2025年9月14日、富士通アメリカンフットボール部「フロンティアーズ」創部40周年の記念試合。ハーフタイムに登場したのは、創部47年の歴史を持つ富士通チアリーダー部「フロンティアレッツ」だった。
(インタビュー・構成=松原渓[REAL SPORTS編集部]、写真提供=富士通フロンティアレッツ)
なぜ歴代メンバーが集結したのか? 企画の出発点
――今回の40周年記念試合で「歴代メンバーが集結してハーフタイムショーを実施することになった経緯について教えてください。
山岸:30周年・20周年にも同様の企画があり、先輩方が実施したパフォーマンスが毎回とても好評だったと聞いていました。私は30周年が入社直前で出演できなかったのですが、入社後もOGの先輩方から40周年に向けた期待の声をよく聞いていました。過去の動画を見ながら私自身もずっと願っていた企画で、40周年という節目で関われたことを本当にうれしく思います。
――過去の20周年・30周年企画と比べて、40周年で特に力を入れたことはありますか?
田上:20周年は東京ドームで、当時はOGも含めた約40人でパフォーマンスをしました。最初は手探りで、4~5分の演技の最後にポンポンで「20周年」と文字を作るなどしていました。30周年は富士通スタジアム川崎で約50人と増え、年を重ねるごとにラインダンスや構成のレベルも上げ、今回の40周年は総勢70人で臨みました。1990年代に活動していたメンバーは久々の厳しい練習を乗り越え、現役メンバーやスタッフに教わりながら本番を迎えました。
常盤:本当にすごい練習量でした。準備段階からすごく力を入れていて、熱量が伝わってきました。
――50人以上のOGの皆さんをどのように集めたのですか?
田上:私がOGの連絡先を取りまとめ、定期的に試合の案内などをメールで配信していました。
――仕事や家事の合間を縫って練習を重ねていたのですね。
田上:遠いところだとアメリカからこのイベントのために来た人もいます。みんなチアリーダーが大好きで、こんな機会は滅多にないので、久々の仲間や憧れの先輩と再び踊れる喜びが原動力になりました。
再び舞台へ。節目に込めた思い
――節目の舞台に再び立つことになった心境と、当日のパフォーマンスに込めた思いを改めて教えてください。
田上:お客さまの歓声を浴び、現役時代がよみがえりました。同世代には膝や腰の不安を抱える人もいましたが、チームが続いてきたことへの感謝や機会を得た喜びを口にする声が多かったです。山岸さんたちはどうでしたか?
山岸:私たちは出演したメンバーの中では中堅世代でしたが、引退してから体を動かす機会が減っていたので、体力面の不安はありました。ただ、体育館に集まるとみんなすごく嬉しそうに「久しぶり!」と声をかけ合って、すぐに当時の空気感に戻れました。改めてチアの良さやつながりの深さを感じました。
――小気味良いリズムに合わせて70人の息の合った動きは圧巻でした。限られた時間の中で、どのように練習を進めたのですか?
山岸:現役メンバーは試合応援がメインなので、OGの練習はOG中心に時間や内容を考え、わかりやすいスロー版の振付動画を配信したり、期日を設けて各自で習得してもらいました。全体での通し練習は現役メンバーと合同で行い、オフィシャル練習に加えて自主練も提案しながら、週3~5回ほど集まっていました。
展示でたどる47年。写真とユニフォームが語るチームの歩み
――写真展示や歴代ユニフォーム紹介なども行ったそうですね。
田上:A1のパネルに、1987年、90年、というように、数年おきの歴代メンバーの集合写真を展示しました。また、「フロンティアレッツ」の沿革もコンパクトにまとめて紹介しました。
常盤:どれだけ関心を持っていただけるか未知数でしたが、足を止めて写真に収める方が多く、展示を通して歴史を共有できたと思います。
――久々にお客さんの前でパフォーマンスをしてみて、どのような思いでしたか?
山岸:久しぶりに会う仲間や、当時は一緒に踊れなかった憧れの先輩方と練習やパフォーマンスを披露できたことがすごくうれしかったです。「10年後もまたやりたい」という声も多く聞かれました。
パフォーマンスが始まる前からメンバー全体のモチベーションがとても高く、MCの盛り上げや曲が流れた瞬間から、メンバー同士の一体感を強く感じました。実際に始まると、見せ場となるポイントで会場が盛り上がり、感謝の思いや再びこのフィールドに立てる喜びが伝わっているのを感じました。
田上:ハーフタイムショーが終わった後は涙が出るほど、みんなで喜び合いました。私のように何十年もブランクがあると、若い世代には遠く及ばず恥ずかしさもありましたが、かつてのメンバーが一生懸命踊る姿を見せられたこと自体に価値があったと思います。特に全員が横一列に並ぶラインダンスは、脚が上がる、上がらないに関係なく、全員の気持ちが一つになっていたと思います。その瞬間、客席が一番沸き、私たちも鳥肌が立つほど感動しました。OGの皆さんからも「努力してよかった」「あの景色は忘れられない」という声が聞こえてきました。
節目を超えて、次の世代へ
――「富士通フロンティアーズ40周年」を経て、フロンティアレッツが今後の節目やその先に向けて大切にしていきたいことを教えてください。
常盤:チアリーダーの活動を正しく伝えることが大事だと思っています。チアリーダーは時に脇役のように見られがちですが、強い思いを持って活動している組織です。その姿を社内外に発信することで、組織を守り、継続する力になると感じています。11月9日に富士通スタジアム川崎で行われるX1 Super 第6節(11月9日)で、フロンティアレッツのパフォーマンスが見られます。また、女子バスケ(レッドウェーブ)の大樹生命Wリーグ2025-26レギュラーシーズン 第7戦(11月8日)でも歴代メンバーによる40周年記念ハーフタイムショーを実施予定です。
山岸:この歴史あるチアリーダー部に関わり、支えてきてくださった方々にとって、かけがえのないチームであり続けたいと思います。その一方で、現状に満足せず、社業にもチア活動にもストイックであることを大切にしたいです。常に成長し、最高の状態を保ち続けることで、いつでも誰もが誇れるチームを目指したいと思います。
田上:私は初期から関わってきましたので、初期メンバーから現役メンバーまでをつなぐことが自分の使命だと思っています。やめていった人や疎遠になった人も、また帰ってこられる場所でありたいですし、もう一度青春を取り戻し、再び輝ける場所をつくっていきたいです。会社や私生活でも皆さんが輝けるよう願っています。また、「企業スポーツ推進」という組織があるのは会社の強みだと思うので、社内で協力しながら企業スポーツを広めていきたいです。
社員応援団から企業文化の象徴へ。富士通チアリーダー部「フロンティアレッツ」が紡いだ47年
【連載前編】社員応援団から企業文化の象徴へ。富士通チアリーダー部「フロンティアレッツ」が紡いだ47年
<了>
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