
[J2第15節北海道コンサドーレ札幌 1-1 いわきFC、5月11日、福島・ハワイアンズスタジアムいわき]
リーグ戦初対決は互いに譲らず引き分けとなった。前半34分に札幌DF家泉怜依が古巣いわきに強烈ボレー弾で先制して前半は1-0でリードを保つも、後半27分のカウンター時に家泉のミスもあってペナルティキックを献上。
古巣相手にボレーで恩返しも
0-0の前半34分にFW顔負けの鮮烈ゴールを決めた。右サイドからMF田中克幸がペナルティエリアへクロスを供給すると、FWジョルディ・サンチェスが頭で折り返したボールを家泉が力強く右足を振り抜いてボレーシュートをゴール左側へ沈めた。
豪快な先制弾で古巣に恩返しした背番号15は「ファーが弱いのは分かって立っていた。そこにジョルディや(DF高尾)瑠くんが入ってくれたので、折り返しを狙ってゴールに入ったと思います。
(自身のいわき所属時と)やり方は変わっているところもあると思う。でも自分が真ん中にいれば相手の強い選手が真ん中に来るので、そこでファーが空くことは分かっていた。それはチームで分析していました」と胸を張った。
この日は空中戦で圧倒的な強さを見せてボールをはじき返し続けた家泉。身体を張った守備で相手のキーパスを寸断し、攻めれば鋭いボレー弾を決めるなど、攻守において脅威になり続けた。
相手のクロスを身体を張ってブロックする家泉(中央)ただ後半27分にアクシデントが発生した。相手のカウンターが始まり、ゴールへと向かういわきFW谷村海那に家泉が対応しようとするも、滑って転倒してしまった。ボールを受けた谷村はファウルをもらってPKを獲得し、同29分に痛恨の失点を喫した。
自身のミスを「守備の体勢が悪くて、もっと楽に反転すれば行けましたけど、難しくやって滑ってしまった。そこは僕のせいなので、反省しています」と肩を落とした。
第13節モンテディオ山形戦で1-0の完封勝利でチームは上昇の流れをつかめたと思えたが、次節ジュビロ磐田戦では2-4で完敗とチームは波に乗り切れないでいる。それだけにこの試合は必勝の思いで臨んだが、守備対応に苦慮(くりょ)する形で勝ち星を逃してしまった。

「僕がいわきでやったときも滑りまくっていたので、僕自身が改善できていなかった。あとは(守備)対応をしっかりしないと、みんながあれだけ戦ってくれて、自分のミスでやっちゃっているので、そこはすぐに修正したい」と課題の克服を誓った。
岩政大樹監督は背番号15の得点とミスを天秤にかけて「トントンですね」と手きびしい評価を下した。空中戦で圧倒的な強さを誇るセンターバックの成長がチームの上昇の鍵となる。札幌で2季目を迎えたいま、家泉は真価を証明できるかの正念場を迎えている。
「ここで敵チームとして対戦するのは新鮮な気持ち」
流通経済大を経て当時J3だったいわきに入団し、最先端の科学メソッドに基づいたフィジカルトレーニングなどにより比較的に成長。フィジカルの強さと優れたエアバトルによりルーキーイヤーで定位置をつかんだ男は、J2初昇格とJ3のベストイレブンに入るまでの存在になった。
いわきにとって初のJ2となった2023年シーズンも引き続き主力センターバックとして君臨し、チームの2部残留に大きく貢献してみせた。

昨季は札幌がJ1、いわきはJ2にいたため対決する機会はなかったが、今季は直接対決が実現した。
背番号15にとっていわきは思い入れのある特別なクラブだ。試合前にかつての仲間にあいさつするシーンなども見られた。「ここで敵チームとして対戦するのは、新鮮な気持ちというか。試合はそういう感じがありました」といままでに感じたことがない思いでかつての古巣と火花を散らした。

試合終了後にはいわきサポーターへあいさつに出向き、サポーターともコミュニケーションを取ったという。辛いとき、折れそうなときも何度も温かい声援で助けてくれたファンに向けて「今シーズン苦しい状況で、これだけ応援してくれるのは本当にいわきの強み。負けや、引き分けが多かったとしても、ずっと温かい声で鼓舞(こぶ)してくれる。そういうところはいわきの良さだと思う。
サポーター思いの優しくも屈強な男は、赤黒の勇者としてクラブに忠誠を誓っている。遠いいわきに駆けつけて、熱い声援を送り続けたサポーターたちに今度こそ勝利の華を届けるために、次の一戦は必勝の覚悟で臨む。

次節は17日午後2時にホームでカターレ富山を迎え撃つ。家泉は「きょうも勝っていないし、前回も負けている。ホームで勝ってしっかり波に乗っていきたい。もう勝つしかないぞということで、僕らもそれは分かっているので、サポーターと一緒に勝ちに行きたいなと思います」と赤黒のサポーターに勝利を届け、札幌を1シーズンでJ1復帰へと導く。
(取材・文 高橋アオ)