現地時間12月19日、ついに日本代表MF南野拓実がプレミアリーグの名門リヴァプールに移籍すると正式に発表された。
奇しくも、この移籍報道が出た12月12日、『REAL SPORTS』では香川真司にインタビューを実施していた。
(インタビュー・構成=岩本義弘[REAL SPORTS編集長]、本文写真=Getty Images)
自分の力でリヴァプール移籍を勝ち取った南野は「本当にすごい」
南野拓実選手のリヴァプール移籍が確定的となりました(編集部注:このインタビューは南野選手のリヴァプール移籍確定的報道が出た2019年12月12日に実施。その後、12月19日にリヴァプールが南野選手の加入を正式に発表)。
香川:いや素直にビックリしました。拓実はすごいと思います。それこそ、2018年のロシア・(FIFA)ワールドカップ前、2月に(UEFA)ヨーロッパリーグでドルトムントと(レッドブル・)ザルツブルクが対戦した時、僕はケガしてその試合には出られなかったんですが、その時に拓実と話して。なかなか試合に出られていない状況だったのに、アイツはよく耐えたなと。耐えたというか、そもそも、拓実はザルツブルクにもう5年もいたわけじゃないですか。いや、僕は正直、「早く移籍しろ」とずっと思ってました。もちろん、彼自身、移籍したい想いはずっとあったと思いますが、そこで粘ってやり続けて、また試合に出られるようになって、(UEFA)チャンピオンズリーグでの出場も勝ち取って。代表でも結果を出して、自分自身で(ビッグクラブ入りを)勝ち取った。本当にすごいと思います。
ザルツブルクで試合に出られない状況から、たった1年ですもんね。
香川:本当に早いんですよ、サッカーは一日一日が。明日、何が起こるかわからない世界ですからね。でも、いや、ホンマにすごい。彼自身としてだけじゃなく、ヨーロッパの中位国でプレーしていても、ビッグクラブにいけるという道を彼が作ったわけですから。後に続く日本人選手にとっても大きいと思います。
それにしても、リヴァプールはトップトップすぎて、いきなりあのレベルで大丈夫か、とも思ってしまいますが、監督が(ユルゲン・)クロップ監督だというのが心強いですよね。
香川:最高だと思いますよ。拓実もやっぱりクロップに合うプレースタイルですし。もちろん、ポジション争いは熾烈だと思います。だって、世界ナンバーワンのクラブですからね。でも、そこでやるということを、本当に楽しんでほしいと思います。他人事みたいに聞こえちゃうかもしれないですけど、本当に楽しんでほしいなって。
ビッグクラブ移籍は「身を置かなきゃわからないこともある」
振り返って、香川真司にとって、自分自身のマンチェスター・ユナイテッドでのキャリアというのは、どういう時間だったんでしょう?
香川:財産ですよ。あの時間がなかったら、今の僕はありませんし。
あの時のマンチェスター・ユナイテッドも、今のリヴァプールと同じく、本当に世界のトップトップでした。そのマンチェスター・ユナイテッドに鳴り物入りで入って、もちろん、本人としては納得いく活躍ではなかったかもしれないですが、でも間違いなく、何度もあのメンバーの中で輝きを放ちました。
香川:セレッソ(大阪)からドルトムントに行って、変な話、あんまり苦労せずにリーグ戦連覇して、(2011-12シーズンは)カップ戦でも優勝して2冠を達成して、「もう何も怖いものはない」という感じでマンチェスター・ユナイテッドに行って。でも、ユナイテッドは(ドルトムントとは)全くの別物でしたね。環境だけじゃなく、戦術一つにしても。「全然、連動性ないやん、マンチェスター・ユナイテッド。めっちゃ、個で解決しようとするやん、ユナイテッド。
マンチェスター・ユナイテッドで味わった悔しさがあって、その後もあがき続けているからこそ、成長もあるわけだと。
香川:結局、実際に、そういうところに身を置かなきゃわからないと思うんですよね。想像はあくまで想像でしかなくて、実際に直面してみないと本当のところはわからない。でも、もう僕には23歳の時は返ってこないから、だからこそ、それを経験した人間としては、拓実にはとにかく楽しんで頑張ってほしいなって。その挑戦はオマエにしかできないし、ただ、最高な経験であることは間違いないから、それを楽しんでほしいなと心から思う。そうやって勝ち取って、それをまた下の世代につなげてもらいたい。僕はビッグクラブでは最終的には勝ち取れたかと言ったら勝ち取れていないわけで、でも、拓実にはリヴァプールというビッグクラブで勝ち取ってほしい。そういう日本人選手が出てこないといけないと思うから。それにしても、マンチェスター・ユナイテッドとセレッソが試合した時、わざわざ、「ユニフォームを交換してください」って言ってきたあの男が、今じゃリヴァプールの選手になるわけですから(笑)。同じセレッソ育ちとして、本当に感慨深いです。
<了>