
クラブワールドカップのためにJリーグでも設けられた6月1日~10日の特別登録期間。
代表期間と重なったこともあり、リーグ戦のないJ1やJ2のクラブにとっては貴重な補強期間となり、優勝や昇格に向けて大きな動きを見せたクラブもあった。
その中でも衝撃的だった5つの移籍をピックアップした。
永戸勝也(横浜F・マリノス→ヴィッセル神戸)
まずは、現在J1最下位の横浜F・マリノスからJ1王者のヴィッセル神戸へ衝撃の移籍を果たした永戸勝也。
クラブで予定されていたトークイベントを「チーム事情」により急遽欠席しファン・サポーターをざわつかせると、移籍を前提とした手続きと準備のためチームを離脱。リーグ連覇中のヴィッセル神戸へ電撃移籍することになった。
神戸は初瀬亮が昨季限りで退団して以降、精度の高いキックでサポートできる左サイドバックの不在に悩まされており、“偽サイドバック”も得意な永戸に白羽の矢が立てられた格好だ。
永戸は退団コメントで「2022シーズンのJ1リーグ優勝、そしてACLを含め、皆さんと共に戦えた日々は僕にとって忘れられない時間となりました。あらためて、どんな時でも応援していただきありがとうございました」と感謝の気持ちを綴っている。
小川諒也(シント=トロイデン→鹿島アントラーズ)

その永戸が「古巣復帰か」と噂された鹿島アントラーズは、今回の移籍期間で大きな動きを見せたクラブの一つ。
J1で首位を快走している名門だが、主力DFの関川郁万(左膝複合靱帯損傷)と安西幸輝(左膝前十字靭帯損傷)が相次いで長期離脱。実力者の補強が急務となっていた。
とくに左サイドバックは安西の代わりがいない状況だったものの、日本代表で5試合の出場歴がある小川諒也をシーズンが終わったばかりのシント=トロイデンから電撃補強。
約3年ぶりのJリーグ復帰となる28歳は「アントラーズが優勝するために、全力で戦いたいと思います。よろしくお願いします!」と抱負を語っている。
千田海人(東京ヴェルディ→鹿島アントラーズ)

鹿島アントラーズが行ったもう一つの重要な補強は、関川の代役として東京ヴェルディから獲得した千田海人だ。
30歳のセンターバックは、神奈川大学から2017年に加入したブラウブリッツ秋田で6シーズンを過ごした遅咲き。2023年に東京ヴェルディへ移籍すると、城福浩監督のもと闘志あふれる守備で台頭した。
チームが16年ぶりにJ1へ復帰した昨季は27試合に出場。ただ、センターバックの層が厚くなった今季は怪我もあり8試合の出場にとどまっていた。
移籍を決断した理由について、「残されたサッカー人生で、鹿島アントラーズでJ1優勝に向けて戦うこと、そしてアジアの舞台で戦えるチャンスを自分に与えていただいたのなら、自分はそれに挑戦したいと思ったからです」と決意を表した千田。新天地でのプレーに注目したい。
小林心(高知ユナイテッドSC→ベガルタ仙台)
【お知らせ】#小林心 選手がベガルタ仙台へ完全移籍することになりましたので、お知らせいたします。
詳細はこちらhttps://t.co/k3Yrcsc5Ze#高知ユナイテッドSC #高知一心 pic.twitter.com/a3NHexDs3A
高知ユナイテッドSC (@kochi_United) June 2, 2025
「突然」という意味での衝撃度では一番だったかもしれない。
特別登録期間を控えた5月30日、Jリーグが発表した選手登録の追加・変更にて、高知ユナイテッドSCのエースストライカー小林心が、移籍発表がないまま突如登録を抹消されたことは大きな話題となった(その後抹消は削除)。
24歳の小林は2023年に流通経済大学から当時JFLの高知へ加入。今季Jリーグデビューを果たすと、ハットトリックを記録するなどリーグトップの10得点し、4月にはJ3月間MVPを受賞していた。
そんな彼の“誤報”で色々と察したファン・サポーターは多く、6月2日にJ2ベガルタ仙台への完全移籍が発表されると、高知の地でJFL時代は働きながら夢を追いかけていた若者に対し、たくさんの温かい言葉やエールが送られていた。
津久井匠海(水戸ホーリーホック→RB大宮アルディージャ)
【津久井匠海選手 RB大宮アルディージャへ完全移籍のお知らせ】
この度、津久井匠海選手がRB大宮アルディージャへ完全移籍することが決定しましたので、お知らせいたします。https://t.co/a0mhsRcHQ7#津久井匠海 @takumi_tsukui#水戸ホーリーホック pic.twitter.com/OK7C3W3H9e
水戸ホーリーホック (@hollyhock_staff) June 10, 2025
最後は、6月10日の特別登録期間最終日に移籍が発表されたMF津久井匠海。J3アスルクラロ沼津から今季加入したJ2水戸ホーリーホックで大黒柱となり、チームも10戦負けなし(8勝2分)で3位に急浮上してきた。
J1へのステップアップもささやかれていなか、23歳が移籍を決断したのは、水戸と同勝点の2位でJ1昇格を争っているRB大宮アルディージャ。直接的な“ライバル”へのまさかの転身だった。
「この選択は全ての方に応援していただけるものではないかもしれません。しかし、自分が目指すべき目標と幼い頃からの夢に向かって新たなチャレンジをすることを決めました」と素直な思いを綴った津久井。
水戸もすぐさま動き、同じ日にJ2のモンテディオ山形からMF加藤千尋、JFLのFCティアモ枚方からDFフォファナ・マリック、そしてJ1のFC東京からMF塚川孝輝を獲得(※塚川のみ期限付き移籍)。津久井の穴を埋めるべく最大限の補強を行っている。
ここまで紹介した以外では、柏レイソルがFW木下康介(サンフレッチェ広島へ完全移籍)、MF瀬川祐輔(川崎フロンターレから完全移籍)、DF馬場晴也(北海道コンサドーレ札幌から完全移籍)、FW小見洋太(アルビレックス新潟から完全移籍)と大きな動きを見せた、異例の6月の移籍マーケット。
最終的に誰のもとへ「歓喜」は訪れるのか。当事者それぞれが、自らの選んだ道を「正解」にするべく残りのシーズンに挑む。