞いて知った事実だが、MTGはEMSに関する研究成果の学術発表を国内外で随時行っているそうだ。現在までにその数は10件。共同研究に取り組む機関も10大学5病院3行政に及んでいる。他方では一般社団法人日本ホームヘルス機器協会に加盟し、 EMSの安全基準に関するJIS規格化にも尽力しているという。「それらの活動は、EMSへの誤解を解きたい思いが根底にあります。そしてまたダイエットやトレーニングに対する一般的な誤解を解消したい願いもあるのです。たとえば糖質ダイエット。糖質を抜けば痩せると思われがちですが、方法によっては栄養バランスを大きく損ないかねません。知っていただきたいのは、筋肉はもっとも大量に糖質と脂肪を燃やす臓器であること。
しかも私たちの体は、糖質の90パーセントを筋肉と脳で消費できる構造になっています。つまり代謝を上げる筋トレは、美しい肉体の形成だけでなく、健康で暮らすために必要な行為なのです。そうした科学的な知識と情報もSIXPADを通じてさらに広めていきたいですね」以上のトピックスは、すべてSIXPADのホームページ内に記載されている。しかし、それが世の常とは言え製品紹介に目が向いてしまうのは、筋トレを自分事として捉えているからだろう。そんな意識を覆されたのが先述のFoot Fitだ。ベルトを巻く手間すら不要なら高齢者でも日課にできるかもしれない。それは目からウロコ的な発見と期待だった。
“本物”を目指したSIXPADの知られざる真実
「アフターコロナも見据えたSIXPADのニーズは大きく三つあると考えています。一つ目は、以前からジムに通っていた人の筋トレニーズ。二つ目はダイエットニーズ。ここには誤解のない知識を提供していきます。三つ目は、高齢やケガなどで筋トレをしにくい方々が場所を選ばず筋力の維持と向上を求めるニーズ。今後は全体的に三つ目のニーズが高まっていくでしょう。それに合わせてSIXPADも、トレーニングからヘルスケア、メディカル、フードサポートへと広がりを見せていきます。
“本物”を目指したSIXPADの知られざる真実
見落としていたというか、他人事としていたのはまさに第三のニーズだ。今回の感染症騒動によって高齢者も外出を避けた結果、運動不足による転倒の危険性が高まり、それを離れて住む身内が心配する事態が浮き彫りになった。であれば手軽に歩く力を鍛えられるFoot Fitなどは、時代のニーズを捉えた先見の明ある製品と言うべきだろう。それにしても、と思う。同じ機器を使っても、筋肉や脂肪量、摂取している食事などの要因によってトレーニング結果は人さまざま。だから一概に効くとは言えない。しかも、EMSおよび筋肉と健康の正しい理解が広まらないことにはSIXPADが目指す健やかな未来は訪れない。だからこそ学術成果によってエビデンスを伝えていく……。何と遠回りの方法だろう。本物を築き上げるには他に手段がないのかもしれないが、そこまでしてSIXPADを手掛ける理由をたずねたら、熊崎氏からこんな答えが返ってきた。「他にないものが私たちにあるとすれば、それはSIXPADで社会貢献するという大義です」SIXPADの真実を聞かされた後では、その言葉に疑いを挟む余地はない。そして誰にとっても困難を極めた状況を経験した今、健康で暮らし続けていく意味をSIXPADの存在意義とともに見つめ直してみたい。
“本物”を目指したSIXPADの知られざる真実

※ソーシャルディスタンスを保ち、安全に十分に配慮したうえで取材を行っております

Text:田村十七男 Photos:佐藤大輔

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