
アディダスジャパンと日本サッカー協会(JFA)は1日、より多くの中学生年代の女性がサッカーを続けられる環境作りをサポートするadidas・JFA共同プロジェクト「HER TEAM」の2025年度の募集を開始したと発表した。
「スポーツを通して、私たちには人々の人生を変える力がある」という理念のもと、全ての人々が安心してスポーツに取り組むことができるよう、様々な活動を行っているadidas。
日本では、2019年より女子中高生のスポーツ継続率の向上を目指した活動を開始し、2020年には女子中学生のチーム創設支援を通し、U-15世代がプレーするための環境を整えることを目的としたadidas・JFA共同プロジェクト「HER TEAM」を立ち上げた。
そして、2020年に始まったこのプロジェクトが5回の開催を経て、2025年に6年目を迎える。女子サッカーの未来を支える取り組みとして、さらなる広がりを目指していくという。
近年、女子サッカーが世界各地でこれまでにない盛り上がりを見せており、欧州選手権UEFA Women’s EURO 2025では、トータル観客数657,291人を記録し、2022年大会の574,875人を大きく上回り、総観客動員数が史上最多となった。
日本でもプロリーグが、2020年に開幕するなど、女子サッカーが人気を博す一方で、中学生年代においては、女子チームは男子チームと比較してわずか2.8%しか存在せず、女子サッカープレーヤーの5人に1人が13歳になるとサッカーを辞めてしまうという現状がある。47都道府県のうち「7つ」の地域には女子チームが存在しないという(※2025年現在、JFA登録に基づく)。
こうした環境を変えるべく立ち上げられた「HER TEAM」プロジェクトは、2025年に6年目を迎えるこの機会に、これまで以上に女子中学生年代のチーム創設を後押しし、審査を通過した新規創設予定チームを対象に各種サポートを提供していくとのことだ(※新規創設チームのみが対象となり、過去存在していたチームや現在活動を休止しているチームの再立ち上げ、再始動は対象外)。
以下はプレスリリースより、「HER TEAM」2025年度の募集概要。
adidas・JFA共同プロジェクト「HER TEAM」2025年度募集概要
■創設サポート内容:
・メンバー募集のための告知ツール
・ユニフォームの提供(約20名分想定)
・サッカークリニックの開催
(指導協力 クーバー・コーチング・ジャパン)
・JFA及びadidasフットボール関連活動への優先ご招待
・事務局によるチームサポート
・定期的なオンラインミーティング(チーム情報交換会)
■サポート期間:
2025年12月1日~2028年3月31日 ※以降のサポートについては別途ご案内
■募集エリア:
全国(日本国内で活動するチームに限ります)
■募集数:
非公開
■募集期間:
2025年9月1日(月)より、応募特設ページ(https://forms.office.com/r/Cn9AaKGqT5)にて受付開始
※10月31日(金)締め切り後、応募内容を審査し、支援チームを発表
■募集対象:以下すべてに当てはまることが条件となります。
・中学生年代(U-15年代)の女子がプレー可能で、2026年度(2027年3月末まで)に新規創設されるチーム。
※既に「女子」以外の種別でJFA登録をされているチームが、新たに「女子」の種別でJFA登録をされる場合も対象とします。
※過去存在していたチームや現在活動を休止しているチームの再立ち上げ、再始動は対象外とさせていただきます。
・2026年4月から2028年3月までに、創設されたチームが「女子」の種別でJFA登録を完了すること。
・継続的なチーム運営を前提とします。
・adidasおよびJFAが行う「HER TEAM」の活動に参加することに同意すること。
■その他:
・中学生年代(U-15年代)の女子に特化したチームを優先してサポートしますが、幅広い年代が入会可能な女子チームの創設も対象となります。
(中学生/U-15 年代がプレー出来ることが必須となります)
・「チーム」には、部活動も含みます。
※詳細は、特設ページ(https://www.adidas.jp/herteamproject)をご確認ください。
adidas・JFA共同プロジェクト「HER TEAM」2020年度参加チーム 卒業生からのコメント
