
[J2第26節、ジェフユナイテッド千葉 1-0徳島ヴォルティス、8月16日、千葉・フクダ電子アリーナ]
2位千葉が3位徳島に1-0で勝利し、首位水戸ホーリーホックとの差を勝点3に縮めた。
今季途中よりJ1横浜FCから期限付き移籍で加入したFW森海渡(かいと)は決勝点を誘発。
歓喜の裏で悔しさをにじませたストライカー
首位に迫る勢いで勝点を積み上げている千葉。接戦を制した前節RB大宮アルディージャ戦(1○0)後は、記者会見場にまで声が届くほど、選手たちはロッカールーム内で感情を爆発させていた。
イレブンの多くが清々しい表情でバスへ乗り込む中、やり切れない思いを抱えているストライカーがいた。今季途中より横浜FCから期限付き移籍で千葉に加入した森だ。
先発出場した森同試合で先発出場した背番号39は再三の決定機を迎えたが、ゴールネットを揺らせず。地面を叩き付け、感情をあらわにした。
「言ってしまえば、自分が決めて負けるくらいの方が清々しいまであるタイプなので悔しかった」と素直な想いを吐露。自身のゴールで勝利に導きたかったからこそ、歓喜の裏で男は唇を噛んだ。
J1柏レイソルの下部組織で育ち、高校卒業後は強豪筑波大へ進学。大学3年の2021年12月に柏とプロ契約を結び、翌年はリーグ戦15試合4得点を記録した。
プロ2年目にあたる2023年シーズンは徳島へ期限付き移籍し、リーグ戦37試合13得点を奪ってみせた。ただ、横浜FCへの完全移籍を果たした昨季はリーグ戦3試合無得点。

横浜FCで今季リーグ戦出場2試合にとどまっていたストライカーは「試合に出たくてうずうずしていた」と移籍を決断。
「それ(負傷)は運命なので、返ってこない」と力強く前を向いている森は、「古巣なので沈めたい」と3位の徳島戦に臨んだ。
次こそ正真正銘のゴールを奪う
ここまでリーグ最少の13失点と好守を見せる徳島は、この試合でも堅守を披露し、ホームチームを苦しめた。
千葉が立ち上がりから試合の主導権を握り、前半だけでシュート8本を放ったが、ゴールネットを揺らせず。後半5分には森がボックス内左からを右足を振るも、相手ゴールキーパーにストップされた。
ストライカーの位置で先発出場した千葉の背番号39は「決め切る力というか、決定力のところは自分自身に問題がある」と課題を口にしつつも、攻守で奮闘。
ケガの状態は「万全」と言い切るように、攻めれば身体を張ったパワフルなポストプレーでリズムを生み出し、守れば相手ディフェンダーへの激しいチェックで、チームを勢いづけた。

「万能で何でもできるフォワードを目指している。その上でチームを勝利に導く得点を奪いたい」と、ゴール前へのスプリントを繰り返した森の献身性が決勝点につながった。
後半20分に敵陣右サイドでボールを奪った千葉は、すぐさまFWカルリーニョス・ジュニオにスルーパスを供給。ボックス内へ侵入した同選手から上げられたグラウンダーのクロスは、走り込んでいた森の目の前へ。
「カル(カルリーニョス・ジュニオ)がボールを持った瞬間にあそこへ飛び込むのは、練習から意識しています」とチームメイトを熟知したプレーで、古巣の堅守を崩した。

得点後は恒例のパフォーマンスである“ジェフ三唱”を披露。試合前には「(徳島への)リスペクトもあるので、できるかな」と口にしていたものの、ストライカーは割れんばかりの歓声を前に、力強く拳を三回突き上げた。
終盤には徳島の猛攻を受けるも、イレブンはゴールを死守。ホームで行われたリーグ戦7試合ぶりとなる白星をつかみ取ると、森はピッチ上に倒れ込んだ。

チームの勝利に貢献した手ごたえから「やり切ったかなって。いまはそういう感じの清々しさがあります」とエゴイストは口にするも、「勝てて良かったというのはありますが、欲を言えば自分がしっかりと得点を決めて勝ちたかった」とゴールハンターとしての飢えは満たされていない。
次節は今月24日午後7時からユアテックスタジアム仙台でJ2ベガルタ仙台と対戦。勝利すれば首位奪還を狙える一戦だ。
「こういう状況の方が楽しい。ヒリついている方が燃えるし、こういう空気の中でやれるチャンスもない。
(取材・文 浅野凜太郎、写真 繩手猟)