不定期にいま気になるレコードショップへお邪魔し、店主へ直接はなしを聞きにいく企画「Get To Know」。第4回目はドイツ・ベルリンのThe Ghost(ザ・ゴースト)へ。

Interview:The Ghost(Josh Tweek & James Creed)

━━ベルリンは3月中旬から4月末までロックダウンになりましたが、「The Ghost」はいつから営業を再開しましたか?James Creed(以下、James) 7月からだよ。それまではロングバケーションみたいだったね。どこにも行ってないけど(笑)━━7月の営業再開まではどうしてたんですか? 当然ながらレコードショップだけでなく、DJも出来ない状況でしたよね?Josh Tweek(以下、Josh) そうだね。まず、決まっていたDJのスケジュールが全部キャンセルになったよ。今年の夏はとにかく忙しくなる予定だったんだ。フェスや新しいクラブへの出演も決まっていたからね。何より残念だったのが<Glastonbury Festival>だよ。出演が決まっていたのにコロナの影響で開催中止になったからね。━━えーっ!!<Glastonbury Festival>!!それは残念過ぎますね……James 本当に残念だよ!! とても楽しみにしていたからね。でも、ロックダウン前はとにかく忙しくて、毎週末どこかでDJをしているという生活だった。それがなくなってからは週末の過ごし方がガラリと変わったよ。━━具体的にはどんな風に変わったんですか?James これまでみたいに週末に仕事をすることがなくなって、自分の趣味の時間になったんだ。ヨガやエクササイズをしたり、元から好きだったバスケットボールやフリスビーをやったりね。

━━ベルリンに関して言えば、クラブのガーデン(オープンエアー)のみでパーティーが再開されていますが、DJスケジュールの方はどうですか?Josh うーん、イリーガルなパーティーは行われたりしてるけど、やっぱりそういうのはクオリティーが低いよね。出演回数の多かったHoppetosseは営業を再開できていないし、系列店のCDVはDJも入れて営業しているけど、あくまでもバーとして営業しているから、踊れないし、マスク着用の決まりもあるよね。James 一番最後にDJをしたのが、ロックダウン前のプラハだったかな? それからもうずっとギグをやってないよ。8月にオープンエアーのイベントがあったけど、それもキャンセルになったし。だから今は、レコードショップの営業を再開して、レコードと一緒にオリジナルTシャツの販売も始めたんだ。

━━なるほど。「The Ghost」の告知にはいつもかわいくてユニークなお化けといろんなキャラクターのイラストが登場していますが、Joshの手描きだったんですね。今みたいな時代には大切なツールの一つだと思いますが、オンライン販売の予定はありますか?James Tシャツだけやる予定でいるよ。レコードはやっぱり直接来て買って欲しいからやるつもりはないかな。━━1枚しかないお宝が多いですし、中古がメインだと何かとリスクがありそうですよね。バンに積んでる以外の在庫も豊富にあるでしょうし、オンラインに移行するのは大変そうです。バンには何枚ぐらいのレコードが積んであるんですか?ジャンルはダンスミュージックが中心ですよね?Josh バンに積んでいるのは大体1200枚ぐらいだけど、倉庫には5000枚以上あるから、いつもそこから選んで運んでいるんだ。だから毎回同じじゃないし、直接店に来て僕たちと話をしたり、試聴してから買って欲しいよね。取り扱っているのは全てダンスミュージックで、特に90年代のハウスやテクノが充実していて、掘り出し物を発見出来る可能性も高いよ。


━━そんな今日の一押しの一枚を教えてもらえますか?Josh うわー、悩むなあ。ちょっと時間もらってもいい?━━もちろんです(笑)以前は、クロイツベルク区のBetahausの駐車場でも営業してましたよね?James あそこはビル自体が改装工事になって、Betahausもないからもうやってないんだ。今はほぼ毎週金曜日の大体午後2時ぐらいからノイケルン区のBetahausの駐車場で営業してるよ。━━そうだったんですね。一押しの一枚を選んでもらってる間にお聞きたいんですが、コロナによって危機的な状況に追い込まれているダンスミュージックやクラブカルチャーの未来をとても心配しています。2人はその辺についてどう考えていますか?James 同じく心配しているよ。残念ながらいくつかのクラブはこのまま営業出来ずに閉店してしまうと思うんだ。オーガナイザーたちはクラブでパーティーが出来ないから、野外で会場を探し出しているよ。だから、来年はもっと野外パーティーが増えるんじゃないかな? でも、もう誰にも分からないよね。とにかく、来年の4月か5月にはクラブやフェスも元に戻って欲しいと願っているけど、フィンガーズ・クロス!! もうそれしか言えないよ。Josh フィンガーズ・クロス!! 本当にそれだけだね。ただ、これからは、スターアーティストが毎週末飛行機に乗ってどこかに飛んで、高額なギャラをもらってプレイをして、5つ星ホテルに泊まるって、そういったケースが減っていくと思うんだ。

━━本当に今後どうなってしまうのか誰にも分からないし、フィンガーズ・クロスしかないですよね。パーティーはないですが、クラブを使った無観客でのライブストリーミングが頻繁に行われていますが、それについてはどうですか?James 良い質問だね!ライブストリーミングには賛成だよ。オーディエンスがいない分、リラックスして出来るし、プレイに集中出来るんだ。Josh そうだね。少し前にHoppetosseでやったんだけど、すごく良かったよ。オーディエンスがいることはもちろん良いけど、フロアーはいつも熱狂的でクレイジーだからプレッシャーを感じてしまう。だから、無観客でやるのはスタジオにいる気分でリラックスしてプレイ出来るし、自分たちを知らないリスナーにも良いプロモーションになると思った。━━オーディエンスがいないと意味がないといったストリーミングを嫌うアーティストもいる中で、2人は賛成派側なんですね。私はどうしてもあの熱狂的なフロアが恋しくなってしまうので、一刻も早くコロナウイルスが終息して、クラブでのパーティー現場が復帰してくれることを願っています。


━━本日はありがとうございました!!実は、10月にオーストラリア、韓国、そして日本を回る約2週間のツアーの話があった「The Ghost」。残念ながらエージェントからの連絡は途絶えたままで、いつになるのか? 実施されるのか? 日本でのツアーを切に願っていた2人だけに、まさに、フィンガーズ・クロスの状態である。DJギグがなくとも世界のアーティストたちはリリースを止めることなく、レコードを買うことも止めないだろう。室内が危険なら屋外でパーティーを、自宅で安全に音楽を楽しむならライブストリーミングを。人間は環境に順応することに長けている生き物だというが、深刻な状況の中で、次々と生まれるアイデアは私たちにとって音楽はそれほどまでに必要不可欠であるという事実なのだ。今後も移動可能な範囲で、世界に散らばる素晴らしいレコードショップの情報を追っていきたい。
Text by Kana MiyazawaPhoto by Hinata Ishizawa
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