
[J1第30節柏レイソル0-2ジュビロ磐田、14日、千葉・三協フロンテア柏スタジアム]
16位の柏は0-2で18位の磐田に完敗し、これで両者の勝点差はわずか2ポイントとなった。中断期間明けの試合で柏は残留争いに引きずり込まれた。
試合終了後にゴール裏からブーイングが飛び交い、それを聞く選手たちは重苦しい表情を浮かべた。この試合で先発出場した主将のDF古賀太陽は「正直、きょうはいい部分が見えなかった」と結果を自省する一方で、「まだ何も終わったわけじゃない」と自分に言い聞かせるように言葉を絞り出した。
リーグ3試合連続失点中の柏は、この日も失点を喫してしまった。シーソーゲームの末に2-3で敗れた第29節東京ヴェルディ戦後は、守備の改善を目標にしていた。
4試合ぶりの無失点を目指していたが、「無失点」の目標は前半5分でついえた。磐田のコーナーキックを柏はクリアするも、右サイドに流れたこぼれ球を回収した磐田MF中村駿がゴールニア側にクロスを挙げると、FW渡邉りょうがダイビングヘッドで先制弾を突き刺した。
古賀は「ボールに反応してラインを下げるべきだったと思いますし、僕がちゃんと渡邉選手を認知できていれば問題なくクリアできた。もちろん自分は反省する必要がありますが、チームとしてもその前から未然に防げるシーンがあった」と失点の原因を分析。決して防げない1点ではなかった。
問題はここからだった。いい守備から流れを掴んでいきたいと考えていた柏にとって、この事態は想定外。先制点を献上した柏の選手たちは、その後も1点ビハインドが重くのしかかった。
「この試合は立ち上がりに尽きると思います。守備陣はゴール前の強度やギリギリのところで守りきるところを取り組んできましたが、そこを出し切れずに失点してしまった」と1失点目のショックがチームを狂わせた。
柏は古賀とDF犬飼智也を中心に磐田に決定機こそ作らせないが、同点弾が遠い。キャプテンは持ち前の速さと高さを武器に何度も磐田の攻撃の芽を摘むが、チームは奪ったボールをシュートにつなげられなかった。
1点差を追いかける柏は攻撃が空回るように停滞した。細かいパスでゴールへ迫りたいと考える中央の選手たちと、相手の陣形が整う前にクロスを上げたいと考えるサイドの選手たちで攻撃がちぐはぐになった。

井原正巳監督は「攻め急いでいた」と肩を落とした。
「あの失点によってゲームが難しくなりました。中断期間で準備をしてきたつもりですが、試合の入りが悪くなってしまったことで、単調なクロスボールが増えた」と、指揮官は1失点目によってゲームプランが崩れたと明かした。
勢いを失った柏は前半26分にも失点。喜びを爆発させる磐田の選手たちを横目に、柏の選手たちは話し合いもせずに、淡々と各自のポジションに戻っていった。残留を争うチーム同士の試合とは思えないほど、そのままあっさりとプレーは再開され、前半は0-2で終了した。
下を向いている暇はない
後半も柏のギアはかからない。守備を堅めてきた磐田に対して有効打を見つけられないまま、迫力のない攻撃が続いた。
攻め手を欠いたチームについて「2点を取ったジュビロが引いた展開に持ち込むことは当たり前だと思いますし、それは前節も同じでした。あのような展開の中で点を取る方法をチームとして共有しなければいけない」と、前節欠場していたキャプテンはピッチに戻って感じた危機感を口にした。
柏は後半15分に日本代表から帰ってきたばかりのFW細谷真大を投入。攻撃に厚みをもたらそうとするが、エースは相手DFの厳しいマークに本領を発揮できず。前節で見せた細かいパス交換による攻撃も見られないまま、試合終了の笛が鳴った。

リーグ戦3連敗となった柏は、残り9試合で少しでも多くの勝ち星を積み上げたい。
古賀は「下を向いている暇はない。苦しい順位に立たされていますし、ショッキングな敗戦だと思います。ただ、勝点を積み上げるチャンスはまだ9試合残っているわけで、そこに向かって進んでいくしかない」と現実を直視した。

次節は21日午後6時にアウェー・県立カシマサッカースタジアムで鹿島アントラーズと対戦する柏。
いまの柏に最も足りない部分は‘‘チーム‘‘で戦う姿勢だ。サポーターからブーイングを受けた際にも、ただその脇を通過していく姿が印象的だった選手たち。25歳のキャプテンは柏が一丸となって戦うべきだと考えている。
「監督も『まだ何も終わっていない。全員でやっていくしかない」と呼びかけていました。チームが同じ方向を向いていないと始まらない問題だと思いますし、全員が一丸となってやっていく必要があります」と総力戦を呼びかけた。
まずはチームを一つにまとめたい。古賀は攻守で課題が残った磐田戦を受けて、根本的な部分から柏を見つめ直した。
「会話をもっと増やすべき。ネガティブなものではなくて、何かを改善していくための前向きな会話がいまのチームに1番大事。自分がその中心になって、常にポジティブな声を掛け合っていきたいです」
状況は決して良くない。
(取材・文 浅野凜太郎)