「HER TEAM」プロジェクトで創立したチームの卒業生はそれぞれの選手が新たなステージで活躍の幅を広げている。その卒業生の中から国民スポーツ大会の県選抜に選出される選手も誕生し、「HER TEAM」プロジェクトへの想いを以下のように語った。
元トルベリーノ女子ジュニアユース:中平弥音さん(和歌山県立新宮高等学校1年生)
「『HER TEAM』に参加したことで、同じスポーツをする他県の仲間と出会い、全員がはじめましてから最終日には一緒に写真をとる仲にまでなりました。自分の県ではサッカーをしている女子が少なく、大勢の女の子達が集まっていて勇気をもらいました。『HER TEAM』やこれまでの経験を活かし今後高校サッカーをがんばって行こうと思いました」
元トルベリーノ女子ジュニアユース:大西ねねさん(福井工業大学附属福井高等学校1年生)
「『HER TEAM』に参加したことで、日々の練習の積み重ねで得られた勝利の喜びや、つまずいた時に触れられた仲間の優しさをたくさん経験することができました。小学校のチームを卒団した当時、地元に女子サッカーのジュニアユースが新しくできました。サッカーを続けるかかなり迷いましたが、そこでサッカーを続けられたからこそ、高校で女子サッカーを楽しめている今の自分がいます。
最後に、サッカー日本女子代表(なでしこジャパン)関係者らのコメントも紹介。
サッカー日本女子代表 ニルス・ニールセン監督
「女子サッカーの発展において最も重要な要素のひとつは、若い選手たちが安心してプレーでき、自信を育み、そしてサッカーを続けたいという意欲を養える環境を整えることです。日本では中学年代に女子チームが少なく、プレーを続ける機会が限られていると理解しています。この大切な年代に安心できる環境をしっかりと用意できるかどうかは、将来の競技レベルに直結します。日本の育成の質は非常に高いものの、新たな取り組みがなければ次世代の選手層は広がりません。『HER TEAM』のような活動は、単にチーム数を増やすだけでなく、子どもたちが仲間と夢を共有し、目標に向かって挑戦できる土台を築くものです。こうした活動が全国に広がることで、次世代の選手たちが成長し、やがて未来のなでしこジャパンを形づくる存在になることを願っています。代表監督としても、『HER TEAM』を通じて育まれる選手たちが、将来国際舞台で活躍する姿をとても楽しみにしています。日本の女子選手たちが持つ高い能力に、適切な機会と安心できる環境が組み合わさることこそ、なでしこジャパンの長期的な成功の鍵になると確信しています」
佐々木紀夫 JFA女子委員長
「女子選手がサッカーを続ける上で、特に中学生年代には環境面での壁が指摘されています。チーム数の少なさや活動環境の制約により、サッカーを続けたくても続けられない子どもたちがまだ多くいるのが現状です。だからこそ『HER TEAM』の取り組みは大きな意味を持ちます。ユニフォームや広報ツールの支援を通じて、女の子たちが安心してサッカーを楽しめる場を提供できることは、競技の未来に直結すると考えています。
サッカー日本女子代表 長野風花
「サッカーは仲間と夢を共有できる最高のスポーツだと思っています。私自身も、小さい頃からボールを追いかける中で、喜びや悔しさを仲間と分かち合い、支え合う経験を重ねてきました。そこで学んだことや出会った人たちが、今の自分を大きく成長させてくれました。『HER TEAM』の取り組みは、これからサッカーを始めたい子や、続けたいけれど迷っている子にとって大きな支えになるはずです。練習や試合を通じて技術が磨かれるだけでなく、『仲間と一緒に歩んでいく時間』が人生を豊かにしてくれると思います。これからもっと多くの女の子が、自分の可能性を信じてサッカーを楽しみながら続けていけるように、『HER TEAM』が全国に広がっていくことを心から願っています。私自身も、この活動を応援しながら、一人でも多くの子が『サッカーが大好き』という気持ちを持ち続けられるような環境を作っていきたいです」
サッカー日本女子代表 宮澤ひなた
「女子サッカーを取り巻く環境は少しずつ良くなってきていますが、まだ『やりたくても続けられない』という子がいるのが現実です。部活動や地域のクラブチームが限られている地域もありますし、進学や家庭の事情でサッカーを諦めてしまう子も少なくありません。だからこそ、『HER TEAM』のように『安心してサッカーを続けられる場所や環境』があることはとても大切だと思います。私自身もこれまでサッカーを通じて多くの仲間や指導者に出会い、その中で得られた経験や教えが、自分の成長に直結してきました。