中国は宇宙開発で飛躍的な進歩を遂げた。米国とロシアと並んで有人の宇宙飛行を成功させ、有人宇宙ステーションを単独で持つ唯一の国になった。
さらに2026年には月の南極からのサンプルリターンを計画している。月の南極には大量の水があると言われており、注目されている。
2050年までに「宇宙科学の世界最強国」目指す
一方、米国は宇宙開発計画で足踏み状態。米国が主導する有人宇宙飛行のプロジェクト「アルテミス計画」では有人月面探査の延期を発表した。トランプ政権下で米航空宇宙局(NASA)はコスト削減の改革を迫られている。
習近平主席は22年の中国共産党全国代表大会で「有人宇宙飛行、月面・火星探査などで重要な成果を収めた」と強調した。李強首相も25年の全国人民代表大会で「イノベーション能力がさらに向上し、新たな成果を上げた」と指摘。月探査機「嫦娥6号」は人類史上初めて月の裏側からサンプルを採取して帰還したと実績をアピールした。
24年10月に策定された国家宇宙科学長期発展計画は、50年までに「宇宙科学の世界最強国」となり、「宇宙科学」「宇宙技術」「宇宙利用」で世界の最前線に立つ目標を設定した。
遠く離れた火星は行くのに6カ月から7カ月ほどかかる。難易度が高く、2年に1回しか打ち上げられない。
次の目標は火星から実際に試料を持ち帰るサンプルリターンだ。30年に打ち上げ、31年に回収するという計画を公表している。米国と競っているが、専門家の間では中国の方が先に回収に成功するとの見方が多い。
米国は後れ、計画は40年以降にずれ込んでいるという。イーロン・マスク氏は30年ごろに火星への有人飛行計画を発表しているが、実現性を疑問視する声も多い。
国際宇宙ステーション「天球」を独自運用
国際宇宙ステーションISSは1998年にロシアと米国とタッグを組み国際協調でスタートした。老朽化し24年に退役する予定だったが、30年まで 延長することになった。
中国は独自の国際宇宙ステーション「天球」を22年に打ち上げ、運用している。ISSに比べて小ぶりだが、最新機材を積んでおり、機能性が高い。
米国は後継機がないため民間に委託し、NASAがサポートしているが、民間の宇宙ステーション計画は遅れ気味だ。
測位航行衛星でも、中国は「北斗」システムを構築し、「一帯一路」関連諸国・地域を中心に浸透。
米国スペースXが運営するスターリンクに相当する低軌道衛星コンステレーション(複数の衛星を連携させて運用するシステム)でも中国は国網(中国衛星網絡集団)や千帆星座(上海垣信衛星科技)などが1万基以上の規模で打ち上げ配備している。
日本記者クラブで講演した科学ジャーナリストの倉澤治雄氏によると、中国は宇宙開発技術の発展に果敢に挑戦し、「世界の最先端」を走り抜け、目が離せないという。