「俺らアーティストにとって作品を出すってことは、配信でペッと出したら『終わり』ってことじゃない。昔出た作品が旧譜とかってことじゃなくて、みんなが作品に初めて触れたその瞬間こそが新譜を体験することなんだ。

EVENT REPORT:PUNPEE Presents. “Seasons Greetings’20” Approaching the back sideTongpoo videos vol.2
このイベントは昨年11月23日に有料配信された動画コンテンツ『PUNPEE Presents. “Seasons Greetings’20”』を、出演者のPUNPEE、原島“ど真ん中”宙芳、DJ ZAI、The Anticipation Illicit Tsuboi、なかじまはじめ、METEORらのお喋りとともに、USEN STUDIO COASTの大画面&大音量で観客と一緒に楽しむ企画。PUNPEEがアートワークも含め、作品全体の細部にまで強いこだわりを持っているのは有名な話。1stアルバム『MODERN TIMES』や過去のミックスCDでもオーディオコメンタリーによる解説盤を発表している彼のトークを生で、しかも出演者たちも交えて聞けるのはかなり贅沢なことだ。映像再生はPUNPEE自らがDVDJで行った。


『“Seasons Greetings’20”』はPUNPEEの地元・板橋からSummit仕様に改良したロンドンバスに乗って、愉快な仲間たちとパフォーマンスしながら新木場USEN STUDIO COASTへ向かうストーリー。このアイデアは「コーストといえば、新木場と渋谷間で(シャトル)バスが出てるイメージ」から生まれたという。スクラッチを担当するDJ ZAIは「(バスが)揺れるからアホほどスクラッチしづらかった」と回想する。ここでDJ ZAIが使っているターンテーブルは、2014年に倒産してしまった日本のDJ機器メーカー・Vestax(ベスタクス)が2000年代初頭に発売した、ミキサー一体型のレアモデル「QFO」。ストラップを装着すれば、ギタリストのようにステージでパフォーマンスできる。PUNPEEはこの 『“Seasons Greetings’20”』で使用するために、e-bayでフランスから取り寄せたのだとか。その姿勢にIllicit Tsuboiは感嘆し、原島は「ジュラシック5(Jurassic 5)も(肩から下げるターンテーブル)使ってたよね」と豆知識を付け足した。



『“Seasons Greetings’20”』の映像を監督したのは丸山雄大。最近は各話違うラッパーが登場するドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』のエンディング映像を手がけたことでも大きな話題になっている。PUNPEEがその話題に触れると、原島が「PUNPEEとMETEORくんは(STUTS&松たか子 with 3exes “Presence”で)ラップするんですか?」とぶっこみ系の質問。これまで登場したKID FRESINO、BIM(The Otogibanashi’s)、NENE(ゆるふわギャング)、Daichi Yamamoto、T-Pablow(BAD HOP)といったメンバーを見ると、多くの人が「そのうちPUNPEEも出るのでは?」と思ったはず。これに本人は「来てないです! 本当にびっくりしました。

中盤の見所はSTUTSが叩くMPCのビートに合わせてPUNPEE、METEOR、原島、GAPPERがフリースタイルをするシーンの裏話。Illicit TsuboiはSTUTSのマニアックなネタ選びに関心する。

さまざまな寄り道を経て、バスはようやくUSEN STUDIO COASTに到着。直前にバス内で飲んだ無数の缶ビールが映し出される。「これ、収録時間が長すぎて全部自分が飲んだやつで」と原島が言うと、間髪入れずにIllicit Tsuboiが「君たち、来るの遅すぎるよ!」とツッコミを入れた。なんとIllicit Tsuboiとなかじまはじめは現場で6時間近く待たされていたのだとか。そもそもMETEORと合流した段階で相当スケジュールが後ろ倒しになっていたと話す。その間、二人はずっとビールを飲んでいたので「みんなが来た時は泥酔していたよ」と笑った。


“Pride feat. ISSUGI”の演奏後、配信ライブではPUNPEEによるMCがあるのだが、そこで疲れ切ったDJ ZAIの表情が大写しにされる。

クリエイティブレーベル・Tongpooとは

2020年から始まったコロナによる自粛で、エンタメ業界を取り巻く環境はすっかり変わってしまった。もちろんそれはUSEN STUDIO COASTも例外ではなく、このクリエイティブレーベル・Tongpooも、使用頻度が極端に減った会場を有効利用したい当事者たちの危機感から立ち上がったものだった。有料コンテンツとして配信された『PUNPEE Presents. “Seasons Greetings’20”』はユニークなアイデアとこだわりの詰めこんだ映像が高く評価され、「SPACE SHOWER MUSIC AWARDS 2021」の「BEST LIVE STREAMING」を受賞した。さらにPUNPEEも愛用するオーディオケーブルブランド「オヤイデ電気」とのコラボ商品も制作販売中だ。コロナ禍で公演することさえもままならない中、ターンテーブリスト世界王者・DJ KENTAROと歌舞伎音楽/日本舞踊の横笛奏者・藤舎貴生、そしてライブペインティングアーティスト・JUN INOUEというジャンルレスな面々によるセッション映像も配信。




コロナの影響がどこまで続くのか、誰も見通しはつかない。だが昔と同じようにライブを楽しむことは難しくても、今回のトークイベントのような楽しみ方もある。だからこそIllicit Tsuboiが語った「環境が変われば、体験はすべて別物になる」という言葉には改めて考えさせられた。消費ではなく体験。音楽が好きなのではあれば、今各々が向き合うべき課題なのだ。そんな体験の醸成を後押しするTongpooのこれからの動きにも注目したい。次回、vol.3は世界が注目するヒューマンビートボクサーSO-SO。マザーファッ子監督のもと、初の撮り下ろしライブ映像を配信決定!
Tongpoo videos vol.3の詳細はこちらText by 宮崎敬太Photo by Masanori Naruse
INFORMATION

Tongpoo
エンターテインメントに新たな定義(ストーリー)を吹き込むコンテンツメーカー"Tongpoo"(トンプー)。映像・音楽・アート・ファッション・スポーツ、様々なカルチャーを背景に『遊びと人との接点』である"体験"をつくる集団です。Tongpoo Storeその"Tongpoo”が運営するECプロジェクト、Tongpoo store.ジャンルレスなコラボ企画やオリジナルブランドのリリースなど、様々な展開で"新たな遊び"を生み出します。HP|Twitter|Instagram|Facebook

SO-SO THE LOOP ALIEN|Tongpoo videos vol.3
2021年8月2日(月)OPEN 20:30/START21:00(8月4日(水)23:59までアーカイブ視聴可)視聴:¥2,200出 演:SO-SO 監 督:マザーファッ子映像制作:REALROCKDESIGN協力:クリエイティブマンプロダクションPhoto by Masanori Naruse詳細はこちら
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