2025年8月17日、仏国際放送局RFI(ラジオ・フランス・アンテルナショナル)の中国語版サイトは、中国で新たな社会保険のルールが実施されることについて、中国のネット上で激しい議論が繰り広げられていると報じた。

記事は、中国が9月1日より全ての雇用主に従業員の社会保険料納付を義務付ける新たなルールを実施すると紹介。

経済が悪化し、倒産や失業が増加する中での企業に対する「一律強制措置」が、中小企業の存続を脅かすのではないかといった懸念を生んでおり、ネット上ではさまざまな意見が寄せられていることを伝えた。

記事の紹介によると、あるユーザーは小規模事業者の多くが利益を出せず、約3割は1カ月分のキャッシュしか持ち合わせていないため、ちょっとした外部要因で倒産する危機にあると指摘。この状況で社会保険料負担を増やせば、多くの中小企業にとって致命傷になるとの見方を示した。

また、社会保険の加入状況に対する疑問として、あるユーザーが国家統計局のデータを引用し、中国の労働力7億3400万人のうち、66%以上に当たる少なくとも4億8800億人が完全な社会保険に加入していないと指摘。特に、公務員などを除くいわゆる「体制外」の民間労働者に限れば、社会保険未加入者の割合は約75%にまで上昇するとし、これらの労働者が社会保険に加入した場合、企業の負担がさらに大きくなる可能性を示唆した。

さらに、公務員などの「体制内」と「体制外」の労働者の間で年金制度や受給額が大きく異なる「ダブルスタンダード」を指摘する声も。新たなルールの前提は「体制内」の福利維持があり、非合理的なルールを強制的に拡大すれば、両者間の不平等がさらに拡大することに繋がるという意見も見られた。

別のユーザーは企業負担分を含む中国の社会保険料が給与の約40%となっており、台湾や日本、韓国と比べてあまりにも高いと指摘。「実質的な隠れ税金」と主張した。また、今回のルールを年金制度維持のために目先の利益しか考えていない愚策と批判し、企業の負担増から賃金減少、消費低迷、企業倒産、保険料不足という悪循環を引き起こして「王朝末期の様相」に陥ると主張する人もいたという。

このほか、中国本土と同様に公務員などが優遇される制度で財政破綻の危機にあった台湾が蔡英文(ツァイ・インウェン)政権下で特権に切り込む厳しい年金改革を断行し、制度の公平性と持続可能性を取り戻した事例を詳細に紹介し、中国本土が学ぶべき唯一の道だと主張するユーザーもいたと、記事は伝えている。(編集・翻訳/川尻)

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