コロナ禍を経て、スポーツビジネスは変革の刻を迫られた。テクノロジーを活用し、社会課題と向き合う。
(インタビュー=岩本義弘[REAL SPORTS編集長]、構成=五勝出拳一、写真=©KASHIMA ANTLERS)
継承される鹿島アントラーズの精神
――まず、今シーズンの鹿島アントラーズを振り返ってみていかがですか?
小泉:今年は鹿島アントラーズ創設30周年の節目の年ではあったので、タイトルを目標にスタートしたのですが、新型コロナウイルスの影響でブラジル人選手の入国が遅れたこともあり、チームの立ち上がりが思うようにいきませんでした。ザーゴ監督の解任も経て現在はJ1リーグ4位(※12月3日時点)に位置していますが、タイトルに手が届かなかったことに関して非常に悔しさの残るシーズンとなっています。
――Jクラブの中でも特に常勝を義務付けられている鹿島アントラーズだからこそ、でしょうか。
小泉:勝利に飢えていて勝利を義務付けられたチームなので、勝利に向かって全員がダイレクトに動く組織だと感じます。先日、ジーコ TD(テクニカルディレクター)と2人で食事に行ったのですが、改めて「どんなことでも負けを許さない」というジーコTDがつくってきた文化を強く感じましたし、それに呼応してファン・サポーターからのプレッシャーや期待も他クラブより大きなものがあるとは思います。
――そんな環境下で、若手選手の育成に注力しながら、同時に勝利も追求し続ける難しさはありますか?
小泉:良い選手を自分たちで輩出していかないと「現代のサッカービジネスの潮流についていけなくなる」という課題意識の下、特にこの5年ぐらいはユース年代の強化に力を入れています。最近だと小笠原(満男)TA(テクニカルアドバイザー)や柳沢(敦)監督などのクラブレジェンドにユースチームを担当してもらっていて、今後も彼らのようなOBをどんどんアンダーカテゴリーに投入していきたい。彼らにはサッカーのクオリティだけでなく、鹿島アントラーズらしいメンタリティをチームにインストールする役割を期待しています。
また施設の整備にも積極的に取り組んでいます。2年前には総工費5億円をかけてアカデミーの寮を新設しまして、今年はふるさと納税型クラウドファンディングも活用しながら総工費3億円のアカデミー専用グラウンドをつくっているところです。トレーニング場所を集約化することで、育成年代のカテゴリー間の連携を円滑にし、選手の飛び級を促す狙いです。
議論を呼んだ「ビジョンKA41」
――続いて、事業面では2021シーズンはどのような1年でしたか?
小泉:観客入場制限の関係で入場料収入とグッズ収入が伸びず、その部分は非常に難しい1年でした。一方、スポンサーセールスは好調で、新規で30社ほどご契約いただくことができました。その要因としては、私が社長に就任してからチームスポンサーの名称を「スポンサー」から「パートナー」に変更し、広告掲出の対象に追加するだけでなく事業を一緒につくっていく事業共創のパートナーへとシフトしたことが挙げられます。パートナー企業の新規の技術やサービスをどうスタジアムで使うか、チームのファン・サポーターに届けるかを一緒になって考える。
直近だと株式会社カネカさんとパートナー契約を結び、100%植物由来の環境貢献素材を使ったGreen Planetストロー、スプーン、ビニール袋などをスタジアム内飲食売店での飲食物購入時にお渡しする取り組みを開始しました。このケースだと、カネカさんが取り組んでいるSDGsの取り組みをプロモーションする場所としてスタジアムを活用していただく狙いです。それ以外にも商品アイデアを一緒に考えたり、行政と企業をマッチングして新しいビジネスをつくったりしていて、スポンサーセールスの在り方が変わってきたことを強く感じています。
――鹿島アントラーズは、カシマスタジアム(茨城県立カシマサッカースタジアム)をどんな場所と位置付けていますか?
小泉:カシマスタジアムは1993年に当時日本初の屋根付きサッカー専用スタジアムとして完成し、サッカー観戦がそのベースにあることは間違いないのですが、年間365日のうちホームゲームはカップ戦を入れても実は20~30試合なんですよね。あれだけ良い建物があるにもかかわらず、残りの日を利活用しないのは非常に問題なので、スポーツジムやエステサロンをつくったり、スタジアム敷地内にクリニックを運営したりと、スタジアムにさまざまな機能を実装していく取り組みをこの10年ほど続けています。試合がない日でも人が集まる場所、にぎわいがあふれる場所にしていきたいですね。
――指定管理者(※)になって満足するのではなく、行政と一緒にどのような仕掛けをしていくのかが重要ということですよね。
(「指定管理者」制度とは、地方公共団体に代わって『公の施設』を民間等団体に管理させる制度のこと。
小泉:そうですね。スタジアム周辺エリアの開発にもこれから踏み込んでいこうと考えていて、スタジアムの周りにさらにコンテンツを増やしていく予定です。
――スタジアム整備については、鹿島アントラーズが10年前の2011年10月1日に掲げた未来志向の経営方針「ビジョンKA41」を、今年10月にアップデートして今後の事業構想を発表したのはインパクトがあったと思います。周囲からはどのような反響がありましたか?
