「彼がJ1へ行ったら普通にやれる」Jリーガーが注目するJ3で格の違いを見せ続ける実力者とは
「彼がJ1へ行ったら普通にやれる」Jリーガーが注目するJ3で格の違いを見せ続ける実力者とは

たまにJリーガーから取材したい選手を聞かれることがある。昨年12月にJリーガーたちが短いオフを迎えた際に、ある選手から前述した質問を投げかけられた。

とある選手を取材したいと話すと、質問をした彼は大学時代にその選手と対戦した経験があるという。「意味が分からないくらい上手かった」「彼がなぜJ3でプレーし続けているか分からない」と振り返っていた。

それからその選手の話を他のJリーガーや元プロ選手に伺いを立てると、「対戦したことがあるけど、とにかく嫌だった」「オフザボールで仕掛ける動きを何度も見せられて落ち着けなかった」「彼がJ1へ行ったら普通にやれるんじゃないか」といった具合に手放しで絶賛した。

あまり他人をほめない彼らがほめちぎる選手の名前は、J3奈良クラブMF岡田優希だ。知名度に反して、同業者が評価する優れた実力に迫る。

(文・構成 高橋アオ)

三笘薫、相馬勇紀に比肩する天才チャンスメイカー

川崎フロンターレのアカデミー出身の岡田は育成年代でも別格の存在だったという。当時アカデミーで彼の活躍を見ていた後輩は「三好康児くん、三笘薫くん、板倉滉くんらと同じくらい圧倒的な存在だった」と振り返った。

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アカデミー時代岡田とともにプレーした三笘

世代別代表にはU-16日本代表に選出された経験もあり、天才チャンスメイカーとして川崎アカデミーをけん引する存在だった。あの三笘、三好、板倉と後に日本代表に名を連ねる実力者と比肩するスキルを持った岡田は、アカデミー卒団後は大学サッカーの名門早稲田大へ進学した。

同期には元日本代表FW相馬勇紀(J1・FC町田ゼルビア)、GK小島亨介(J1柏レイソル)、DF冨田康平(J3・AC長野パルセイロ)ら実力者と切磋琢磨し、4年次には関東1部制覇を達成。岡田自身もリーグ戦15得点で得点王に輝いた。

岡田が大学生のときに対戦した選手は「駆け引きが上手すぎて捕まえきれなかった。正直相馬くんを相手にするよりも嫌だった」と口にした。早稲田大卒業後の岡田は当時J2町田に加入した。

町田退団後はJ3クラブを転々としているが、実力はさび付くことなく猛威を振るっている。次項でプロが絶賛する実力を持ったチャンスメイカーの力を考察する。

そもそもJ3にいることがおかしい

今年29歳を迎えるチャンスメイカーの実力はどれだけすごいのか。J3直近3シーズンの成績は2022年シーズンはテゲバジャーロ宮崎でリーグ戦23試合14得点3アシスト、2023年シーズンはギラヴァンツ北九州でリーグ戦31試合6得点2アシスト、昨季奈良クラブでリーグ戦38試合13得点5アシストと奈良と宮崎では圧倒的な結果を残していた。

ただ岡田が所属してきたクラブの成績は好調とはいえず、2022年シーズンの宮崎は18チーム中9位、2023年シーズンの北九州は20チーム中最下位、昨季の奈良は20チーム中17位と苦しい結果に終わった。

それでもチームの実力や好不調に影響されない抜きんでた実力があるため、毎シーズン結果を残してきた。結果を出し続けてきた理由は総合力の高さだ。

ゴール前での冷静さ、選択を誤らない判断力の良さは並外れており、難しい態勢でもボレーやワンタッチシュートで沈めるキック精度、相手の虚を突いたラインブレイク、すり抜けるように推進するドリブル、切れ味鋭いカットインシュート、球威のあるミドルシュートとJ3レベルでは考えられないオプションを備えている。

【今季福島ユナイテッド戦で岡田が決めたJ3初ゴール】

過去に岡田と対戦した選手は「あのレベルの選手がJ3にいることがそもそもおかしい。何をしてくるか分からない。ずっと休まず駆け引きをしてくる。センターフォワードじゃないのにあれだけ結果を出せることがすごい」とJ3屈指の脅威だと明かした。

どの相手チームも岡田を警戒しているという。今季も奈良でリーグ戦2試合1得点1アシストと猛威を振るっており、いつステップアップしてもおかしくないと多くのサッカー関係者が注目する存在だ。

今後ステップアップするかに注目

そもそも町田でも3シーズンでリーグ戦83試合(先発は31試合)4得点と結果を残していた選手がなぜJ3へ移籍したのか。当時を知る関係者に聞くと町田退団後に単身渡独し、ドイツのチームの入団セレクションを受験したという。

ただそこでチャンスをつかみ切れず、川崎のアカデミー時代の恩師である当時宮崎の指揮官だった髙﨑康嗣(やすし)監督に見込まれる形で宮崎へ加入した。

「そもそもブンデスリーガに行こうとしていた人がJ3にいるんです。どこのチームにいようと、岡田くんがすごいことに変わらない。僕は湘南の福田選手や浦和の長倉選手みたいに上へはい上がるような感じになると思っていますけど」と宮崎時代の岡田と対戦した選手はステップアップを予期していた。

「彼がJ1へ行ったら普通にやれる」Jリーガーが注目するJ3で格の違いを見せ続ける実力者とは
「彼がJ1へ行ったら普通にやれる」Jリーガーが注目するJ3で格の違いを見せ続ける実力者とは

当時J3のYSCC横浜からJ1湘南ベルマーレへジャンプアップした快速FW福田翔生(しょう)、関東1部東京ユナイテッドから当時J2ザスパクサツ群馬、J1アルビレックス新潟そしてJ1浦和レッズへとたどり着いたチャンスメイカー長倉幹樹(もとき)と下部リーグからサクセスストーリーを辿った選手もいる。

昨季奈良でクラブ史上初のJリーグでのハットトリック(自身2度目)を達成するなどキャリアハイの活躍を披露しているだけに、今後の活躍次第によってはJ2どころかJ1へのステップアップ移籍の可能性もあるだろう。

一方で岡田は実直で真面目な性格であり、チームの勝利を熱く求める人柄だと複数関係者から聞いた。奈良を高みへと導く形で、当人が最も幸せな形でキャリアを歩んでほしい。

同業者であるプロが手放しで絶賛する実力を持った岡田は、今後どのようなキャリアを描くのだろうか。現在は能力に見合った知名度ではないが、いつの日か大観衆を沸かせる岡田を観られる日が近いかもしれない。

いま一番取材したい選手の今季の活躍を見逃さないようにしたい。

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