2025年11月13日、中国メディアの第一財経は「消費者をモルモットにするな!」と題し、中国でスマート電気自動車(EV)の事故やトラブルが後を絶たない中で、政府がスマートEVの監督管理強化に本腰を入れ始めたことを報じた。

記事は、中国公安部が先日、強制国家標準「自動車運行安全技術条件」改正版のパブリックコメント募集稿作成を完了したと紹介。

同標準は中国の公道を走る全ての自動車に対して、安全性、環境保護、基本性能に関する最低限の基準を設定する、いわば自動車運行の「基本法」であり、丸8年ぶりとなる改定の動きは、自動車のスマート化が急速に進んだ中で顕著になった現代技術と法規制のギャップを埋めるという象徴的な意味を持つと評した。

その上で、前回の改正からの8年で新エネルギー車の普及率が3%足らずから50%を超えるまでに高まり、スマートEVが市場の主役に躍り出た一方で、重大な安全リスク、自己責任の複雑化と消費者軽視、倫理が欠如した誇大・虚偽のマーケティングという3つの深刻な問題も顕在化したと指摘している。

安全リスクについては、高性能と低コスト化ばかりを追い求め、品質の検証を怠った結果によるバッテリー発火や運転支援システム制御不能に関する事故の頻発、デザイン性を優先したことによる緊急事態に脱出できない事例の頻発、極端な加速性能の宣伝で消費者をミスリードしたことによる超高速走行による事故の頻発などを挙げた。

事故責任の複雑さでは、メーカー側が消費者のアクセスできないバックグラウンドのデータを根拠として運転者側に責任を転嫁する事例がしばしば発生したと指摘。消費者の軽視では、市場シェア獲得ばかりを求めるメーカーが十分な技術検証をせずに市場に投入する現象が起きており、消費者を「モルモットのような実験動物」扱いしていると批判した。

さらに、倫理が欠如した誇大・虚偽のマーケティングでは、宣伝したい内容を大々的にうたう一方で重要な情報を小さな文字で書く、「地表最速」など非現実的な誇張表現を用いるなど、現実的な安全性に対する企業の無責任さが露呈していると指摘。これらの問題について「製造業の厳密さが、話題獲得狙いのショービジネスへと異質化した」結果と厳しく批判している。

記事は、今回の改正案ではこれらの問題点を踏まえて、加速性能の制限(時速0~100キロ到達まで5秒以上)のほか、補助運転、スマートコックピット、ドアロック・ハンドル、バッテリー火災に関する強制的な基準が設けられたと紹介した。

また、同標準以外にも自動運転レベル2(部分運転自動化)、バッテリーの発火・爆発防止、ドアハンドルの機械的解放機能について別個の強制標準を設け、誇大・虚偽宣伝についても政府6部門が「特別是正行動に関する通知」を出すなど取り締まりに向けた動きを見せていると紹介。一連の動きは法律・規制が技術開発に追いつかないことで生じた「グレーゾーン」を埋め、中国のスマートEV業界が「規制の転換点」を迎えたことを明確に示すものだと評した。(編集・翻訳/川尻)

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