小泉:反響は大きかったですね。一般的な新スタジアム建設のプロセスでは、建設場所やパース(※住宅などの構造物の外観や内部を一定の図法で立体的に表現した図のこと)が既に決まっていて、完成形が見えている段階で市民の皆さんやメディアに発表する流れだと思うのですが、今回私たちは新スタジアムをつくるということしか発表していないんですよね。その意図としては、スタジアムを試合観戦にとどめずいろいろな機能を持たせたいので、市民の皆さんをはじめいろいろな方の意見を聞かせていただいた上で、街の20年後、30年後をイメージして最適なものをつくっていきたいと考えています。ある意味、議論を起こそうと思っていて。
――すごくわかります。鹿島アントラーズがつくりたいスタジアムというよりも、地域がつくりたいスタジアムをつくるということですよね。
小泉:そうですね。地域が必要とする機能をスタジアムに入れていくと、自然と365日使われる場所になると思っているので、そのプロセスに市民を巻き込んでいきたい。
――鹿島アントラーズだからこそできるアプローチですね。一方で、地方を拠点にしていることの難しさもありますよね?
小泉:そうですね。収益性部分での難しさは依然としてあるので、身の丈に合った施設をつくっていこうとは考えています。また、今のスタジアムもレガシーとして残していきたいので、守るところは守っていきながら、未来の話をしていきたいと思っていますね。
改めて問われる、スタジアムの価値
――今シーズンの無観客試合や観客制限を経て、小泉さんの中で「スタジアムの持つ価値」に変化はありましたか?
小泉:率直に感じているところとしては、スタジアムの価値を高めないと、お客さんがわざわざ試合を見にきてくれるのかという部分は真剣に考えないといけないなと思いますね。コロナ禍前は平均で2万人近いお客さんが来てくれていましたが、観客制限が完全になくなったタイミングで、本当に2万以上の人がスタジアムに集まってくれるのかなという不安はあります。私個人の意見としては、今までと同じスタジアムではお客さんは十分に戻ってきてくれないだろうと思っているので、チームの勝利や選手のパフォーマンスはもちろん重要ですが、スタジアム周辺も含めた場所としての価値を高めて、試合の前後の時間も含めて週末に3~4時間滞在したくなるような状態をつくらないと厳しい。その点でも、滞在時間を一つの指標にしたいなと思っていますね。
――鹿島アントラーズのファン・サポーターは、遠方からお金をかけて来場してくれる人も多いと思うのですが、コロナ禍でその来場特性に変化はありましたか?
小泉:そうですね、今も東京から来てくれる方は多いです。コロナ禍になった当初は茨城県内からの来場がほとんどでしたが、観客数も11月は平均約1万3000人まで回復してきていて、先日の浦和レッズ戦(11月7日 J1第35節)は制限下では満席の状態で観客数は1万6千人まで回復し、東京からのお客さんもかなり戻ってきてくれている印象です。
実際に来場者の声を聞き、その姿を観察していると「やっぱり生観戦っていいよね、スタジアムで見るっていいよね」とポジティブな反応を示してくれていて、このタイミングで良い体験を提供していかないとまた足が遠のいてしまうし、DAZNで見ればいいよねとなってしまうので、この2~3年がしっかりリカバリーできるかどうか各クラブにとって分岐点になると思いますね。
――そのような意味でも、新型コロナウイルスの影響が収束すると願う来シーズンは勝負の年になりそうですね。
小泉:はい。3.11の時ももともとの水準に戻すまでに4~5年かかっているんですね。時間をかけて徐々にリカバリーするのって実は難しいなと思っていて、来年1年間でもともと足を運んでくれていた人にしっかり戻ってきてもらわないとベースの来場者数が落ちてしまう。来年はかなり勝負の1年だと思っています。
――お答えいただける範囲で、来シーズン取り組む施策のアイデアや構想を教えていただけますか?
