
2004年3月に開催された2006 FIFAワールドカップアジア2次予選シンガポール代表戦から2022 FIFAワールドカップまで、日本代表の専属シェフとして料理でサムライブルーを支えてきた西芳照シェフにQolyがインタビューを実施。
代表専属シェフ勇退の経緯、ラグビー日本代表帯同シェフとなったきっかけ、今後の目標などを赤裸々に語った。
(取材・構成・撮影 高橋アオ)
A代表専属シェフ勇退後は女子日本代表、ラグビー日本代表に帯同
――A代表専属シェフを勇退された経緯を教えてください。
元々ロシアで辞めるつもりだったけど、スタッフやマネージャーはじめずっと長い間やってきた仲間に「西さん、もう一回やりましょうよ」と言われました。「ワールドカップで負けた悔しさはワールドカップでしか返せない」と言われてね。僕も「あぁ、なるほどな」と。「じゃあカタールまでやろうか」という流れでやりました。
――A代表シェフ勇退後はサッカー女子日本代表やラグビー日本代表に帯同するなどご多忙ですね。
A代表を辞めてから女子代表とラグビーから声がかかりました。女子は前も声かけてもらったことがあって、(当時は)大仁(邦彌)さんが(日本サッカー協会の)会長(2012-2016)でしたね。一昨年から行くようになったのかな。予選からね。インドからだったかな。女子は作っていて楽しいですよ。
――A代表とは違った新鮮さがありそうですね。
いままで(女子は)現地のものしか食べてないから作っていて楽しいよ。ラグビーも楽しい。ラグビーは最高ですよ。もう喜びようというか、食いっぷりもそうだけど、作り甲斐があるね。
川島さんとかベテランの30(歳)過ぎた人は例外だけど、(サッカーの)A代表の選手たちはみんな若いうちに高校から直接クラブへ行ったりとか、社会人の経験がないじゃない。ラグビーはほとんど社会人を経験しているんですよ。だから話が通じるんです(笑)。これはいいよ。63(歳)になっても話が通じるからね(笑)。
ラグビーは刺し身もお酒もOK
A代表の専属シェフを長年続けてきた西シェフはラグビー日本代表と帯同した際、競技文化の違いから驚きの連続だったという。ラグビーではサッカーで味わえない料理も提供していた。
――競技によって献立や調理方法は変わりますか。
基本は一緒ですよね。

――サッカーとは全然違いますね。
試合の3日前は刺し身も食べられます。マグロとサーモンを200グラムくらい、それにちらし寿司も入る。もう食べる、食べる。その他に肉もがっつり食べてね。いやいやマジですごいっすよ、あの人たち(笑)。
――作り甲斐がありそうですね(笑)。
お酒の飲みっぷりもいい。次のゲームまで中9日くらいあるからお酒も普通にオッケーなんですよ。
――逆にサッカーは節制している感じがしますね。
節制というか体脂肪もあるからすごいよね。だからこそ三笘(薫)さんは活躍できるんだろうけどね。
ノーサイド文化と今後の目標
サッカーの代表とは違ってラグビーは試合が終われば交友を深めるノーサイド文化が存在する。サッカーでは考えられない文化に目を丸くする西シェフは新たなフィールドで仕事を楽しんでいる。競技を問わず料理でスポーツを支え続ける西シェフに今後の目標を聞いた。
――サッカーと全く違う文化は楽しいですか。
そうだね。試合終わってから他のチームと一緒に酒飲んだりとかさ。ノーサイドすごいよね。

――海外のチームとも交流があったのでしょうか。
イタリアで事前合宿して、試合やった夜にイタリア協会主催のパーティがありましたよ。
――サッカーでは考えられない(笑)。
そうだね(笑)。試合が終わったにみんな酒を飲んでいます。選手はそんなに飲まないんだろうけどね(笑)。
――今後の目標を教えてください。
まずは浦和レッズですね。メンズとレディースもクラブワールドカップ予選がありますから、そこに全集中です。あとはキッチンカーで全国を回る。キッチンカーで全国を回るのもいいけど、キッチンカーの許可を行くところで保健所の許可を取らなくちゃいけない。だからスタグルですね、スタグル出店です(笑)

気さくな人柄で穏やかな笑顔を浮かべて料理を作る西シェフを支持する関係者は多い。中には「あんなに心がきれいな人はいませんよね。大好きです」と、絶賛する選手もいたほどだ。