筒香嘉智外野手、山口俊投手、秋山翔吾外野手の3選手が新たにMLB入りし、入団会見を行った。会見を通じて3選手の思いや人柄、そして球団や地元メディアの期待が見えてきた。
(文=一村順子、写真=Getty Images)
入団会見から見えてくる選手の個性や人間性
MLBは2月よりキャンプイン。例年に比べて動きが早かったオフのトレードおよびフリーエージェント(FA)市場も最終段階を迎えている。日本人選手は、ポスティングシステムで、横浜DeNAベイスターズから筒香嘉智外野手がタンパベイ・レイズに、読売ジャイアンツから山口俊投手がトロント・ブルージェイズに入団。FAでは秋山翔吾外野手がシンシナティ・レッズに入団し、3選手が年末年始にかけてそれぞれの本拠地で入団会見に挑んだ。
入団会見はおめでたく、晴れやかなイベントだ。日本と同様、球団ロゴの入ったバックパネルを背景に当該選手、球団GMおよび編成部長らが壇上に並ぶ。オーナーや監督が同席することもあれば、チームを代表する選手がサプライズ参加することもある。対面に関係者や取材陣の席が用意され、後方にはテレビカメラがズラリと並ぶ。代理人、家族、スカウトらも立ち会う中、会見の進行役は大抵、広報部長が取り仕切る。
冒頭に首脳陣の挨拶を経て、選手が背番号のついたユニフォームに袖を通し、自己紹介、記者との質疑応答。カメラマンの要望に応えて記念撮影と1時間前後のイベントは盛りだくさんだが、正式契約後、初めて公式の場で発せられる選手の第一声は、いつも、興味深い。
筒香は12月17日(日本時間18日)のレイズ入団会見で、英語で自己紹介したあと、ドミニカ共和国で行われたウインターリーグに参加した際に覚えたスペイン語で「ホームラン、行くぞ!」と語って場内の笑いをとった。コメントからは、「どんな形であれ、チームに貢献する」という思いがあふれ、救援投手が1回限定で先発するオープナーの先駆者で、斬新な戦術に定評あるケビン・キャッシュ監督のもとでプレーする覚悟の程がうかがえた。エリック・ニーアンダーGMは「彼の素晴らしい能力や実績をもとにターゲットとして調査してきたが、最終的に獲得に動いたのは、彼の人柄。野球への情熱。生まれながらのリーダーシップが、チームに良い文化を生み出してくれるだろう」と語り、筒香の人間性が高く評価されていることが伝わってきた。
待望の日本人MLB30球団制覇
年が明けて1月8日(日本時間9日)、秋山のレッズ入団会見は、また、一味違ったものだった。まず、レッズのディック・ウィリアムス編成本部長が、冒頭で16分以上に及ぶスピーチを行った。「今日ほど歴史的に意義ある日はない」と切り出し、メジャー30球団で唯一日本人の所属がなかった球団の初の日本人選手を大歓迎した。これまで日本人選手とは縁がなかったが、「ビッグレッドマシーン」の異名をとった黄金期の1978年には単独チームとして来日した日米野球の歴史を振り返り、会場には当時の横断幕やピンバッジなどゆかりの品や、エースのトム・シーバーらナインが、王貞治の打撃練習を間近で見守る白黒写真が展示されるなど、日本とのつながりをアピール。会見場には、多くの球団職員も駆けつけ、ウィリアムス編成本部長は、国際スカウトや編成部だけでなく、秋山の交渉で行ったプレゼンテーションのビデオを作成したチームや、会見を準備した裏方に至るまで、秋山獲得に尽力した球団職員の一人一人の名前を挙げて、感謝とねぎらいの言葉を贈った。それはまるで、企業の社内表彰のようでもあり、秋山取りが、球団挙げての一大プロジェクトだったことをうかがい知ることができた。
報道陣は日本人21人を含めて計41人。
「ハロー、ボンジュール、こんにちわ」