小泉:やはり、スタジアム周辺の開発ですね。にぎわいづくりというか。試合以外でも、スタジアムに来たいと思ってもらえるモチベーションをつくる必要性を強く感じています。
スタジアムを社会のショーケースに
――これまでのお話も踏まえて、これからの時代に求められるスタジアムはどのようなものだと思いますか?
小泉:大きくは2つあると思っていて、1つ目はこれまでお話ししてきたような試合日以外も含めたスタジアムの利活用ですね。スタジアムにどんな機能を追加していくのか、同時に周辺をどのように開発していくのかという切り口です。2つ目はテクノロジーの活用とSDGsの啓蒙で、スタジアムをショーケース化していく必要があると思います。鹿島アントラーズでは、NTTドコモさんと5Gを使った新しいエンターテインメントの観戦方法の開発を進めていたり、NECさんと一緒に顔認証システムの社会実装にチャレンジする実証実験に取り組んでいます。
――そのような意味では、小泉さんと一緒にコンテスト審査員を務めさせていただいているスポーツイノベーション推進プログラム「INNOVATION LEAGUE」がチャレンジしていることに、鹿島アントラーズも取り組んでいるようなところがありますよね。
小泉:そうですね。私だけでなく、メルカリの社員もクラブに出向してきていますし、サッカーチームの中ではかなりデジタルに明るい組織なので、テクノロジーを取り入れる受け皿として機能しやすい側面はあると思いますね。
――小泉さんは昨年からINNOVATION LEAGUE コンテストで審査員を担当していますが、2年目となる今年のINNOVATION LEAGUEに対してどんな期待をしていますか?
小泉:新しいテクノロジーがどんどん出てきている中で、スポーツと他産業の掛け算をどうつくるかという部分ですよね。いろいろなアプローチがあると思うので、INNOVATION LEAGUEを通じて、私たちが考えもしなかったようなアイデアや課題解決の手法がどんどん出てきてほしいなと思いますね。
――昨年のコンテストでは全てのエントリーに目を通されたということでかなり玉石混交だったとは思うのですが、どのような印象を持たれましたか?
小泉:千差万別いろいろあるなとは思ったのですが、こんなに応募が集まるんだとポジティブな驚きがありましたね。それだけスポーツビジネスは課題が大きい産業で、ポテンシャルがある産業なんだなと改めて感じましたし、やれることはまだまだあるなと思いましたね。
加えて、僕ら鹿島アントラーズとしてはエントリーいただいた施策やアイデアを実際に形にできるような支援ができたらいいなとは思いましたね。
――サッカークラブの経営者として、INNOVATION LEAGUEと連携できそうな部分もありそうですか?
小泉:そうですね。事業者がテクノロジーやアイデアを提案したとしても、誰がそれを実行する際のパートナーになってくれるのかが曖昧になってしまうケースは多いので、鹿島アントラーズの課題解決につながったり、僕らのアセットとうまく合致するのであればご一緒できる部分はあると思いますね。
――最後にやや抽象的な問いになりますが、これから先のスポーツビジネス全体を俯瞰すると、小泉さんはどのような考えをお持ちでしょうか?
小泉:今後は週休3日や週休4日が導入されるなど、余暇時間がより増えていくと思うんですが、個人的には余暇が増えたら全員が全員うれしいのかというと、必ずしもそうではないのではないかと感じています。
なので、余暇をリッチにしていかないとしんどいんじゃないかなという見立てです。「余暇を楽しむ」という観点では、スポーツは1番のコンテンツだと思っているので、日常にスポーツがあることによる豊かさの部分は追求していきたいなと考えていますし、そこにビジネスとしての面白さや可能性もあるんじゃないかと思っています。都心だけでなく、全国各地にプロサッカークラブがあるということはとても幸せなことだと思うので、僕らとしてももっとその魅力を届けていきたいですね。
<了>
INNOVATION LEAGUEでは、スポーツやスポーツビジネスにイノベーションを生み出している取り組み、スポーツを活用してビジネスにイノベーションを生み出している取り組み、またスポーツが持つ「産業拡張力」を強く感じさせる事例を表彰する「INNOVATION LEAGUE コンテスト」を実施中! 応募締め切りは間もなく2021年12月10日(金)23:59まで。
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PROFILE
小泉文明(こいずみ・ふみあき)
2006年に株式会社ミクシィに入社し、コーポレート部門全体を統轄。2012年に退任後、いくつかのスタートアップを支援し2013年12月に株式会社メルカリに参画。2019年9月に同社President (会長)に就任し、同年8月より鹿島アントラーズ・エフ・シー社長を兼任。



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