ここ近年、“ととのう”や“サ道”、“サ活”といった言葉はもはやサウナ好きだけにとどまらず、日常の会話にも登場するほど定着してきている。古くからある銭湯やサウナから、サウナに特化した宿泊施設が新設されるなど、サウナブームはまさに現在もヒートアップ中。
INTERVIEW:村上悠さん(JR東日本事業創造本部/アウトドアサウナ事業ファウンダー×橋本健太郎さん(川とサウナ/サウナフルネス/スキーマ取締役)

サウナに入るだけでない、前後の特別な体験を提供したかった
━━まずはじめに<GALA meets SAUNA>の構想、立ち上げのきっかけはいつ頃からですか?村上 悠さん(以下:村上) これだ! と思った出来事は、忘れもしない2018年の夏でした。宮城県丸森町のキャンプ場につくられた『MARUMORI SAUNA』に行ったんです。そこには木材で作られたサウナ施設のほかにも川があって、キャンプ場もあって。サウナに入って冷たい川にダイブして、外気浴をしようと石の上に寝転がったのですが、そのときの感覚が本当に最高だったんです。そこで初めて、アウトドアサウナをやりたい! と思いましたね。橋本健太郎さん(以下:橋本) 僕はそんな村上さんに誘われてサウナにどハマりしたんです。2019年の2月ですね、下北沢の高架下に作られたサウナ<CORONA WINTER SAUNA SHIMOKITAZAWA>に誘ってもらって、それをきっかけにアウトドアサウナに急激にハマりまして、気づいた頃には自分でテントサウナを買っていました(笑)。━━すごいどハマりしてますね(笑)。そのあとすぐに「川とサウナ」を立ち上げたのですか?橋本 正確にいうと、下北沢のサウナの後に、サウナイベントにも行くようになって。そのなかで<Pop' Up Sauna Festival/サウナ温め選手権>というイベントがありまして。この選手権は、サウナのストーブに誰が一番早く規定の温度までサウナを暖められるかを競う競技で、その日本初開催がなんと埼玉で行われたんです。ド平日だったのですが、どうしても行きたくて、そのときにテントサウナが売っていて勢いで購入したわけです。それで、「川とサウナ」を立上げました。

━━いや、それがすごいですよね。だってスキー場って基本はスキーやスノーボードをやる人だけが行く場所というイメージですし。村上 使われていないゲレンデを活用できればガーラ湯沢としてもいいですよね。スキー、スノーボードをやらなくても雪山体験としてサウナに来るっていう新規顧客開拓としても面白いんじゃないかと。



ルールが曖昧だからこそルールをつくる、“愛のあるサウナ”を届けていきたい
━━サウナ前後の特別な体験、素晴らしいです。今回、「川とサウナ」が運営サポートとして参加していますが、普段はどういった活動をされていますか?橋本 名前のとおり「川とサウナ」はテントサウナを使って川でサウナをするチームです。自分たちの地元の川はもちろんですが、川や自然の資源って全国各地あるので、テントサウナを持っていく、または持っている人がいればどこでもできる活動というのがポイントですね。最近だと「川とサウナと〇〇」という企画もやっています。例えば、「川とサウナとBBQ」だったり「花火」だったり。この「〇〇」のガジェット部分が結構なんでもハマるんです。━━確かに、今回も「川とサウナとゲレンデ」ですね。日本全国でできそうです。橋本 僕の地元は秩父なんですが、僕らの活動拠点も秩父の横瀬町にあります。横瀬町もそうですが、やっぱりキレイなロケーションと美味しい食べものって地域にそれぞれ絶対にある。そこにサウナがハマるとおのずと食べ物や土地の資源にフォーカスが当たると思っています。それに僕がテントサウナの人であることが伝わると、みんな「うちにはこんなうまいものがあるよ」とか綺麗なロケーションの話など、その土地の情報をたくさん教えてくれるんです。地域活性の可能性を感じましたし、サウナを通してすごく面白いことができると思いましたね。━━アウトドアサウナ事業を実現させるために大切なポイントはなんでしょうか。<GALA meets SAUNA>の 経験も踏まえて教えてください。村上 一番のポイントは先ほどもお話したように“体験価値”です。圧倒的なロケーション、移動のおもしろさ、自然のなかにあるサウナと水風呂、外気浴も寝転ぶことができるチェアを用意したり、焚き火を眺められるようにしたり付加価値となる部分についてはこだわりました。