それから、ちょうど1週間後、1月15日(日本時間16日)には、カナダ・トロントで山口が入団会見に臨んだ。山口は、フランス語が公用語でもある当地で「ハロー、ボンジュール、こんにちわ」と3カ国のあいさつで口火を切り、「先発の1枠を勝ち取りたい。パワーピッチャーとして力で押したい」と語った。抑えの経験もあるため、さまざまな役割が期待されているが、まずは、自分のスタイルを試したいという意思を明確に示した。ロス・アトキンスGMは「超一流の競争心が魅力」と、その強気な投球スタイルを評価。
地元メデイアでは、カナダ出身で元巨人のチームメイト、スコット・マシソン投手が、山口を「恐れを知らない大胆な男。登板日に神経質になる投手が多いなか、彼は常に冷静で準備ができている。日本でそういう選手は、他に田中将大くらいだ」と分析。「シュートが威力を発揮するだろう」という談話も紹介した。
山口は当初、電話会見で済ませる可能性もあったが、入団会見を行ったことで「やっぱり、実感が湧いてきました。テンションも最高に上がっています」と語った。実際に本拠地に足を踏み入れて肌で感じるものも多いようで、キャッチボールでボールの滑り具合を確かめたり、クラブハウスで一部チームメイトと対面したり、大いに収穫があった様子だった。
日本人選手の入団会見で、最も報道陣の数が多かったのは……
筒香、秋山、山口。三者三様の思い、立場、個性が見えた入団会見を見て、過去の思い出もよみがえった。過去の日本人選手の入団会見で、最も報道陣の数が多かったのは、ボストン・レッドソックスがポスティングシステムで松坂大輔投手と6年契約を結んだ2006年12月の記者会見。本拠地のフェンウェイ・パークには、先にも例がない報道陣約400人が詰めかけた。日本からは中継放送するニュース番組やワイドショーの記者も取材に訪れ、メディアに寿司が振る舞われるなど、華やかな雰囲気の中、松坂が「非常に興奮している。ワールドチャンピオンになれるように力になりたい」と力強く抱負を語り、有言実行、翌2007年に世界一を達成した。
2003年1月の松井秀喜外野手のニューヨーク・ヤンキース入団発表はニューヨーク市内のホテルで行われ、報道陣300人が参加。当時のニューヨークのマイケル・ブルームバーグ市長も参列するなど、ニューヨークという大都市の地域を挙げた期待を感じさせるものだった。「僕にとって最高に幸せな1日となりました」と語って、ピンストライプに袖を通した松井は、2009年にワールドシリーズMVPに輝き、今もGM特別補佐としてヤンキースの若手育成に尽力している。
ダルビッシュ有投手は2012年1月のテキサス・レンジャーズの入団会見で、「不安は何もない。プレッシャーは感じない」と自信に満ちた受け答えをしたが、堂々とした第一印象は今も変わらない。2017年12月にロサンゼルス・エンゼルス入りが決まった大谷翔平選手の入団会見は本拠地球場前の広場で、約1000人のファンが見守る中、南カリフォルニアの青空のもとで行われた。大谷は球団首脳陣一人ひとりの名前を挙げて感謝の言葉を伝えたほか、代理人など交渉に携わった関係者や、これまで自分を育ててくれた日本の指導者やファンにメッセージを送るアメリカ的なスピーチを行い、ファンの心を掴んだ。トミー・ジョン手術を経て、再び二刀流に挑戦する今季は、再び大きな期待が掛けられている。
昨年シーズン終了時にFA、つまり所属先がなくなったメジャーリーガーは350人以上いる。このまま、移籍かなわず、ユニフォームを脱ぐことになる選手も多い。運良く新天地が決まった選手の中でも入団会見をしてもらえるのは、ほんの一握りだ。祝福と期待に満ちたお披露目の舞台を踏んだ3選手には、万全でキャンプに備え、思う存分能力を発揮してほしい。
<了>



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