かつてJ1複数クラブに注目された特別指定選手最多出場記録を誇るストライカーが天皇杯で同点弾をアシスト
かつてJ1複数クラブに注目された特別指定選手最多出場記録を誇るストライカーが天皇杯で同点弾をアシスト

[天皇杯2回戦、J3鹿児島ユナイテッドFC1-2J2モンテディオ山形、6月11日、NDソフトスタジアム山形]

鹿児島は1-2で山形に惜敗し、3月に開催されたJリーグ杯1回戦(0●2)以来の再戦は連敗となった。

この日先発した鹿児島FW近藤慶一(よしひと)は優れた身体能力の高さとフィジカルの強さを生かした空中戦で格上相手に渡り合った。

後半18分にはFW米澤令衣の同点弾をアシストするも、同35分に勝ち越しを許して同杯2回戦敗退が決まった。

同点弾をアシストした鹿児島のグラディエーター

鋼のような肉体で奮闘する姿はまさに鹿児島のグラディエーター(剣闘士)だ。

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積極的に空中戦を挑んだ近藤(左)

得意とする空中戦の強さで存在感を見せ続けた近藤にチャンスが舞い降りた。後半18分にゴール付近で米澤にラストパスを供給し、同点弾をアシストした。

「自分の持ち味は対人や、空中戦のデュエルという部分なので、アピールできたかなと思います。アシストの部分で得点に絡めたので大きなアピールポイントだったかなと。ただアシストができたところは評価していいと思いますけど、前半のクロスのシーンで自分が(得点を)取り切れていれば、逆転して勝てたかなというシーンもありました。 あそこは自分の中で、まだ課題として持っていないといけないです。フォワードである以上、得点にこだわらないといけない」と複雑な表情を浮かべた。

果敢(かかん)にゴールへ迫ったが、待望のゴールは奪い切れず、後半19分にピッチから退いた。その後同35分に山形の勝ち越し弾を許して大会敗退が決まった。

「立ち上がりで山形さんに『やられたな』という印象が強いです。立ち上がりで自分たちがうまく相手陣地に攻め切れなかったところがきょうの敗因かなと思っています」とほぞを噛んだ。

3月に開催されたJリーグ杯で敗れた相手にリベンジを果たしたかったが、結果は惜敗となった。それでもあのとき取れなかった得点をアシストできたことは大きな進歩だ。

「練習の中でも得点は取れています。自分の中でも得点感覚という部分は養えていると思うので、このいい感じを次の八戸戦に向けてやっていきたいと思います」とこの敗戦の糧をリーグ戦にぶつける。

優れたポテンシャルを秘めた未完の大器

今季からJ2いわきFCから期限付き移籍した近藤は、すさまじいポテンシャルを秘めた選手と関係者が絶賛した選手だ。

名古屋学院大時代は横浜F・マリノス、名古屋グランパスの練習生としてJエリートリーグに出場するなど複数のJ1クラブから注目を集める存在だった。

あるJリーグ関係者は「身体能力、フィジカルに優れたポテンシャルを秘めている。未完の大器だよね」と絶賛していた。

2023年にはいわきへ入団し、特別指定選手としてリーグ戦26試合に出場。J1浦和レッズMF松尾佑介が横浜FC(仙台大在籍時)で記録した特別指定選手最多出場記録を更新する活躍を見せた。

かつてJ1複数クラブに注目された特別指定選手最多出場記録を誇るストライカーが天皇杯で同点弾をアシスト
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昨季はいわきでリーグ戦23試合に出場した近藤

ただ期待を受けていた翌シーズンでブレイクし切れず、今季加入した鹿児島でもリーグ戦8試合2得点と実力を出し切れていない。特別指定選手時代の思い切りの良さが出ていないように見える。

「そういう部分では(思い切りの良さが)出しづらくなっていると自分の中で思います。契約年数もありますし、自分が結果を出さないと、この世界では終わる。プレッシャーなどは感じているので、そこも特別指定選手とは違いますね」とプロの世界でもがいている。

ただ自分の成すべき仕事は理解している。センターフォワードを任されている男は、課題とタスクから視線を背けていない。

「自分の課題である守備の追い方は、もう1つ(上を目指して)やっていかないといけない。ゴールの部分でやっぱり目標の(リーグ戦)10ゴール、2桁というところを取らないと、上の方では通用しない。そこを目標にやっていきたいと思います」と、言葉に力を込めた。

鹿児島が昨季までいたJ2へ復帰させて、いわきへ帰還する。未完の大器は南国で成長して、大輪の花をつけようとひた向きに努力している。ここで挙げた1アシストを、返り咲くための一歩にしたい。

かつてJ1複数クラブに注目された特別指定選手最多出場記録を誇るストライカーが天皇杯で同点弾をアシスト
かつてJ1複数クラブに注目された特別指定選手最多出場記録を誇るストライカーが天皇杯で同点弾をアシスト
空中戦で強みを出してアピールした近藤(右、白)

「いわきもいまはあまり順位は良くはないので、自分が成長して帰ったときに、(鹿児島での経験を)どのように還元できるかを考えながら、鹿児島を上に上げることを目標にしています」と高らかに目標を掲げた。

もう未完の大器とはいわせない。ひた向きに、堅実に努力する近藤は、はい上がるようにしてチームのJ2復帰に向けて着実に歩むを進める。

(取材・撮影・文 高橋アオ)

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