橋本 そして今回きちんとお伝えしたいなと思うのが、サウナブームだからやっているんじゃないってことですね。今まで「川とサウナ」チームでやってきた知見をしっかり活かしたいと思いました。アウトドアサウナに対してももちろん「危なくないの?」という声もある。例えば火事を起こすとか、怪我をするとか、そういった問題が起きたら僕らだけでなく、アウトドアサウナ業界全体にいろいろ影響するわけですし。とにかくやっちゃおう!っていうのは、僕らがやりたいことと全然違います。━━なるほど、ガイドラインをしっかり作りたいと?村上 そうです。法規制がまだまだ曖昧であることも意識して、建築、消防、保健所などに通ってお話をしたり。どうやったら実現できるかっていうのを一緒になって考えました。特に保健所とは公衆浴場法の解釈について条文を照らし合わせながら議論してつくっていきましたね。橋本 今回、僕らのチームで運営マニュアルを作らせてもらいました。やっぱりひとつきちんとベースがあることが大切ですよね。例えば一酸化炭素チェッカーを導入しましょうとか、安全のためのチェックリストを作ることもそうですし、誰かがそういったマニュアルをつくることで、次の人も活用しやすいし業界全体に広がればそれは盛り上がりにもなりますし。━━ルールがないからこそ、しっかりルールをつくること。これって本当に大事な部分ですね。村上 スキー場のように、何もないところに何かをつくることだけでも難しい。サウナというルールが曖昧なものを持っていくなら尚のこと。だからそこ、そこをしっかりしたいと思い、こだわりました。 橋本 今回のフォトレポートにも登場しますが<GALA meets SAUNA>は、雪の造設部隊がつくっているんです。普段、スノーボードのジャンプ台やビル級のキッカーをつくるくらいのプロチームです。彼らが日々メンテナンスをしてくれることも運営上大切ですし、ガーラ湯沢の技術力でのサポートはほんとにすごいです。


━━最後に、村上さん、橋本さんが考えるアウトドアサウナの未来。今後の展望などあれば教えてください。橋本 もちろんガーラ湯沢でも、今回は2週間限定だったので、夏なども含めてやっていきたいですね。こういった機会をもって地域をどんどん元気にしていければいいなと。魅力のある場所にサウナを足していきたいです。駅とかも面白いですし、海外とかでもやりたいですね。村上 そうですね。今後も、お客様に体験価値として提供できるのであれば、どこへでもいきたいです。今回もそうでしたが、ただただ作れば良いってものじゃなく、やっぱりこだわりたいのは“愛のあるサウナ”をきちんとお届けしていきたいですね。橋本 ほんとに! やっぱりサウナブームに乗っかってあまりサウナ好きでないのに企画してしまう方々も割といるので。サウナに対して変な噂を提供したくないですし、サウナ愛がある人と一緒にプロジェクトを動かすことも大切ですね。村上 今回最高に嬉しかったのが、「サウナ愛を感じた」っていうコメントをいただいたことですね。アウトドアサウナの気持ち良さを伝えていきたいという想いはありますが、やっぱり、サウナを通して自然を感じること、地域を知ってもらうことはこれからもコンセプトになると思います。サウナを媒介して自然環境と自己、あるいは地域と自己、人と自分の関係を少し見つめなおすというか。あるいは頭で考えていることと身体で感じていることとの間でサウナが機能するっていう、そういう体験をしてもらえるような取り組みにしていきたいですね。

PHOTO REPORT:“ととのう”を超える氷点下水風呂
<GALA meets SAUNA>の完成形はこちら。快晴の日はゲレンデを眺めながら圧倒的なシチュエーション!

ゼロから水風呂のプールを雪で造設。重機を使いゲレンデから集めた雪を運び、水風呂の土台をつくっていく。巨大なプールを設置し、スコップで整え……重労働です!











完成形の水風呂はこちら。シングルプレイヤーも驚きの氷点下に達するガーラ湯沢オリジナルの水風呂です!

PHOTO REPORT:体の芯まであたたまる本格派テントサウナ
雪山でも100度まであがる本格派テントサウナ、近年はロシア製のものがスペックが高いらしい。「川とサウナ」チームのレクチャーを経て、ガーラ湯沢のサウナチームによって組み立てられています!











4名でゆったり使えるテントサウナの完成形! 薪をいれたら30分程度で温まり、密閉性も高いのでしっかり身体を温めてくれます。


PHOTO REPORT:ゲレンデを守る部隊、スノーキャット戦隊現る!
そして<GALA meets SAUNA>潜入レポートの最後に、ガーラ湯沢のゲレンデを守る部隊、毎日朝と晩にスキー場全コースの整備をしているスノーキャット(雪上車)が7台大集結してくれました! まるで戦隊モノの登場シーンをみているかのような迫力です!







GALA meets SAUNA 設営チームのみなさん

GALA meets SAUNA 仕掛け人&運営サポート村上悠さん (JR東日本事業創造本部/アウトドアサウナ事業ファウンダー)× 橋本健太郎さん(川とサウナ/サウナフルネス/スキーマ取締役)

アウトドアサウナ「GALA meets SAUNA」~新しいサウナフィールド誕生~
Photo by 大石 隼土Interviewer/Text&Edit by Sanae Akechi/Asami Shishido取材協力:ガーラ湯沢/JR東日本事業創造本部/アウトドアサウナ事業/川とサウナ(スキーマ)一部写真提供:ガーラ湯沢・GALA meets SAUNA 公式/サウナランド
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